歯舌は他のタニシ科と同様で、1個の中歯を中心に、1対の側歯、2対の縁歯(内縁歯と外縁歯)の計7個の歯を横一列として、これが前後に100列あまり並んでいる。滇池産のコブタニシ M. melanioides (螺蛳)の歯舌では、幅0.7-0.9mm、長さ6.0-6.3mm、歯列数は108-128、星雲湖産の M. mansuyi (孟氏螺蛳)の歯舌は、幅0.6-0.7、長さ4.8-5.5、歯列数は105-110で、前者の外縁歯の歯尖(鋸歯状の小歯)は、後者のそれよりも細かく数が多いという報告がある[4]。雌雄異体で、オスの右触角は先端に輸精管が開口し、交尾の際にはこれを陰茎として用いるのも他のタニシ科貝類と同様である。
種類の分類は時代や研究者によっても異なるが、個体変異の幅も大きいため多数の型や亜種が記載(この場合は学名が付けること)されており、そのうちのいくつかは後に独立種に昇格されたものもあり、2005年の中国レッドリスト『中国物種紅色名録』([1]では11種が独立種としてリストアップされている。ただし、これらの分類は主として殻の外見によるもので、分子系統などを用いた詳細な系統関係の研究は未だ不十分であるとされるが、ミトコンドリアDNAのCOI(チトクロームcオキシダーゼ・サブユニットI)遺伝子を用いた5種のコブタニシ属の系統解析では、シナタニシ Cipangopaludina chinensis (中国圆田螺)を外群として、コブタニシ M. melanioides (螺蛳)、M. melanioides dianchiensis (滇池螺蛳)、M. monodi (牟氏螺蛳)、M.tropidophora (乳顶螺蛳)の4種が共通のクレードを形成し、M. yangtsunghaiensis (阳宗海螺蛳)だけが別のクレードとなるという結果が報告されている[7]。なお、この研究で区別されているコブタニシの亜種 M. m.dianchiensis (滇池螺蛳)は『中国物種紅色名録』やIUCNのレッドリストなどでは扱われていない。
また、いくつかの種では核型が調べられており、コブタニシ M. melanioides (螺蛳)と M. monodi (牟氏螺蛳)の染色体数は2n=18、陽宗海に固有の M. yaungtsunghaiensis (阳宗海螺蛳)では2n=10m+6sm+XYであるとされ[8]、分子系統の結果とともに M. yaungtsunghaiensis阳宗海螺蛳が属内でも特に分化した種である可能性が示されている。
螺塔が高く、コブタニシよりも螺肋が強く、肋上の突起も多い。陽宗海の固有種で、学名もこれに因むが、『中国物種紅色名録』[1]には「杨宗海螺蛳(楊宗海螺螄)」(陽が楊になっている)の名で登載されており、本書を引いたサイトなどもこの中国名を用いている。しかし棲息湖名の方は阳宗海(陽宗海)と記載されていることから、中国名の方は誤植の可能性もある。IUCNによる2008年の評価では、新種記載された1949年以来再確認されていなとして、ほとんど絶滅状態に近いが、深所に棲息する種であるため、そのような場所には未だ残存している可能性もあるとしてCRの評価とした[15](陽宗海の平均水深は最深部で30m、平均水深が20mであるという)。一方、『中国物種紅色名録』では、本種は湖の河口付近の三角州に多いとしており、必ずしも一致しない。また、1996年には本種の染色体数が2n=24であるという報告があり[16]、コブタニシや M. monodi など2n=18のものから分化したとの推定がなされている[8]。さらに2008年にはミトコンドリアDNAのCOI遺伝子を用いた分子系統解析がなされ、本種のみが他のコブタニシ類と離れているとの結果が報告されている[7]。
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