ベツリン | |
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Lup-20(29)-ene-3β,28-diol | |
別称 betulinol, betuline, betulol, betulinic alcohol, trochol | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 473-98-3 |
PubChem | 72326 |
ChemSpider | 65272 |
EC番号 | 207-475-5 |
KEGG | C08618 |
ChEMBL | CHEMBL23236 |
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特性 | |
化学式 | C30H50O2 |
モル質量 | 442.72 g mol−1 |
外観 | 針状結晶の固体[1] |
融点 |
256 - 257 °C, 272 K, -175 °F |
水への溶解度 | 不溶[1] |
溶解度 | エタノール及びベンゼンにわずかに可溶; ジエチルエーテル、酢酸エチル及びベンジンに可溶[1] |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ベツリン(Betulin)は、天然に豊富に存在するトリテルペンである。カバノキ属の樹皮から単離される。シラカンバの樹皮の乾燥重量の30%に達する[2]。チャーガー[3]やレッドオルガーにも含まれる[4]。
樹皮に白い色を与え、冬季に太陽で加熱されすぎるのを防いでいる。その結果、カバノキは、落葉樹で最も北まで存在しうる。アルコール基がカルボキシル基で置換されるとベツリン酸となり、ベツリン自体よりも生理活性が高くなる。
ベツリンは、1788年にドイツ系ロシア人の化学者Johann Tobias Lowitzにより発見された[5][6]。
化学的には、ルパン構造のトリテルペンである。五員環構造を持ち、C3位とC28位にはヒドロキシル基を持つ。
臨床研究により、様々な腫瘍に対する効果が見られる。ベツリンは、特定の種類の腫瘍細胞にアポトーシスを起こさせ、またいくつかの種類の腫瘍細胞の成長を遅らせる[7]。
また、ベツリンは転写調節因子SREBPを阻害することも発見された。SREBPの阻害は、コレステロールと脂肪酸の生合成を減少させる。in vivoで、ベツリンは食物によって引き起こされる肥満を改善し、血清や組織中の脂質含量を減少させ、インスリン感受性を向上させる。さらに、アテローム斑の大きさを減少させて安定性を改善する[8]。
アメリカ州の先住民族は、レッドオルガーの樹皮をウルシかぶれ、虫刺症、皮膚の炎症等の治療に用いてきた。ブラックフット族は、レッドオルガーの樹皮の浸出液をリンパ系疾患や結核の治療に用いた[4]。