シュードモナス・スタッツェリ
分類
学名
Pseudomonas stutzeri
シノニム
Bacillus denitrificans II Burri and Stutzer 1895 Bacterium stutzeri Lehmann and Neumann 1896 Bacillus nitrogenes Migula 1900 Bacillus stutzeri Chester 1901 Achromobacter sewerinii Bergey , et al. 1923 Achromobacter stutzeri Bergey , et al. 1930 Pseudomonas stanieri Mandel 1966 Pseudomonas perfectomarina corrig. (ex ZoBell and Upham 1944) Baumann, et al. 1983 Pseudomonas chloritidismutans Wolterink, et al. 2002
シュードモナス・スタッツェリ (Pseudomonas stutzeri )とは、シュードモナス属 のグラム陰性 細菌 である。ヒト の脳脊髄液 から単離された[ 1] [ 2] 。
脱窒 菌である[ 3] 。発症はまれだが、ヒトに対して日和見感染 の病原性を持つ[ 4] 。2000年に行われたシュードモナス属細菌の16S rRNA系統解析 により、シュードモナス属の分類群の中にP. stutzeri グループが設けられ、P. stutzeri はそのグループの代表種に位置づけられた[ 5] 。
Pseudomonas stutzeri は、単一の極鞭毛 を持つグラム陰性 桿菌 である。単一の極鞭毛 を持ち、運動性を有する。細胞の大きさはおおよそ1-3μm×0.5μmである。コロニーは円盤型で、中心からしわが放射状に広がっている。
Pseudomonas stutzeri は様々な環境に生息しており、その代謝特性も非常に多種多様である。また、代謝特性の多様性は、系統学的に同じとされる菌株間でも観察される。
Pseudomonas stutzeri は炭素源として有機物を摂取ことができる従属栄養微生物 であり、大気中の二酸化炭素 を使うことができる独立栄養微生物 でもある。
P. stutzeri には脱窒 菌株と窒素固定 菌株がいる。脱窒菌株は電子受容体として酸素ではなく硝酸塩 を利用することができる。この場合、硝酸塩は細胞内で亜硝酸塩 、酸化窒素 、亜酸化窒素 、最終的に窒素ガスへと段階的に変換される。窒素固定菌株は米 の根に生息し、米と共生している。いくつかの窒素固定菌株は、窒素ガス以外に窒素源がない環境で米を生長させることが確認されている。
エネルギー(電子)源としてチオ硫酸塩 を用いる菌株も存在する。また、一部の菌株は、リン酸源がない環境でリン酸塩 または次亜リン酸塩 を酸化する。鉱山 や重金属 汚染された土壌など、重金属が高濃度で残留する環境で重金属耐性菌株が単離されている。今までに銀 、亜鉛 、ニッケル イオン、並びに亜テルル酸 、亜セレン酸 への耐性菌株が確認されている。
これらの菌株は農業 技術に利用できる。また、バイオレメディエーション や排水処理に利用できる菌株もある。
Pseudomonas stutzeri の3菌株のゲノム シークエンシング が完了している。ゲノムサイズは最も大きかったもので4,547,930bp で、他の2菌株はこれより少し小さい程度だった。これら3菌株はプラスミド を持たない。
ゲノムシークエンシングされた3菌株のうち2菌株から脱窒活性の遺伝子が見つかった。33個の遺伝子からなる30kbpのクラスター領域があり、窒素酸化物 還元酵素 およびそれの組み立てと電子の供与に関わる遺伝子をコードしている。このクラスターに含まれていない遺伝子もP. stutzeri の脱窒過程に関わっていると考えられている。
P. stutzeri は、環境中から同種および異種のプラスミドDNAを取り込み、自身のゲノムに統合する自然形質転換 [ 英 : natural transformation ]をすることができる。この能力は多様な環境に適応することを可能にし、P. stutzeri は世界中の幅広い環境中から見出せる。
ゲノムシークエンシングされた3菌株は安息香酸 とカテコール を分解する遺伝子を持つ。また、化学走化性 に関わる遺伝子も発見されている。
Pseudomonas stutzeri は稀にヒトに日和見感染 する。P. stutzeri を含む多くのシュードモナス属細菌は皮膚感染する(壊疽性膿瘡[ 英 : ecthyma gangrenosum ])。また、人工骨 の埋め込み施術後にP. stutzeri 感染することもある。P. stutzeri の感染症の治療は、患者が死亡した2例を除いてすべて抗生物質により成功している。ただし、死亡した2例において、死亡原因がP. stutzeri の感染によるものか、他の要因によるものかははっきりしていない。
土壌 、特にcordgrass(Spartina 属(英語版) の多年生イネ科 植物)、大麦、小麦、米などの植物の根圏 に生息している。海水 および海水中の堆積物 からも見出される。マリアナ海溝 の熱水噴出孔にも生息している[ 6] 。
Pseudomonas stutzeri とP. fluorescens は細胞膜 で四塩化炭素 [ 注釈 1] を還元 し、二酸化炭素 と非揮発性物質 に分解する[ 7] 。このため、四塩化炭素のバイオレメディエーション への利用が研究されている。
KC株は四塩化炭素のバイオレメディエーションへの利用が有望視されている株の一つであり、帯水層 から単離された。KC株は四塩化炭素を最終的に二酸化炭素、ギ酸 、非揮発性物質に変換する。揮発性の塩化炭化水素 を分解する生物により産生される非揮発性物質は一般に代謝されるか環境中に蓄積する[ 8] [ 9] [ 10] [ 11] 。また、他の四塩化炭素分解性の脱窒 微生物の大部分は、同等もしくはより高い残留性を持つクロロフォルム の環境中の蓄積を引き起こすのに対して、KC株はクロロフォルムを生産しない[ 12] [ 13] [ 14] 。
KC株が迅速に四塩化炭素を分解するためには、500Da の小因子が必要である。この小因子は、栄養素としての鉄分 Fe3+ が不足している条件において、対数増殖期 に分泌される。また、四塩化炭素の分解経路には酸素は用いられないが、小因子は酸素の利用と脱窒により産生される[ 15] 。小因子が与えられている条件では、四塩化炭素を分解しない生物も分解活性を示す[ 16] 。
ATCC 17588
CCUG 11256
CFBP 2443
CIP 103022
DSM 5190
JCM 5965
LMG 11199
NBRC 14165
NCCB 76042
VKM B-975
^ 四塩化炭素 とは、生物に有毒な化学物質であり、動物に対して急性肝毒性を示す疑いが指摘されている(Sittig 1985)。1987年にモントリオール議定書 でオゾン層 破壊物質の一つに指定され、以降、製造が禁止されている。
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