ザ・エンジン(The Engine:より正確には片仮名表記ではたとえば「ズィ・エンジン」)は、『ガリヴァー旅行記』の中でジョナサン・スウィフトによって語られた架空の装置である。おそらくこれは、近代的コンピュータに少しでも似ている装置としては最も早く知られた例である[1]。スウィフトによると、
「... ...普通のやり方では芸術や科学を達成するのにどれだけの苦労が要るか誰でも知っておるじゃろう。しかし彼の仕掛けを使えば、全く天才や秀才の力を借りずとも、最も無学な者が、そこそこの値段と少しの肉体労働だけで、哲学、詩、政治、法律、数学、神学についての本を書く事ができるのじゃ。」彼はそれから私を枠組みの方に案内しました。脇には弟子たちが一列に並んで立っています。その面積は二十平方フィート、部屋の中心に置かれていました。表面は沢山の木片で組み立てられていました。木片はさいころ程の大きさで、中には他より大きな物もあります。こうした物が全て細い針金で繋がっているのです。これらの木片のあらゆる面には紙が糊付けされていて、いくつかの語形変化、時制、格変化を含んだ彼らの言葉がバラバラな順序で書かれてありました。「見よ、彼がザ・エンジンを動そうとしておる。」教授は私に言いました。 弟子たちはそれぞれ合図に従い、周りの枠組みに四十ほど取り付けられた鉄のハンドルを握りました。それを突然回転したかと思うと全ての言葉の並びががらりと一変したのでした。 彼は三十六人の弟子に、枠組みに現れたとおり何行か静かに読むよう命じました。彼らは合わせて文章の一部になるような三つか四つの単語を見つけ、残り四人の弟子にそれを書き取らせました。 この作業は三四回繰り返し行われました。
その度にザ・エンジンは複雑に動き、木の四辺が上下に動くのにあわせ単語の位置は移り変わるのでした。
これは、単語の順列組み合わせを生成する装置である。ライムンドゥス・ルルスの『アルス・マグナ』(1275年)に記された、概念を組み合わせ新しい概念を作り出す機械から発想されたものである。