クダゴンベ (学名 : Oxycirrhites typus )は、スズキ目 ゴンベ科 に属する海水魚。クダゴンベ属 (Oxycirrhites )を構成する唯一の種 (単型 )である。最大でも全長 13 cm程度にしかならない小型魚で、その和名の通り管状に長く伸びた口吻 と、体側に入る赤い格子状の模様が特徴。インド太平洋 に広く分布し、日本でも南日本を中心に散発的にみられる。観賞魚 として流通することがある。
クダゴンベは、スズキ目 ゴンベ科 のクダゴンベ属Oxycirrhites に属する唯一の種 である[ 3] [ 4] 。
本種はオランダ の魚類学者 ピーター・ブリーカー によって1857年に初記載 された。タイプ標本 はインドネシア のアンボン島 から得られたものである[ 3] 。ブリーカーはこの時単型 のクダゴンベ属Oxycirrhites を設立し、本種にOxycirrhites typus という学名 を与えた[ 5] 。このうち、属名のOxycirrhites は、「尖った」を意味する"oxy "と、ゴンベ科のタイプ属 であるイソゴンベ属 の学名"Cirrhitus "の複合語で、本種が尖った口吻 をもつゴンベ科魚類であることを表している。種小名 のtypus は本種がクダゴンベ属のタイプ種 であることを表している[ 6] 。クダゴンベ属には本種の記載後少なくとも2種が記載されたが、そのいずれも現在では本種と同一種(シノニム )とされているため、同属は単型の状態が続いている[ 3] 。
標準和名 の「クダゴンベ」は、本種の長い吻を管に見立てたものである[ 7] 。
クダゴンベ(シェッド水族館 )
本種は他の全てのゴンベ科魚類と、長い吻 を持つことで区別できる。吻の長さは頭部の全長のほぼ二倍に相当する。両顎の犬歯 は均一な大きさで、内側にある絨毛状歯 と比べて僅かに大きい程度である[ 8] 。最大でも全長 13 cm程度の小型魚である。背鰭 は10棘条 13軟条 をもち、臀鰭 は3棘条7軟条をもつ[ 9] 。ゴンベ科の他種と同様、背鰭の棘部には数本の糸状皮弁がみられる[ 10] [ 11] 体色は白を基調とし、赤色の縦帯と横帯が格子状に交差した模様がみられる[ 12] 。一見派手に見えるこの模様は、枝サンゴ の間に隠れる際に保護色 としてはたらいていると考えられる[ 7] 。
本種はインド太平洋 に広く分布する。インド洋 での本種の生息域は紅海 から南へアフリカ 東岸をモザンビーク 北部やマダガスカル まで広がる。生息域はさらに東へ太平洋 へと広がり、東はハワイ諸島 や仏領ポリネシア のソシエテ諸島 、北は日本 、南はオーストラリア まで達する[ 1] 。
日本においては房総半島 から琉球列島 にかけた南日本の太平洋沿岸で散発的にみられるほか、伊豆諸島 と小笠原諸島 でもみられる[ 4] [ 13] 。
水深10-100 mの海域で、ウミトサカ 類やヤギ類などの群体上に生息する[ 1] [ 4] 。
本種は底生 あるいは浮遊性 の小型甲殻類 を主に捕食する。小型の魚を捕食するところも観察されたことがある。生息域全域で個体数はそれほど多くなく、各個体が縄張りを持って行動する[ 9] [ 13] 。ウミトサカ類やヤギ類の群体の周りを活発に遊泳するが、ダイバーが近づくとすぐに枝の間に隠れてしまう。ゴンベ科魚類には性転換 を行なうものが多くいるが、本種が性転換を行うかについては不明である[ 11] 。
本種は観賞魚 として人気があり、野生下で捕獲された個体が流通する[ 14] 。
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