ヒナノヒガサ

ヒナノヒガサ
Rickenella fibula
分類
: 菌界 Fungi
: 担子菌門 Basidiomycota
亜門 : ハラタケ亜門 Agaricomycotina
: ハラタケ綱 Agaricomycetes
: タバコウロコタケ目 Hymenochaetales
: ヒナノヒガサ科 Repetobasidiaceae
: ヒナノヒガサ属 Rickenella
: ヒナノヒガサ R. fibula
学名
Rickenella fibula (Bulliard) Raithelhuber (1973)
シノニム
  • Agaricus fibula Bull. (1784)
  • Gerronema fibula
  • Hemimycena fibula
  • Hygrocybe fibula
  • Marasmiellus fibula
  • Micromphale fibula
  • Mycena fibula
  • Omphalia fibula
  • Omphalina fibula (Fr.) Quél. (1886)
  • Omphalopsis fibula
  • Rickenella aulacomniophila
  • Rickenella fibula var. aulacomniophila
和名
ヒナノヒガサ
ヒナノヒガサ
View the Mycomorphbox template that generates the following list
float
菌類学的特性
子実層にひだあり

傘は湾生形

もしくは漏斗状
子実層は垂生形
柄には何も無い
胞子紋は
生態は腐生植物
食用:食用可能だがまずい
テンプレートを表示

ヒナノヒガサ(雛日傘[1]・鄙ノ日傘[2]学名: Rickenella fibula)は、ヒナノヒガサ科ヒナノヒガサ属英語版に属す菌類の一種。毒キノコは非常に小さく、通常は直径1センチメートル未満である[3]。コケ類に寄生し、北半球に広く分布[4]

分布・生態

[編集]

日本各地およびヨーロッパ北アメリカオーストラリアなどに分布する[5]

コケ寄生菌[2]。春から秋にかけて、人里近くの雑木林や針葉樹林の地上で見られ[6]、各種林内や庭園の、特にコケの群落の中に群生する[1]。日本では夏から秋に発生し、7月の京都での発生事例がある。他に北海道[7]、東北地方[8]、石川県[9]

形態

[編集]

子実体はからなる。傘は0.3 - 1センチメートル (cm) で、はじめ鐘形または半球形で、のちに中高の扁平に開くが、中央がやや窪んでいる[5][4]。傘表面はなめらかで、色は橙黄色から橙色、周縁部は淡色となり放射状の条線がある[1][6][5]ヒダは白色で、疎らに配列し、柄に長く垂生する[1][6]

柄は中空、長さ1.5 - 5 cm、太さ1 - 2ミリメートル (mm) で非常に細く[4][5]、表面は橙色から橙黄色[1]は非常に薄い[1]

拡大して見ると、傘と柄の表面に、白くて微細な毛であるシスチジアが密に生えている[1][2]。通常、他のキノコではシスチジア(微細な毛)の観察には顕微鏡が必要だが、このキノコでは10倍程度のルーペで観察できるほどの大きさの毛である[1][10]。担子胞子は大きさ4 - 6.5 × 2 - 3マイクロメートル (μm) の狭楕円形から円筒形で、平滑、非アミロイド性[5]胞子紋は白色[4]

毒性

[編集]

毒成分として、中枢神経系に作用するシロシビン類とゲネロミン類(細胞毒)を含むとされる[1]。幻覚成分であるシロシビンを含むキノコ類は、日本の麻薬及び向精神薬取締法における麻薬原料植物(菌類だが)として故意の所持・使用は規制されている[11]

しかし、小型でシロシビンの含有量が少ない[12]。研究者が抱く疑問には、成分が微量しか含まれないキノコはどういった扱いになるのかといったものがある[11]

中毒症状としては、頭痛悪寒めまい幻覚など神経系の症状が現れるといわれる[13]

似ているキノコ

[編集]

同様にコケ群落から生じる似たキノコに、ケコガサタケ属ヒメコガサGalerina subcerina)がある[2]。ヒメコガサは、傘に条線が目立ち、中心部が尖って窪むことがなく、傘の下面のヒダもまばらで柄に下垂しない[2]。また、傘や柄の表面の微毛(シスチジア)は目立たない[2]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g h i 長沢栄史 監修 2009, p. 101.
  2. ^ a b c d e f 秋山弘之 2024, p. 25.
  3. ^ Jean-Louis Lamaison, Grand guide encyclopédique des champignons.
  4. ^ a b c d トマス・レソェ 著、前川二太郎 訳『世界きのこ図鑑』新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年、36頁。ISBN 4-7875-8540-1  DK handbook of mushrooms
  5. ^ a b c d e 前川二太郎 編著 2021, p. 350.
  6. ^ a b c 牛島秀爾 2021, p. 99.
  7. ^ 高橋郁雄、本多政史『新版 北海道きのこ図鑑』(増補版)亜璃西社、2007年。ISBN 978-4-900541-72-6 
  8. ^ 工藤伸一、長澤栄史、手塚豊『東北きのこ図鑑』家の光協会、2009年。ISBN 978-4-259-56261-8 
  9. ^ 池田良幸『追補北陸のきのこ図鑑 付・石川県菌蕈集録』橋本確文堂、2014年。ISBN 978-4-89379-164-1 
  10. ^ 新井文彦・保坂健太郎 2022, pp. 10–11.
  11. ^ a b 長沢栄史 監修 2009, pp. 101, 269.
  12. ^ 新井文彦. “きのこの話 ヒナノヒガサ”. ほぼ日刊イトイ新聞. 2017年12月5日閲覧。
  13. ^ 白水貴 監修 2014, p. 19.

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]