ギラファノコギリクワガタ
|
ギラファノコギリクワガタ Prosopocoilus giraffa
|
分類
|
|
学名
|
Prosopocoilus giraffa (Olivier, 1789)
|
ギラファノコギリクワガタ Prosopocoilus giraffa は、昆虫綱甲虫目クワガタムシ科ノコギリクワガタ属に分類される昆虫の一種。インドからティモール、フィリピンといった東南アジアに広く分布する種で、全9亜種に分類される。
インドネシアのフローレス島などに分布する亜種 P. g. keisukei Mizunuma et Nagai, 1991 が最大の亜種で、同亜種のオス成虫の最大体長は野生個体で118.0 mm、飼育個体では最大122.0 mmが記録されている[3]。マンディブラリスフタマタクワガタ Hexarthrius mandibularis とともに世界最大のクワガタムシとされる。学名の種小名および和名の giraffa (ギラファ)は哺乳類のキリン (giraffe) に由来するもので、細長い大顎と体をキリンに見立てたものと思われる。キバナガノコギリクワガタと呼ばれることもある。
ネパール、ブータン、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、マレー半島、インド、インドネシア、ティモール島、フィリピン
成虫の体長は、オスで45.0 - 122mm[3]、メスで31.0 - 56.2mmである(亜種により異なる)。野生個体における最大記録は、亜種 keisukei の118mmである。飼育個体の最大記録はいずれも keisukei で、2004年時点では117.5mm[5]、2009年時点では119.4mm、2013年時点では121.0mm、2022年時点では122.0mmである[3]。
体形は全体的に扁平。体色は黒いが、亜種によって光沢が強いもの、弱いもの、上翅がやや褐色の個体もいる。
種小名giraffa が「キリン」を意味する通り、大顎の比率が特に長く、大顎は基部が太く盛り上がり、波打つように曲がっていて、先端は二股に分かれるが、亜種によって、大顎がやや直線的なものや、やや細いものがいる。内歯(内側のトゲ)は左右対称ではなく、若干ずれている。
ギラファノコギリクワガタは、9亜種に分類されている。
- Prosopocoilus giraffa giraffa (Olivier, 1789)
- ネパール、ブータン、インド北東部、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、マレー半島
- オス45 - 107ミリメートル、メス31 - 48ミリメートル。飼育下では最大体長110.8 mmのオス個体が記録されている[6]。
- Prosopocoilus giraffa nirgiriensis Mizunuma et Nagai, 1991
- 南インド
- 62.5 - 101.5ミリメートル、メス44.5 - 45ミリメートル。飼育下では最大体長106.4 mmのオス個体が記録されている[6]。
- Prosopocoilus giraffa borobudur Mizunuma et Nagai, 1991
- ジャワ島、バリ島、スマトラ島南部
- オス58 - 98ミリメートル、メス41 - 49.5ミリメートル。飼育下では最大体長100.5 mmのオス個体が記録されている[6]。
- Prosopocoilus giraffa keisukei Mizunuma et Nagai, 1991
- フローレス島、ロンボク島、タナジャンペア島
- オス48.5 - 118ミリメートル メス35.5 - 48.5ミリメートル。ギラファノコギリクワガタの最大亜種。飼育下では最大体長122.0 mmのオス個体が記録されている[6]。特にフローレス島産は最も大きくなるとされ「フローレスギラファ」とも呼ばれる。
- 学名の亜種名 keisukei は水沼哲郎の次男・敬典に由来する。
- Prosopocoilus giraffa timorensis Mizunuma et Nagai, 1991
- ティモール島、ウェター島
- オス35 - 91ミリメートル メス35.5 - 45ミリメートル。飼育下では最大体長99.9 mmのオス個体が記録されている[6]。
- Prosopocoilus giraffa nishiyamai Mizunuma et Nagai, 1991
- スラウェシ島
- オス47.5 - 101ミリメートル、メス37 - 46ミリメートル。
- Prosopocoilus giraffa nishikawai Mizunuma et Nagai, 1991
- サンギール諸島(タフナ島)
- オス55.5 - 96ミリメートル、メス43.5 - 48ミリメートル。飼育下では最大体長102.3 mmのオス個体が記録されている[6]。
- Prosopocoilus giraffa makitai Mizunuma et Nagai, 1991
- ミンドロ島、ルソン島
- オス47.5 - 103ミリメートル。飼育下では最大体長110.1 mmのオス個体が記録されている[6]。
- Prosopocoilus giraffa daisukei Mizunuma et Nagai, 1991
- ネグロス島、シブヤン島
- オス66 - 108ミリメートル メス44 - 56ミリメートル。飼育下ではオスは最大119.4 mmが記録されている[6]。
- 学名の亜種名 daisukei は水沼哲郎の長男・大輔に由来する。
熱帯雨林に生息しているため、季節に関係なく、連続して発生していると考えられ、主に広葉樹の高木の幹の上で生活するが、詳しい生態については、あまり分かっていない。
広葉樹の樹液を主食にし、オスは餌場やメスをめぐって争うと考えられる[8][9]。他の種より際立って気の荒さで目立つといったことはなく、闘争性ではフタマタクワガタ属やヒラタクワガタ等には劣る。
メスは広葉樹の朽木に産卵する。幼虫は朽木の中で生活し、その朽木を食べて育ち、他の性的二形の著しいクワガタムシと同様に、オスよりもメスの方が幼虫期間は短い。孵化してから 7 - 14か月で蛹になる。蛹になってから1か月ほどで羽化し、成虫になる。成虫の寿命は6- 15か月とされ、ノコギリクワガタの中でもかなりの長寿である。
大顎があまりにも長すぎるために挟む力はあまり強くない。基部にある内歯だけは例外的に非常に強い力を持っており、この部分は他のクワガタムシやカブトムシの角や大顎に穴を開ける程強力で、これは本種に近縁のコンフキウスノコギリクワガタにも見られる。
基本的にはそれほど気性が荒い種ではないが、最大級の個体が闘争心を発揮した場合はコーカサスオオカブトのような強豪クラスのカブトムシや、自身よりも一回り小さいサイズの大型のヒラタクワガタ類相手にも勝利する場合もあるなど高い戦闘能力を発揮する。
飛翔性も低くはなく、灯火にも飛来する事がある。
ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている。飼育下繁殖個体も見られる。
- ^ a b c 『BE・KUWA』第85号、2022年12月24日、2022年秋号(『月刊むし』2022年12月増刊号)、14頁「発表!第22回クワガタ飼育レコード」(むし社)
- ^ 『BE・KUWA』第13号、2004年12月24日、2004年冬号(『月刊むし』2005年1月増刊号)、113頁「外国産クワガタムシの飼育ギネス個体(2004年度版)」(むし社)
- ^ a b c d e f g h 『BE・KUWA』第89号、2023年11月17日、2023年秋号(『月刊むし』2023年12月増刊号)、114頁「外国産クワガタムシの飼育レコード個体(2023年度版)」(むし社)
- ^ とはいえ、その体の大きさから天敵も少なく基本的に大人しい性格だといわれる。
- ^ 昆虫最強王図鑑. 株式会社学研プラス. (2018年8月7日)