シアッツ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() 復元図
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地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
後期白亜紀 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Siats Zanno & Makovicky, 2013 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シアッツ(学名:Siats)[1][2]またはシアッチ[3][4][5]は、獣脚類恐竜の絶滅した属の一つ。ユタ州の後期白亜紀の地層であるシダーマウンテン累層から発見されている。属名はユタ州先住民のユト族の伝承に登場する人喰いの怪物Siatsに[1][5]、種小名のミーケロムは種の確定に貢献したミーカー家に由来する[5]。
ユタ州東部・シーダーマウンテン累層の表面に露出していた骨炭の断片を偶然見つけたリンジー・ザノは、すぐにそれが重要な恐竜であることに気づいた。この層から大型肉食恐竜の断片が見つかることはまれであった。ザノは、「地中に残りがどの程度埋まっているのかわからなかったが、それが大型獣脚類の骨であり、この大陸における獣脚類の進化の歴史の大きな空白を埋めるものだと、見た瞬間にわかったので興奮した」と語っている[1]。発掘とクリーニングには2年を要し、標本の分析にはさらに2年を費やすことになった[5]。得られた骨格は、脊柱・股関節の一部・後肢・足先から構成される部分的なものであった[1]。
当初ザノはアクロカントサウルスのような生物を予想していたが、新発見の恐竜はそれとはまた別の系統だった。骨の顕著な解剖学的特徴から、この恐竜はネオヴェナトル科という新たに提唱された肉食恐竜の分類に属することが判明した。同科に所属するネオヴェナトルと同様に、シアッツは大きな頭のティラノサウルスに比べて先のとがったスリムな頭をしており、また短い2本指の前肢ではなく、比較的長い3本爪の前肢をもっていたと考えられる[1]。
発見された骨格は不完全で、しかも幼体のものだったため、成熟したシアッツの正確な大きさははっきりとは分からない。他の恐竜のより完全な骨格と比較した結果、シアッツの幼体は最低でも全長約9メートル、体重約4トンはあったと推測される。これは北アメリカで発見された肉食恐竜の中で3番目に入る大きさであり、成体はさらに大型であった可能性がある。今後の発見次第で、シアッツの成体が世界最大の肉食恐竜であったことが明らかになるかもしれないとザノは述べている[1]。
ホロタイプは未成熟な単一個体のもので、脊椎の癒合が完全ではなかった。シアッツはいくつかの固有形質によって特徴づけられる。その形質は、遠位尾椎の三角形の断面、近位尾椎に穴を欠く伸長した正中線の厚い層、腸骨の横方向に窪んだ寛骨臼、そして腸骨下部の突起の横側の端部に存在する切れ目である。他の注目すべき形質には、胴椎にある広い神経棘が含まれる[6]。
シアッツは北米大陸から知られる獣脚類で最大級のものの一つである。ザノとマコヴィッキーは2013年、大腿骨を基準に仮に他のメガラプトル類のプロポーションを当てはめた場合、ホロタイプFMNH PR 2716の全長は11.9mと推定された。大腿骨の円周から計算して体重はおよそ4トンと推定した。 ザノらは、骨格が未成熟個体のものであることを示しているにもかかわらず、ホロタイプの標本がすでにサウロファガナクスやアクロカントサウルスに匹敵すると著している[6]。もしシアッツがネオヴェナトル類であるとすれば、その発見は後期白亜紀にティラノサウルス類が現れてもアロサウルス上科の動物が北米大陸の支配を続けていたことになる[7]。しかしながら、2016年までに彼らは実際はメガラプトル類であると指摘された。メガラプトル類はしばしばネオヴェナトル類かティラノサウルス類であるとされる。しかし、他のメガラプトル類の研究では、彼らがティラノサウルス類と独立して収斂進化したカルノサウルス類であるとしているものもある[8]。
シアッツ・ミーケロルム Siats meekerorumの1種で成る。
本種は北米大陸で発見されたものの中で最も新しいネオヴェナトル類とされる[6] 。しかし、最近の分析ではメガラプトル類あるいはティラノサウルス類[9]、アロサウルス上科、または基盤的コエルロサウルス類[10]である可能性がある。より最近の研究ではシアッツのようなメガラプトル類やネオヴェナトル類はカルノサウルス類の一部に含まれる可能性が指摘されている。彼らはティラノサウルス科のような姿に収斂進化したものと指摘した[8]。
以下はザノとマコヴィッキーによる2013年のクラドグラム[6]。
アロサウルス上科 |
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Naish と Cau による 2022 年の研究では、シアッツはティラノサウルス上科内に置かれたメガラプトル類に配置された[11]。
ティラノサウルス上科 |
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シアッツとほぼ同時期の地層から産出した恐竜にはモロスが知られている。このモロスはティラノサウルス上科に属する恐竜であるが、より後の時代の動物であるティラノサウルスと異なり、全長2m程度の小型の属であった。両者の共存からは、約9800万年前の時点でシアッツが頂点捕食者の地位に就き、モロスに代表される当時のティラノサウルス上科がそれよりも低次の消費者の地位を占めていたことが分かる[2]。同様の関係はウズベキスタンから産出したウルグベグサウルス(カルカロドントサウルス類)とティムルレンギア(ティラノサウルス上科)にも見ることができ[12]、後期白亜紀の後半に入るまで頂点捕食者の遷移が生じていなかったことが示唆されている[3][12]。