シデロプス(学名:Siderops)は、約1億7600万年前の前期ジュラ紀トアルシアン期に生息していた、分椎目に属する絶滅した両生類の属。化石はオーストラリアのクイーンズランド州で発見されている。全長は2.6メートルに達し、既知の範囲内ではジュラ紀における両生類として最大である。鋸歯を伴う細かい歯から肉食性が示されており、ワニと同様に河川環境に適応した捕食動物とみられている[1]。
シデロプスはクイーンズランド州Surat盆地 (en) に分布するエバーグリーン層(英語版)から産出したホロタイプ標本のみが知られている。ホロタイプは下顎を伴う完全な頭蓋骨と体骨格から構成されている[2]。全長は2.6メートルに達し、ペルム紀のプリオノスクスや三畳紀のマストドンサウルスよりは小型であるが、ジュラ紀における最大の両生類であった[1]。
頭蓋骨の形状は背側から見て半円形で[1]、左右の幅は70センチメートルに達するが[3]、上下に薄い[1]。眼窩は吻部先端に近い位置にあり、両眼球の間には正中線を挟んで広い間隙がある[1]。肋骨や四肢は顕著な発達をしていない[1]。
口腔に生えた細かい歯は先端が湾曲しており、顎で捕獲した獲物を逃しにくい構造をなす。加えて歯の縁には鋸歯が並んでおり、獲物の軟体部を切り裂く効果を高めていた。こうした形質状態は水圏の捕食動物としての適応であった[1]。
シデロプスは分椎目の下位分類であるブラキオプス形類(英語版)に属し、またその中でもブラキオプス上科キグチサウルス科(英語版)に位置付けられる[2]。以下はブラキオプス上科の系統関係を示すクラドグラムであり、Warren et al. (1983) および Ruta et al. (2007) に基づく[2][4]。
- ^ a b c d e f g 土屋健『地球生命 水際の興亡史』松本涼子、小林快次、田中嘉寛(監修)、技術評論社、2021年7月15日、78-80頁。ISBN 978-4297122324。
- ^ a b c Warren, A. A.; Hutchinson, M. N. (1983). “The Last Labyrinthodont? A New Brachyopoid (Amphibia, Temnospondyli) from the Early Jurassic Evergreen Formation of Queensland, Australia”. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences 303 (1113): 1–62. Bibcode: 1983RSPTB.303....1W. doi:10.1098/rstb.1983.0080. https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rstb.1983.0080 30 March 2022閲覧。.
- ^ Steyer, J. Sébastien; Damiani, Ross (2005-05-01). “A giant brachyopoid temnospondyl from the Upper Triassic or Lower Jurassic of Lesotho”. Bulletin de la Société Géologique de France 176 (3): 243–248. doi:10.2113/176.3.243. ISSN 0037-9409. https://doi.org/10.2113/176.3.243.
- ^ Ruta, M.; Pisani, D.; Lloyd, G. T.; Benton, M. J. (2007). “A supertree of Temnospondyli: cladogenetic patterns in the most species-rich group of early tetrapods”. Proceedings of the Royal Society B 274 (1629): 3087–3095. doi:10.1098/rspb.2007.1250. PMC 2293949. PMID 17925278. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2293949/.
- クーラスクス - 白亜紀のオーストラリアに生息した分椎目。本属と近縁とされる。