ヘースティングス・ラシュドール

ヘースティングス・ラシュドール(1923年)

ヘースティングス・ラシュドール(Hastings Rashdall、1858年6月24日 - 1924年2月9日)は、イギリス道徳哲学者神学者歴史家であり、敬虔な聖職者でもあった。理想的功利主義論についての検討や、中世大学の歴史研究で有名。彼の著した『大学の起源:ヨーロッパ中世大学史』は、中世ヨーロッパの大学研究を体系化した最初期の本で、欧州の大学全体を包括した記述があるため、現在も広く参照される。

生涯

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1858年、英国教会の聖職者の長男として誕生。1871年にハーロー校(リンク)に入学、1877年オックスフォード大学ニュー・カレッジに入学。そこで文学士号を獲得。その後St David's University College、University College, Durhamに在職し、1888年~1895年オックスフォード大学ハートフォード校のフェローを務める。そして1895年ニュー・カレッジのフェローとなり、残り22年間の研究生活をそこで過ごした。また、1905年にはConstance Makinsと婚姻している。晩年の彼は、大学改革にも貢献し、女子学生のオックスフォード大への入学支援、チューターの待遇改善などの取り組みも行った。

著書『大学の起源』

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前述の通り、彼は中世大学史研究にも力を注いだ。同時代の研究者としては、デニフレカウフマンステファン・ディルセーが挙げられる。本項では、おそらく日本で最も参照されている彼の著作、『大学の起源』について述べる。

『大学の起源』について

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彼は1883年、オックスフォードでイングリッシュエッセイの総長賞を受賞した。この時の受賞エッセイを書物として刊行するため、他の研究や教育活動の傍ら、およそ12年もの年月をかけて改訂作業に取り組んだ。パリ大学の項目は、1890年頃複数巻にわたり発刊されたデニフレとシャトランによる「パリ大学記録集」をよく参考にしている。現在一般的に読まれているのは、この初版ではなく、F・M・パウイックやエムデンらによって改訂され、1936年に発刊された増補改訂版である。日本で出版されている『大学の起源』もまた、この改訂版の和訳だ。

章構成

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『大学の起源』は、改訂版・日本語訳版共に3巻に分かれ、全14章から構成されており、第1巻には1〜5章、第2巻には6〜11章、第3巻には12〜14章がそれぞれ配置されている。

1〜2章
ここでは、大学とは何かという解説、中世教育の変遷が記述されている。
3〜5章
各章でそれぞれ、サレルノボローニャパリといった最古の大学の、歴史や特徴等を詳述している。ラシュドールはこれらを三大母胎大学と呼んでいる。
6〜12章
3〜5章で述べられた最古の大学の影響を受け設立された、各国・各地方の諸大学について、大まかな歴史・学寮・教科書・組織体系を記している。
13〜14章
当時の学生数、学生生活を詳述。最後に、中世大学が与える影響、エピローグが配置されている。

日本語訳版

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日本における大学史研究の歴史は、日本の大学の歴史が浅いせいもあってか、ヨーロッパに比べてやはり浅い。あとがきで訳者が述べているように、日本語訳版の第1巻が出版された当時、日本人が記した大学史関連の文献は数えるほどだった。そんな中で出版された日本語訳版『大学の起源』がその後の日本での大学史研究に与えた影響は、大きなものであった。

著作

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参考文献

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  • edited by Lawrence Goldman “Oxford Dictionary of National Biography”, Oxford University Press, 2009-,
  • 音無通宏編著『功利主義と政策思想の展開』中央大学出版部、2011

外部リンク

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