正方形の区画の中に、10000個の点がランダムに打たれていく様子。クラスター(群れや塊)を見い出す事が出来る。
クラスター錯覚 (英 : Clustering illusion )もしくはクラスターの錯覚 とは、サンプルサイズが小さい場合のランダム 分布において必然的に生じるストリーク(線や筋)やクラスター(群れや塊)を、ランダムなものではないと誤判断することである。サンプルサイズが小さいランダムデータもしくはセミ・ランダムデータにおけるバラつきの程度について、人はそれを過小視しがちな傾向を持っている。それが原因となってクラスター錯覚は引き起こされる[ 1] 。
早くからこの問題に取り組んできたトーマス・ギロビッチ (英語版 ) によると、様々なタイプのランダム分布に対して、クラスター錯覚が発生するという。二次元データの事例を挙げると、第二次世界大戦時、V1飛行爆弾 がロンドンの地図上に描いた落下地点はクラスター状になっている。また、時間経過と共に上下する株式市場の価格変動に、パターンを見い出す事も、その一例である[ 1] [ 2] 。ロンドン内への着弾地点の分布状況について、ロンドン市民達は幾つもの個性的な理論を作り上げたのであるが、1946年出版のR. D. Clarkeによる統計的分析によると、ロンドンへのV2ロケット の着弾地点は、ランダム分布に一致している[ 3] [ 4] [ 5] [ 6] [ 7] 。
クラスター錯覚は、ホットハンドの誤謬 が発生する根本的原因になっている。この点については、トーマス・ギロビッチ、ロバート・ヴァローネ、エイモス・トベルスキー が調査を行った。バスケットボール の試合では、シュート は立て続けに連続して(in streak)決まるという見方が存在していて、スポーツキャスターなどは、これをホットハンドを持っているというように解説するし、また、ギロビッチらの調査でも、多くの人が、その見解を信じている事がわかっている。しかし、彼らは、その主張が正しくない事を発見した。彼らが収集したデータによると、成功シュートの後には、微差であるが、成功シュートよりもむしろミスシュートの発生確率が高い[ 8] 。
原因の推論を行う時に、クラスター錯覚のような認知バイアス がかかっていると、テキサスの狙撃兵の誤謬 と呼ばれる錯誤に陥る恐れがある。パターン認識の錯誤についての、より一般的な形のものがパレイドリア やアポフェニア である。これに関連したバイアスとしてコントロール幻想 (英語版 ) があり、クラスター錯覚は、その原因になり得る。また、サンプルサイズの無視 (英語版 ) が発生する原因は、サンプルサイズが小さい場合に、人は大きなバラつきを予期しないことにある。勝ち目が続く流れを誤解するギャンブラーの誤謬 も、認知バイアスの一つである。
ダニエル・カーネマン とエイモス・トベルスキー の説明によると、このような錯誤は代表性ヒューリスティック (この概念自体、彼らが提唱したものである)が原因であるという[ 2] 。
^ a b Gilovich, Thomas (1991). How we know what isn't so: The fallibility of human reason in everyday life . New York: The Free Press. ISBN 0-02-911706-2
^ a b Kahneman, Daniel; Amos Tversky (1972). “Subjective probability: A judgment of representativeness”. Cognitive Psychology 3 : 430–454. doi :10.1016/0010-0285(72)90016-3 .
^ Clarke, R. D. (1946). “An application of the Poisson distribution” . Journal of the Institute of Actuaries 72 : 481. https://www.actuaries.org.uk/documents/application-poisson-distribution .
^ Gilovich, 1991 p. 19
^ Mori, Kentaro. “Seeing patterns ”. 3 March 2012 閲覧。
^ “Bombing London ”. 3 March 2012 閲覧。
^ Tierney, John (3 October 2008). “See a pattern on Wall Street?” (October 3, 2008). TierneyLab (New York Times). http://tierneylab.blogs.nytimes.com/2008/10/03/see-a-pattern-here/ 3 March 2012 閲覧。
^ Gilovich, Thomas; Robert Vallone; Amos Tversky (1985). “The hot hand in basketball: On the misperception of random sequences” . Cognitive Psychology 17 : 295–314. doi :10.1016/0010-0285(85)90010-6 . オリジナル のJanuary 13, 2012時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120113003955/http://www.psych.cornell.edu/sec/pubPeople/tdg1/Gilo.Vallone.Tversky.pdf .