ベルニサルティア

ベルニサルティア
	B. fagesii のホロタイプ骨格
地質時代
	前期白亜紀
分類
学名
	Bernissartia Dollo, 1883
種
	Bernissartia fagesii Dollo, 1883;

ベルニサルティア（学名： Bernissartia）は、前期白亜紀に現在のヨーロッパに生息していた、ワニ形上目新鰐類の属。後期ジュラ紀のゴニオフォリスよりも派生的であり、系統的には正鰐類に近い。約1億2900万 - 1億2500万年前（バレミアン期^[1]）にあたるベルギーの地層から化石が産出している^[2]^[3]。

特徴

全長は60センチメートルで、ワニ形上目としては小型の部類である^[2]^[3]。口の奥の歯は球状を呈しており、甲殻を持つ動物を捕食していた可能性がある^[3]。

ワニ形上目の内鼻孔はゴニオフォリス科の時点で後方へ移動しつつあったが、ベルニサルティアではさらに後方へ移動し、口蓋骨と翼状骨の境界に位置している。この特徴は獲物を口腔内に咥えたまま呼吸が可能となる点で半水棲生活に適しており、ベルニサルティアよりも派生的な正鰐類では翼状骨の内部にまで侵入している^[3]。また、ベルニサルティアは背中を覆う背側皮骨板（鱗板骨）の列数の進化において重要である。1990年の研究では、列数は4列とされていたが^[4]^[5]、2000年代からはゴニオフォリス科と同じく2列とされるようになった^[6]^[7]。ただし、主要の2列の外側に小型の皮骨が存在する。ゴニオフォリス科より進化した形態として、各鱗板骨に隆起を持っていることが特徴。しかし現生ワニ類は鱗板骨一つにつき1つずつしか隆起を持っていないが、ベルニサルティアには2つずつ存在する。鱗板骨はより進化したスシスクスにおいて隆起の間を分割するように4列まで列数が増えた（現生のワニ類では6列）。鱗板骨の列数、というよりも1枚1枚の大きさは、椎骨の関節の安定性との因果関係が示唆されている。スシスクスの研究の例では、鱗板骨の分割により、横方向にうねる動きがより柔軟にできるようになったとされる^[6]。

ゴニオフォリスと同様の扁平な体や、頭部の上に位置する各感覚器官（目・鼻・耳）、水平方向に張り出した四肢は、彼らやベルニサルティアが現生のワニと同様の半水棲生活に適応していたことを示唆する^[2]^[3]。すなわち、現在のワニが占めているような水辺の待ち伏せ型捕食動物の生態的地位は、当時のワニ形上目が既に進出していたのである^[2]。

出典

^ “INTERNATIONAL CHRONOSTRATIGRAPHIC CHART（国際年代層序表）”. 日本地質学会. 2020年2月25日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d 土屋健『ifの地球生命史』技術評論社、2021年2月13日、90-91頁。ISBN 978-4-297-11920-1。
^ ^a ^b ^c ^d ^e 小林快次『ワニと恐竜の共存巨大ワニと恐竜の世界』北海道大学出版会、2013年7月25日、28-32頁。ISBN 978-4-8329-1398-1。
^ Norell, M.; Clark, J. M. (1990). “A reanalysis of Bernissartia fagesii, with comments on its Phylogenetic position and its bearing on the origin and diagnosis of the Eusuchia” (英語). undefined.
^ Buscalioni, Á; Sanz, J. (1990). “The small crocodile bernissartia fagesii from the lower cretaceous of galve teruel spain” (英語). undefined.
^ ^a ^b Salisbury, Steven W; Molnar, Ralph E; Frey, Eberhard; Willis, Paul M.A (2006-10-07). “The origin of modern crocodyliforms: new evidence from the Cretaceous of Australia”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 273 (1600): 2439–2448. doi:10.1098/rspb.2006.3613. ISSN 0962-8452. PMC 1634899. PMID 16959633.
^ Martin, Jeremy E.; Smith, Thierry; Salaviale, Céline; Adrien, Jerôme; Delfino, Massimo (2020-07-02). “Virtual reconstruction of the skull of Bernissartia fagesii and current understanding of the neosuchian–eusuchian transition”. Journal of Systematic Palaeontology 18 (13): 1079–1101. doi:10.1080/14772019.2020.1731722. ISSN 1477-2019.

[1] “INTERNATIONAL CHRONOSTRATIGRAPHIC CHART（国際年代層序表）”. 日本地質学会. 2020年2月25日閲覧。

[if-2] 土屋健『ifの地球生命史』技術評論社、2021年2月13日、90-91頁。ISBN 978-4-297-11920-1。

[共存-3] 小林快次『ワニと恐竜の共存巨大ワニと恐竜の世界』北海道大学出版会、2013年7月25日、28-32頁。ISBN 978-4-8329-1398-1。

[4] Norell, M.; Clark, J. M. (1990). “A reanalysis of Bernissartia fagesii, with comments on its Phylogenetic position and its bearing on the origin and diagnosis of the Eusuchia” (英語). undefined.

[5] Buscalioni, Á; Sanz, J. (1990). “The small crocodile bernissartia fagesii from the lower cretaceous of galve teruel spain” (英語). undefined.

[:0-6] Salisbury, Steven W; Molnar, Ralph E; Frey, Eberhard; Willis, Paul M.A (2006-10-07). “The origin of modern crocodyliforms: new evidence from the Cretaceous of Australia”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 273 (1600): 2439–2448. doi:10.1098/rspb.2006.3613. ISSN 0962-8452. PMC 1634899. PMID 16959633.

[7] Martin, Jeremy E.; Smith, Thierry; Salaviale, Céline; Adrien, Jerôme; Delfino, Massimo (2020-07-02). “Virtual reconstruction of the skull of Bernissartia fagesii and current understanding of the neosuchian–eusuchian transition”. Journal of Systematic Palaeontology 18 (13): 1079–1101. doi:10.1080/14772019.2020.1731722. ISSN 1477-2019.

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