バウルスクス(学名:Baurusuchus)は、後期白亜紀のブラジルに生息していた、絶滅したワニの属。陸棲の捕食動物または腐肉食動物であった。化石はチューロニアン - サントニアン階に相当するブラジルのアダマンティナ累層(英語版)から産出している[1]。属名はブラジルのバウル層群(英語版)にちなんでおり、より小型のキノドントスクス(英語版)属から再分類された[2]。種は発見者の Eng Joviano Pacheco にちなんで命名された B. pachechoi[3]、ブラジルのサンパウロの General Salgado County にちなんで命名された B. salgadoensis[4]、ブラジルの古生物学者 Alberto Barbosa de Carvalho にちなんで命名された B. albertoi[1]が報告されている。
B. salgadoensis は砂漠気候に生息していた陸棲の捕食動物であったと見られている。外鼻孔の位置から本種は現生のワニのような水陸両方の生態には適応していなかったことが示唆され、獣脚類のように幅が狭くなっている吻部と歯からは陸棲仮説が支持されている。高温地域に生息していたという仮説は現生のワニに基づくものであるとともに、産出している化石の層序にも基づいている。本種の化石は高温かつ砂漠気候であった地域の氾濫原と解釈されている巨大なきめ細かい砂岩から発見されている。現生のアリゲーターが行うような体温調節のため、あるいは乾季に水を求めて、バウルスクスは地面に穴を掘ることもできた可能性が高い。対応する層準で非常に保存の良い骨格が報告されていることからもこれは示唆されており、これらの戦略でバウルスクスは現生のワニよりも乾燥した内陸の地域で生息できたと考えられている。翼状骨が強く湾曲していることから、バウルスクスは強い咬合力で素早く顎を閉じられたことも示唆されている。バウルスクスは獲物を待ち伏せし、鋸歯状の歯で噛みついて仕留めていたと推測されている。このスタイルは現生のコモドオオトカゲのそれに近い。バウルスキュウスは生態系の中で重要な役割を果たしていたと考えられ、アベリサウルス類と食料をめぐって競争していたと考えられる[4]。
^Bonaparte, Jose F. (1996). “Cretaceous tetrapods of Argentina”. Muncher Geowissenschaften, Abhandlungen30: 73–130.
^ abPrice, L.I. (1945). “A new reptile from the Cretaceous of Brazil”. Departamento Nacional da Produção Mineral, Notas Preliminares e Estudos (Rio de Janeiro) 25: 1–8.