トラトロフス

トラトロフス
生息年代: 中生代後期白亜紀カンパニアン, 73–72.5 Ma
Tlatolophus galorumの復元図
地質時代
中生代後期白亜紀カンパニアン
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 鳥盤目 Ornithischia
亜目 : 鳥脚亜目 Ornithopoda
上科 : ハドロサウルス上科
Hadrosauroidea
: ハドロサウルス科
Hadrosauridae
亜科 : ランベオサウルス亜科
Lambeosaurinae
: パラサウロロフス族英語版
Hadrosaurini
: トラトロフス属
Tlatolophus
学名
Tlatolophus
Ramírez-Velasco et al., 2021

トラトロフス学名Tlatolophus[1]は、ハドロサウルス科ランベオサウルス亜科に属する鳥脚類恐竜化石2005年メキシココアウイラ州で頭蓋骨などが産出し、2021年に記載された。全長約8メートル、腰の高さは約2メートルに達し、学名の由来にもなった特徴的な鶏冠を持つ。鶏冠は鳴き声を介したコミュニケーションに用いられていた可能性がある[2]

発見と命名

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半ば関節したほぼ完全な尾椎骨であるランベオサウルス亜科の標本CIC/P/14は、2005年にメキシコ・コアウイラ州のGeneral Cepeda Municipality (enに分布するCerro del Pueblo Formation (enの堆積層から発見された。当該の地層は後期白亜紀の海域・陸域環境に堆積した泥岩砂岩シルト岩から主に構成されており、CIC/P/14は砂岩を挟んだ泥岩から発見された[3]。さらに2013年には国立人類学歴史研究所メキシコ国立自治大学による合同発掘調査が実施され、追加の尾椎と複数の体骨格要素および頭蓋骨が発見された。回収された骨格は空圧式チゼルとスルファミン酸水溶液を用いたプレパレーションが実施されたが、骨格が大型であることと母岩の硬さを理由に、2021年の記載時点では頭骨を除いて作業が完了していない[3]

2021年にトラトロフス・ガロルム[2](Tlatolophus galorum)として記載・命名された。アステカの絵文字に鶏冠が似ることから、属名はナワトル語で「言葉」を意味する"tlahtolli"とギリシア語で「鶏冠」を意味する"lophos"に由来する。種小名は研究に協力した人物および一家にちなむ[3]

特徴

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トラトロフスの頭蓋骨の特徴は、高さに対する長さの比が1.79と比較的小さく、すなわち頭蓋骨が前後に長いことにある。この他に前上顎骨は幅広で、最小の幅に対する最大の幅が約2倍である。上顎骨の上行枝の背側頂点は低く、翼状骨の背側突起は高く凸状である。前上顎骨で構成される頭頂部の鶏冠は高く、根本に比べて先端が広く丸みを帯びており、逆コンマ型をなす。後頭関節丘は56°腹側に傾き、鱗状骨の平坦部は大後頭孔の直径と同程度に長い。口蓋骨は完全な口蓋複合体の形成に参加し、口蓋骨と関節する涙骨には薄板状の構造が認められる。下側頭窓眼窩の背側縁は同程度の高さに位置する。鼻骨は長く、尾側に広がり、二股に分かれる[3]。こうした形態形質、特に鶏冠や口蓋骨・涙骨の構造は本属に特異的であり、新属新種として判断されるに至った[3]

系統

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トラトロフスは最大節約法を用いた系統解析においてパラサウロロフス族英語版に位置付けられた。このため、カロノサウルスパラサウロロフスと比較して幅広な鶏冠はトラトロフスの共有原始形質と解釈されている。なお、20個の最節約樹から導かれる厳密合意樹の一致指数は0.299、保持指数は0.720、枝長は1436であった[3]。以下は原記載論文におけるクラドグラム

 パラサウロロフス族英語版 

Tlatolophus galorum

Blasisaurus canudoi

Charonosaurus jiayinensis

Parasaurolophus cyrtocristatus

Parasaurolophus tubicen

Parasaurolophus walkeri

 ランベオサウルス族英語版 

Kazaklambia convincens

Arenysaurus ardevoli

Amurosaurus riabinini

Sahaliyania elunchunorum

Velafrons coahuilensis

Hypacrosaurus altispinus

Hypacrosaurus stebingeri

Olorotitan arharensis

Magnapaulia laticaudus

Corythosaurus casuarius

Corythosaurus intermedius

Lambeosaurus lambei

Lambeosaurus magnicristatus

出典

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  1. ^ Michael Greshko. “ギャラリー:2021年に発見された驚異の新種恐竜10選から画像5点”. ナショナルジオグラフィック協会. 2022年2月8日閲覧。
  2. ^ a b 2021年に発見された驚異の新種恐竜10選、日本のヤマトサウルスも”. Yahoo!ニュース. ナショナルジオグラフィック協会 (2021年12月10日). 2022年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月8日閲覧。
  3. ^ a b c d e f Ramírez-Velasco, Á. A.; Aguilar, F. J.; Hernández-Rivera, R.; Gudiño Maussán, J. L.; Rodriguez, M. L.; Alvarado-Ortega, J. (2021). “Tlatolophus galorum, gen. et sp. nov., a parasaurolophini dinosaur from the upper Campanian of the Cerro del Pueblo Formation, Coahuila, northern Mexico”. Cretaceous Research 126: Article 104884. doi:10.1016/j.cretres.2021.104884.