『ペルスヴァルまたは聖杯の物語』(ペルスヴァルまたはせいはいのものがたり、Perceval, le Conte du Graal)は、1180年代にフランスの詩人クレティアン・ド・トロワによって著された「アーサー王伝説」を描いた騎士道物語である。クレチアンの死によって未完に終わっている。主に円卓の騎士であるペルスヴァルによる聖杯の探索を描いたもので、聖杯の城とケルトについての要素を含んでいる。ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ作の中高ドイツ語による傑作『パルチヴァール』の原典である。
クレティアンは物語のプロローグで、パトロンに授けられた「書物」に記されているコント(「民話」)を韻文で語ってみると述べている。「ヨーロッパの神話伝承やフォークロアに詳しい中世フランス文学の専門家」フィリップ・ヴァルテールは、主人公ペルスヴァルへの3人の忠告を、物語の構造を示す唯一の真の鍵と捉え、作者が典拠としたコントは国際民話話型(ATU)910 B「主人の教えを守る」のタイプに属するとみなして同タイプのロシア民話「よい言葉」や中世ラテン語による『アーサーとゴルラゴン』と比較し、『ペルスヴァルまたは聖杯の物語』に隠された民話の謎の解明を試みている[2]。