上段: 不安定領域 ([A]=1, [B]=3) におけるブラッセレータの時間発展。解軌道 はリミットサイクル へ漸近している。 下段: 安定領域 ([A]=1, [B]=1.7) における時間発展。解軌道は不動点 ([X]=1, [Y]=1.7) へ収束している。
ブラッセレータを組み込んだ反応拡散系 の2次元シミュレーション
ブラッセレータ (英 : Brusselator )は、自触媒反応 を含む理論的な化学反応モデルである。
ブリュッセル自由大学 において、イリヤ・プリゴジン とその共同研究者らによって提案された
[ 1] 。「ブラッセレータ」という名称はブリュッセル とオシレータ のかばん語 である。
ブラッセレータを構成する化学反応は以下のとおりである[ 2] 。
A
→
X
2
X
+
Y
→
3
X
B
+
X
→
Y
+
D
X
→
E
{\displaystyle {\begin{aligned}\mathrm {A} &\rightarrow \mathrm {X} \\2\mathrm {X} +\mathrm {Y} &\rightarrow 3\mathrm {X} \\\mathrm {B} +\mathrm {X} &\rightarrow \mathrm {Y} +\mathrm {D} \\\mathrm {X} &\rightarrow \mathrm {E} \end{aligned}}}
物質A, Bの濃度を一定とするとき、物質X, Yの濃度の時間変化は次のように記述される。
{
d
d
t
[
X
]
=
[
A
]
+
[
X
]
2
[
Y
]
−
[
B
]
[
X
]
−
[
X
]
d
d
t
[
Y
]
=
−
[
X
]
2
[
Y
]
+
[
B
]
[
X
]
{\displaystyle \left\{{\begin{aligned}{\frac {d}{dt}}[\mathrm {X} ]&=[\mathrm {A} ]+[\mathrm {X} ]^{2}[\mathrm {Y} ]-[\mathrm {B} ][\mathrm {X} ]-[\mathrm {X} ]\\{\frac {d}{dt}}[\mathrm {Y} ]&=-[\mathrm {X} ]^{2}[\mathrm {Y} ]+[\mathrm {B} ][\mathrm {X} ]\end{aligned}}\right.}
なお、簡単のために速度定数 はすべて1とした。方程式は不動点
[
X
]
=
[
A
]
[
Y
]
=
[
B
]
[
A
]
{\displaystyle {\begin{aligned}\;[\mathrm {X} ]&=[\mathrm {A} ]\\\;[\mathrm {Y} ]&={\frac {[\mathrm {B} ]}{[\mathrm {A} ]}}\end{aligned}}}
をもつ。この不動点は
[
B
]
>
1
+
[
A
]
2
{\displaystyle [\mathrm {B} ]>1+[\mathrm {A} ]^{2}}
を満たすとき不安定であり、系は振動を始める。ロトカ・ヴォルテラの方程式 と違ってブラッセレータの振動は初期状態における物質X, Yの濃度によらない。その代わり、
十分な時間が経過すると系はリミットサイクル へ漸近する[ 3] 。
ブラッセレータのよく知られた例は、時計反応 の一種のベロウソフ・ジャボチンスキー反応 (BZ反応)である。これは臭素酸カリウム (KBrO3 )、
マロン酸 (CH2 (COOH)2 )、硫酸マンガン (MnSO4 )の混合物を硫酸 (H2 SO4 )の加熱溶液で調製することで得られる
[ 4] 。