マスクメロン (muskmelon) は、麝香 (musk) のような強い芳香を持つメロンの総称である。別名はジャコウウリ。
日本では、主にアールスフェボリット(あるいはその系統の品種、後述)のことを指し、品種名ではない。
上記のように、名称の「マスク」は麝香を意味する"musk"(発音は[mʌˈsk])で[1]、「仮面」などを指す「マスク」 (mask) ではない。
果実は、ほぼ球形。果皮表面には、コルク質の網目を生じる。果肉は黄緑色で、果汁が多く、非常に甘い。つる割れ病に抵抗性がなく、うどんこ病などの他の病害にも抵抗性がないので、栽培は非常に難しい。根が弱く、つる割れ病抵抗性のメロン(大井、バーネットヒルフェボリットなど台木専用種)に接ぎ木をして栽培されている[2]。
栽培は温度・湿度を管理した温室内で行わなければならず、まめに手を加えなければ良質なものはできない。また1本のつるからは1個だけしか生産しない。このため価格も高く、高級品では1玉3万円を超えるものもある。主産地は静岡県で、高知県がこれに次ぐ。
果皮表面に網目状模様ができる性質を利用して、祝いや感謝のメッセージを浮かび上がらせる贈答用メロンの生産を請け負う農家もある[3]。
なお、複数の実が結実した場合、1個を残し他は小さいうちに摘み取られる。摘み取られた実は「小メロン」の名で漬物(メロン漬け)や刺身のつまに利用されることがある。
日本ではマスクメロンがメロンの品種としては最初に普及し、メロンの代名詞的ブランドにまで成長した。
この品種が開発されたのは19世紀末のイギリスである。「アールスフェボリット(Earl’s favourite)=伯爵のお気に入り」という意味の名は、ラドナー伯爵邸の農園で作られたことに由来する。日本では1925年(大正14年)に導入され、静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所の前身である磐田温室農協丸静支所などで栽培方法の確立が行われ、日本全国へと広まっていった。現在、本国イギリスではこの種は栽培されなくなっているが、日本では昭和から続く伝統的な高級メロンとして珍重され続けている。千疋屋の主力商品でもある。
かつて、マスクメロンはデザイナーフーズ計画のピラミッドで3群に属しており、3群の中でも、バジル、タラゴン、カラスムギ、アサツキと共に3群の上位に属する、癌予防効果のある食材であると位置づけられていた[4]。