『ドン・ファン』(独: "Don Juan", Tondichtung nach Nicolaus Lenau)作品20は、リヒャルト・シュトラウスが1888年に作曲した交響詩[1]。初期の管弦楽曲でシュトラウスの出世作とされる。理想の女性を追い求めて遍歴を重ねるスペインの伝説上の人物、ドン・ファンを主題としたニコラウス・レーナウの詩に基づいている。
実際に作曲されたのは交響詩『マクベス』作品23より後であるが、『マクベス』は改訂を経ているため、『ドン・ファン』の作品番号が先になった。現在でも、シュトラウスの交響詩のなかでは演奏の機会は多いほうに入る[要出典]。
シュトラウスがミュンヘンの宮廷歌劇場の第3楽長を務めていた時期にあたる[2]1887年から1888年にかけて作曲された。
1889年11月11日、ヴァイマルの宮廷オーケストラによって、作曲者自身の指揮で初演された。
日本初演は1927年11月22日、日本青年館にて近衛秀麿と新交響楽団によって行われた。
約17分
3管編成の管弦楽を用いている。
一種のロンド形式とソナタ形式で構成されている[2]。ホ長調。
アレグロ・モルト・コン・ブリオ。冒頭、情熱的な弦の上昇音型で「悦楽の嵐」[3]のテーマが出る。すぐに木管の下降音型で理想の女性を表すテーマが出る(5小節目)。続けて弦と木管・ホルンでドン・ファンの行動力を表す第1のテーマが提示される(9小節目)。小休止の後、独奏ヴァイオリンの美しい旋律で最初の女性が提示され(D、2小節目)、木管が最初のランデヴーを表すが(D、19小節目)、音楽は次第に切迫感を高めていき、強烈な不協和音がドン・ファンの失望を表す(F、21小節目)。続いて、弦楽器で第2の女性が現れ、やがてオーボエの魅惑的な旋律[4]でランデヴーが展開される(L、4小節目)。ホルンの強奏による有名な[要出典]メロディーが出る(N、19小節目)。これはドン・ファンの第2のテーマ[4]で彼の不満を表すとされる[要出典]。これまでのドン・ファンのテーマや女性のテーマが交錯し、女性を追い求め、満たされぬドン・ファンの苦悩と焦燥が描かれる。いったん静かになるが(V、10小節目)、再び冒頭のドン・ファンのテーマと第2のテーマが回帰し、絢爛たるクライマックスを築く(W)。三たび冒頭のテーマが出るが、音楽は速度を増し、壮絶なカタストロフがやってくる。全休止の後(Cc、17小節目)、曲はホ短調に変わり、ドン・ファンの悲劇的な死が暗示される。「薪は燃えつくし、炉は冷たく暗くなった」[3]のである。
(練習番号はアイプル社の総譜による)
アイプル社(ミュンヘン、JOS AIBL VERLAG)