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グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement、以下GIC)とは、歯科医療に用いられる有機セメントの一種で、歯質(エナメル質・象牙質)と金属に接着性があり、フッ素徐放性を示す材料である。
その用途は多岐に渡り、成形歯冠修復材、裏層材、合着材、窩溝填塞材(フィッシャーシーラント)など、現代の歯科医療において広く用いられている。
開発当初はASPA(粉末のalumino-silicata glassと液のpolyacrylic acidの頭文字)と略称されていた。
「アイオノマー」という名称はデュポン社(米)の商標であり、ISOでは「グラスポリアルケノエートセメント」(glass polyalkenoate cement)と呼称されている。
しかし、学術論文でも「グラスアイオノマー」の名称が用いられているため、本項もそれに準じる。
GICは1969年にイギリス国立科学研究所のWilsonとKentによって開発された。
その後、バリウムガラスの添加でX線造影性を持たせる、HY材(タンニン・フッ化物)の添加で抗菌性を持たせる、アマルガム粉末の添加で物性の向上を図るなどの改良が施され、各メーカーで製品化されている。
さらには、レジン成分、光硬化反応システムを付与した「レジン強化型グラスアイオノマーセメント」(Resin-modified glass ionomer cement、以下RMGIC)や、粉液比を高めることで臼歯咬合面の充填も可能な「高強度充填用グラスアイオノマーセメント」(High viscosity glass ionomer cement、以下HVGIC)などが開発され、現在に至る。
なお、以前のGICをRMGICやHVGICと区別するときは、「従来型グラスアイオノマーセメント」(Conventional glass ionomer cement、以下CoGIC)と表現することがある。