ジャック・フィニイ(Jack Finney, 1911年10月2日 - 1995年11月16日) は、アメリカ合衆国のSF作家、推理作家、ファンタジー作家。姓はフィニイ(早川書房、角川書店)の他、フィニー、フィニィの表記もある。代表作は『盗まれた街』と『ふりだしに戻る』で、前者は1956年の映画『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』とその後のリメイク作品の原作である。
ウィスコンシン州ミルウォーキーで生まれ、ジョン・フィニイと名付けられた。3歳のころ父を亡くし、父の名をとってウォルター・ブレイデン・フィニイと改名された。しかし通称は「ジャック」のままであり、生涯そう呼ばれることになった。イリノイ州のノックス大学を1934年に卒業する。マーガレット・ゲストと結婚し、2人の子供をもうけた。ニューヨークの広告代理店でコピーライターを務めていたが、1950年代初めごろにカリフォルニア州に移住する。カリフォルニア州ミルバレーに住んでいたが、肺炎と肺気腫が原因で同州グリーンブリーで死去した。
1947年、ミステリ専門誌『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』の短編コンテストで、短編「未亡人ポーチ」(The Widow's Walk (Weak Spot))によって特賞を受賞し、作家デビューした。処女長編『五人対賭博場』は1954年に出版され、翌年には映画化された。
長編『盗まれた街』(1955年)は1956年の映画『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』の原作とされ、その後何度かリメイクされた。豆の莢から出現し、付近の人間に成り代わることで地球を侵略していく異星人を描いた話である。
もう1つの長編『クイーン・メリー号襲撃』(1959年)も映画化され、フランク・シナトラが豪華客船クイーン・メリー号から大胆な強奪を図るギャングのボスを演じた。
フィニイの最高傑作とされているのがSF長編小説『ふりだしに戻る』(1970年)である。ニューヨークで広告の仕事をしていた主人公サイモン・モーリーは、タイムトラベルを達成しようとする政府の秘密のプロジェクトに勧誘される。物理的な機械を使うのではなく、参加者が自身を特定の時代と場所の歴史や文化に置き、催眠または自己催眠によってタイムトラベルを達成するというのである。モーリーは1882年のニューヨークへと旅立つ。この小説は当時のニューヨークの市民生活を鮮明に描いている。モーリーは執筆当時には既に無くなっていた史跡(例えば、1939年まであった郵便局。現在のニューヨーク市庁舎南側の公園にあたる)や現存する史跡(例えば、セント・パトリック大聖堂は当時は5番街付近で最も背の高い建物だった)を多数目にした。
1987年、フィニイはナッシュビルで開催された世界幻想文学大会で世界幻想文学大賞生涯功労賞を受賞した[1]。
短編「おかしな隣人」はスティーヴン・スピルバーグの『世にも不思議なアメージング・ストーリー』の一編として映像化されている。
『ふりだしに戻る』から25年後の1995年、フィニイは続編『時の旅人』を出版した。主人公は同じで、今度は1912年のマンハッタン中心部へと旅立つ。この作品を書き上げて間もなく、フィニイは84歳で亡くなった。
1998年にはフィニイの短編「愛の手紙」(1959年)を原作としたテレビ映画『The Love Letter』(出演: キャンベル・スコット、ジェニファー・ジェイソン・リー)が放映された。
ノックス大学のSFおよびファンタジーについての雑誌 "The Third Level" [1] は、フィニイの短編と同名の短編集『レベル3』にちなんで名付けられたものである。
なお、ジャック・フィニイ著『バターより銃』(ハヤカワ・ポケット・ミステリNo.922)という本が存在するが、これは誤記で実際はニコラス・フリーリングの作品であり、フィニイの著作ではない。
その他短編多数