チュマシュ語族 (Chumashan languages)は、アメリカ合衆国 カリフォルニア州 南部の太平洋岸、およびチャンネル諸島 の島々に住んでいたチュマシュ族 (英語版 ) によってかつて話されていた諸言語からなる小さな語族 。現在はすべて死語 になっている。
「チュマシュ」という語は、サンタクルス島またはサンタロサ島の島民を意味する沿岸の言葉に由来する[ 3] 。
チュマシュ語族の話者は、カリフォルニア州サンタバーバラ郡 、サンルイスオビスポ郡 、ベンチュラ郡 、およびカーン郡 に分布していた。
西洋人との接触以前の人口の推定値は学者によって大きく異なるが、1969年のチェスター・キングの地図では、すべて合わせて10,700人から17,250人の間としている[ 4] 。
ヨーロッパ人で記録に残る限り最初に現在のカリフォルニア州を訪れたフアン・ロドリゲス・カブリリョ は、1542年から翌年にかけてチュマシュ族と会っている[ 1] [ 5] 。
チュマシュ語族を構成する言語のうち沿岸部の5種類は、フランシスコ会 の建てたミッション に従って名がつけられている[ 1] 。
うち、オビスペーニョ語は他の言語と音声・文法が大きく異なっていた[ 6] 。
チャンネル諸島の3つの島(サンミゲル、サンタロサ、サンタクルス )で話されていたチュマシュ語族の言語を島嶼チュマシュ語 (Island Chumash, Isleño)というが、人々は1824年に内地に移された[ 1] 。
内陸部でもチュマシュ語族の言語は話されていたが、資料がほとんど残っておらず、他の言語とどの程度異なっていたかはわからない[ 1] 。
1965年にバルバレーニョ語の最後の話者が死亡して、チュマシュ語族の言語はすべて消滅した[ 1] 。
イネセーニョ語、バルバレーニョ語、ベントゥレーニョ語に関しては詳しい記録が残されている。
チュマシュ語の形態音韻論 の特徴に子音調和があり、歯擦音 の s と š が音韻的に区別されるにもかかわらず、ひとつの単語の中ではどちらか一方しか出てこない[ 7] [ 8] 。同様の現象はアサバスカ語族 にも存在する[ 9] 。
文法では人称や時制だけでなく、方向を表す複雑な接頭辞を発達させている[ 10] 。
チュマシュ語族と他の語族との系統的な関係は知られていない。
19世紀以来、北に隣接するサリナ語 との間に親縁関係があるという主張があった[ 11] 。1913年にローランド・ディクソンとアルフレッド・L・クローバー は両者をまとめて「イスコム語」(Iskoman、チュマシュ語で数の2を意味する語に由来)と命名し[ 12] 、後にホカ大語族 に含めた[ 13] 。しかし、現在ではホカ大語族との親縁関係を否定する説が有力である[ 14] [ 15] 。
^ a b c d e f Campbell (1997) p.126
^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Chumashan” . Glottolog 2.7 . Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/chum1262
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^ Campbell (1997) p.126
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^ Mithun (1999) p.140
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^ Dixon & Kroeber (1913) pp.652-653
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Dixon, Roland B; Kroeber, A.L (1913). “New Linguistic Families in California”. American Anthropologist, New Series 15 (4): 647–655. JSTOR 659723 .
Dixon, Roland B; Kroeber, A.L (1919). Linguistic Families of California . Berkeley: University of California Press. https://archive.org/details/linguisticfamili00dixorich
Golla, Victor (2011). California Indian Languages . University of California Press. ISBN 0520266676
Grant, Campbell (1978). “Chumash: Introduction”. In Heizer, Robert F. Handbook of North American Indians . 8: California . Smithsonian Institution. pp. 505-509
Kroeber, A.L (1925). Handbook of the Indians of California . New York: Dover Publications
Mithun, Marianne (1999). The Languages of Native North America . Cambridge University Press. ISBN 0521232287