ホウロクイチゴ

ホウロクイチゴ
実をつけたホウロクイチゴ、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町にて、2021年6月22日撮影
実をつけたホウロクイチゴ、2021年6月
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町にて
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : バラ亜科 Rosoideae
: キイチゴ属 Rubus
: ホウロクイチゴ
R. sieboldii
学名
Rubus sieboldii Blume[1]
和名
ホウロクイチゴ
品種
  • トゲナシホウロクイチゴ Rubus sieboldii Blume f. inermis K.Kayama[1]

ホウロクイチゴ(焙烙苺、学名Rubus sieboldii Blume[1])は、バラ科キイチゴ属フユイチゴ亜属[2]分類されるややつる性[3]常緑低木の1[4][5][6]。別名が「タグリイチゴ」[1]和名果実を果床からはずして逆さにすると内部が空洞であり、その形態が焙烙に似ていることに由来する[6][7]

特徴

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樹高は1.5 m前後[5]は太く、状にのび、状のがまばらにあり[4]、褐色の綿毛や開出毛が密生し[5]、地についた部分からや新苗を出す[6]。若い枝には綿毛が密生する[4]

互生し、長さ8-17 cm形または卵形で[3]、質は厚くてざらつき、縁には重鋸歯があり[4]、3-5浅裂、または不分裂、最大幅は基部寄り[5]。長さ3-6 cmの葉柄と葉の両面に綿毛を密生する[6]。葉は常緑のキイチゴ類の中で最大で、最も肉厚になる[5]。葉の表面にはシワが目立つ[5]。托葉は長さ1.5 cmの楕円形で、羽状に細かく裂け、落ちやすい[3]葉腋の裏面は網目状に隆起する。

葉腋に直径2.5-3 cnの白いを1-数個つけ[3][4]苞葉がある[6]花弁は5個[4]、長さ2 cmほどの広楕円形で、ふちは波立つ[3]花柄には黄褐色の綿毛が密生する[3]。花期は4-6月[3][4]。果実は核果の結合果で[6]、直径約1.8 cmの形で5-8月に赤く熟し[7]、内部は空洞[4]。冬芽は淡褐色の綿毛に覆われる[3]

分布と生育環境

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海岸付近の山地の林縁の斜面に群生するホウロクイチゴ

中国南部と日本の暖地[4]に分布する[3][6]

日本では本州(伊豆半島紀伊半島以西)、四国九州沖縄に分布する[3][4][6]。南日本ほど多く、しばしば群生する[5]。南方系の植物で、広島県厳島は北限に近く[8]、北限は島根県[9]

海岸近くの山地内や林縁にやや稀に[5]生育する[3][4][6]

利用・用途など

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果実は酸味が少なく美味で[2]、可食[8]厳島神社神事である御烏喰式の御烏のついばむ粢団子を載せる葉に利用されている[8]鹿児島県大隅地方では、葉に米飯を盛り、神前に供えられている[2]屋久島スカシバガ科のヤクシマヒメカシスバが本種を食草としていることが確認されている[10]ドクガ科のサカグチキドクガが食草としている[11]サビキン目ハマスポラ属菌(Hamaspora Rubi-Sieboldii (KAWAGOE) DIET.)が本種に寄生することが確認されている[12]

種の保全状況評価

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日本では環境省による国レベルでのレッドリストの指定を受けていないが[13]、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている。

脚注

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  1. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ホウロクイチゴ”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2021年12月18日閲覧。
  2. ^ a b c 阪村 (1982)、336頁
  3. ^ a b c d e f g h i j k 茂木 (2002)、610頁
  4. ^ a b c d e f g h i j k 林 (2011)、266頁
  5. ^ a b c d e f g h 林 (2014)、255頁
  6. ^ a b c d e f g h i 牧野 (1982)、213頁
  7. ^ a b 茂木 (2002)、611頁
  8. ^ a b c ホウロクイチゴ”. 広島大学デジタルミュージアム. 2021年12月18日閲覧。
  9. ^ a b 改訂しまね レッドデータブック 2013植物編” (PDF). 島根県. pp. 48. 2021年12月18日閲覧。
  10. ^ 有田 (1993)、80頁
  11. ^ 岸田 (2011)、146頁
  12. ^ 平塚 (1935)、201頁
  13. ^ 環境省レッドリスト2020の公表について”. 環境省. 2021年10月31日閲覧。
  14. ^ 静岡県版 植物レッドリスト 2020” (PDF). 静岡県. pp. 364. 2021年12月18日閲覧。
  15. ^ レッドデータブックあいち2020” (PDF). 愛知県. pp. 668. 2021年12月18日閲覧。

参考文献

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  • 有田豊「屋久島からのヒメスカシバ属(Trichocerota)の一新種」『蝶と蛾』第44巻第2号、日本鱗翅学会、1993年、80頁、doi:10.18984/lepid.44.2_77NAID 110007707956 
  • 岸田泰則、那須義次『日本産蛾類標準図鑑II』学研プラス、2011年4月11日。ISBN 978-4054038462 
  • 林将之『樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』(山溪ハンディ図鑑14)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2014年4月15日。ISBN 978-4635070324 
  • 林弥栄『日本の樹木』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2011年11月30日。ISBN 978-4635090438 
  • 阪村倭貴子「ホウロクイチゴおよびナワシロイチゴの果実の成熟過程における成分の変化」『家政学雑誌』第33巻第7号、日本家政学会、1982年、366-373頁、doi:10.11428/jhej1951.33.366NAID 130003717106 
  • 平塚直秀「日本産ハマスポラ属菌」『植物分類,地理』第4巻第4号、日本植物分類学会、1935年、195-201頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00002594249NAID 110003761761 
  • 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZENCID BN00811290全国書誌番号:85032603https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001728467-00 
  • 茂木透、勝山輝男、太田和夫、崎尾均、高橋秀男、石井英美『樹に咲く花-離弁花〈1〉』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑3〉、2002年5月1日。ISBN 978-4635070034 

関連項目

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外部リンク

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