DHC-4 カリブー
デ・ハビランド・カナダ DHC-4 カリブー(de Havilland Canada DHC-4 Caribou)は、カナダのデ・ハビランド・カナダ社が開発したSTOL輸送機。愛称のカリブーとはトナカイのことである。カナダ国防軍での呼称はCC-108。
本機は貨物なら3.1トン、兵員なら32名という搭載量を持ちながら400m以内の距離で離着陸が可能であり[1]、250mの前線滑走路で運用した例もある。逆ガル形式の主翼には、その全翼幅に渡ってダブルスロッテッドフラップが配置され、外側はエルロンとしても機能するようになっていた。胴体には矩形断面の貨物室と後部ローディングランプを備え、高翼配置の主翼と尾部を高く上げたデザイン、そして低い床によって積み込みが容易になるよう配慮されており、軽車両等の自走搭載も可能だった。ただし登場当時としては速度性能に難があり「ヘリコプターより遅い」と評されるほどだった。また全天候性能も欠いていた。
DC-3の搭載量とDHC-2 ビーバーやDHC-3 オッターのSTOL能力を併せ持つ機体として1956年に開発が決定した。この計画はカナダ国防軍及びアメリカ陸軍の注目するところとなり、カナダから2機、アメリカから5機の試作発注を受ける形で開発が進められ、試作機は1958年7月30日に初飛行を行った。そしてカナダではCC-108、アメリカではAC-1の名称で採用され、配備が進められた(アメリカについては後述)。なお、生産24号機以降は最大離陸重量が増加したDHC-4Aに生産が移行している。[2]
その性能は海外でも高く評価され、世界中の空軍のみならず民間でも広く採用された。生産は1973年まで続けられ、総生産数は307機。カナダでは後継機のDHC-5 バッファローに置き換えられ、他の多くの運用国でも1980年代には次第に退役していったが、その卓越したSTOL性能からオーストラリアなど一部の国では2000年代に入ってもしばらく現役にあった。[2]
アメリカ陸軍は試作発注した機体による評価試験の末、AC-1の名称でDHC-4を採用した。「AC」というのは空軍独立後・三軍名称統一前の時期にアメリカ陸軍が航空機に付けた記号で、固定翼輸送機を示す。
AC-1は当時の空軍と陸軍の固定翼機の大きさに関する協定を大きく逸脱しており、論議を呼んだが、制限を撤廃することで陸軍の装備・運用が認められた。AC-1は56機生産され、その後第2次生産分のAC-1Aに移行した。AC-1はその後すべてAC-1A規格に改修されている。
AC-1、AC-1Aは1962年の三軍の航空機名称統一の際に、CV-2A/Bと改称した。その間も陸軍と空軍の管轄問題は論議され続け、近距離では同等の輸送力を持つCH-47の登場により1966年になってようやく「固定翼戦術輸送機は空軍」ということで決着し、1967年1月にCV-2A/Bは空軍に移管されてC-7A/Bとなった。
C-7はヘリコプターの大型化がまだ進んでいない時期にあって極めて有用な前線輸送機であり、カナダ軍やオーストラリア軍のDHC-4と共にベトナム戦争で多用された。1963年時点で、C-123が南ベトナムにある全滑走路中11%しか使用できなかったのに対し、こちらはその77%で発着できたことがその有用性を証明している。戦後は空軍予備役軍団や空軍州兵に移管され、C-130に更新される1980年代まで運用された。
インド空軍などにも援助として少数が引き渡されている。また、北ベトナムによって鹵獲されたC-7が1970年代の終わりまで同国内で使用されていた。
(DHC-4A)[2]