パスツレラ症

パスツレラ症(パスツレラしょう、: pasteurellosis)は、パスツレラ属Pasteurella)菌を原因菌とする日和見感染症で人獣共通感染症である[1]

原因

[編集]

グラム陰性通性嫌気性両端染色性小短桿菌のPasteurella multocidaの感染を原因とする[1][2]。まれにPasteurella canisPasteurella dagmatisPasteurella stomatisPasteurella hemolyticaなども原因となる。

疫学

[編集]

イエネコの口腔には、約95%、爪には70%、イヌ口腔には、約75%の確率でパスツレラ属菌が常在菌として存在する[3]。つまり、人獣共通感染症の様相を呈している。殆どが、咬傷あるいは掻傷により感染する。まれに外傷を伴なわない口腔経由の感染や飛沫感染などにより呼吸器系の疾患を起こすことがある[1]。低免疫状態からの日和見感染、糖尿病、アルコール性肝障害の罹患者は重症化しやすい[3] 。鶏肉が原因となった疑いのある食中毒症状の報告もある[3]

症状

[編集]
咬傷、掻傷の約30分から数時間後に激痛を伴う腫脹と精液様の臭いのする浸出液が排液される[1][6]

診断

[編集]
  • 接触歴、膿汁からの菌の分離同定。

治療

[編集]
  • 感受性のある抗生物質を使用。

予防

[編集]

対策としては、犬、猫からの咬傷や掻傷を受けないようにすることが予防の基本となる。

脚注

[編集]
  1. ^ a b c d 原弘之、「人獣共通感染症としてのパスツレラ感染症」 『日本集中治療医学会雑誌』 2012年 19巻 2号 p.158-160, doi:10.3918/jsicm.19.158, 日本集中治療医学会。
  2. ^ 丸山務, 景森令克「イヌネコの咬・掻傷に起因するヒトのパスツレラ症」『日本獣医師会雑誌』第35巻第11号、日本獣医師会、1982年、621-626頁、CRID 1390001204709182464doi:10.12935/jvma1951.35.621ISSN 0446-6454 
  3. ^ a b c 荒島康友、「パスツレラ症」の日本の現状認識に違いがあった!? 人と動物の共通感染症研究会
  4. ^ 【科学研究費助成事業】再興感染症・ZdonosisとしてのFasteurella症の発生状況調査とPCR法による疫学調査 研究代表者 荒島康友 研究課題/領域番号:12470531 2000-2002年、CRID 1040000781743299968
  5. ^ Arashima, Yasutomo and Kato, Kimitoshi and Kakuta, Reiko and Fukui, Toru and Kumasaka, Kazunari and Tsuchiya, Toshio (1999). “First case of Pasteurella gallinarum isolation from blood of a patient with symptoms of acute gastroenteritis in Japan”. Clinical infectious diseases 29 (3): 698-699. doi:10.1086/598668. 
  6. ^ 荒島康友, 熊坂一成, 土屋俊夫, 矢内充, 河野均也「精液臭を伴った浸出液を認めたパスツレラ症の2例」『感染症学雑誌』第73巻第6号、日本感染症学会、1999年、623-625頁、CRID 1390001205051367552doi:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.73.623ISSN 0387-5911PMID 10423957 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]