この記事の正確性に疑問が呈されています。 |
マテバ モデロ6 ウニカ ディナミカ スポルティーヴァ 5インチ銃身モデル | |
MATEBA Modello 6 Unica | |
---|---|
種類 | 半自動式回転式拳銃 |
製造国 | イタリア |
設計・製造 | マテバ社/エミリオ・ギゾーニ |
仕様 | |
種別 | 回転式拳銃(リボルバー) |
口径 | 9.1mm(0.357in) |
銃身長 |
|
ライフリング | 6条右回り |
使用弾薬 |
|
装弾数 | 6発 |
作動方式 | ダブルアクション |
全長 | 275 mm ※6インチ銃身モデル |
重量 | 1,350g ※6インチ銃身モデル |
銃口初速 |
548.64m/s(1,800ft/s) (.357マグナム弾使用時、6インチ銃身モデル) |
歴史 | |
設計年 | 1996年 |
製造期間 | 1996年-2004年 |
マテバ モデロ6 ウニカ(MATEBA Modello 6 Unica)、通称“マテバ オートリボルバー”(MaTeBa AutoRevolver)は、イタリアのマテバ社(MA.TE.BA.:Macchine Termo-Balistiche)が1996年に開発した半自動作動方式の回転式拳銃(リボルバー)である。
イタリア語で「6」は“Sei”(セイ)と発音するため、モデル名の“6 Unica”の発音は「Sei Unica」(セイ・ウニカ)となり、イタリア語で「あなただけのもの」という意味にもなる。その独特の機構から、「オートマチックリボルバー」(Automatic Revolver)とも呼ばれる。
なお、本銃の他にも独自の機構で「ダブルアクション方式とは異なる連射機能」を備えているリボルバー(オートマチック・リボルバー)は存在する。
マテバ社において、特異な機構を持つリボルバーの開発を手掛けたエミリオ・ギゾーニ(Emilio Ghisoni)(伊語版)が、1990年に発売した前モデルであるマテバ 2006Mのコンセプトを引き継ぎ開発した銃で、銃身の跳ね上がりを抑えるために弾倉の一番下の弾を発射するという構造[注 1]と、用途によって自由に銃身を換装できる、という特徴はそのままに、リボルバーでありながらオートマチック機構を備えている。
本銃のような特別な構造を持たずとも、ダブルアクション機構のあるリボルバーであれば引き金を引くだけでシリンダー(回転式弾倉)の回転と撃鉄の起倒は行われるため、連続射撃自体は可能だが、この場合には人力で引き金を引くことで機構を作動させる都合上、一発ごとに撃鉄を手動で起こすシングルアクション機構に比べてより大きな力が必要なために引き金が重くなり、銃全体の動揺が大きくなる(ぶれる、と表現される)ために、射撃精度が落ちる上、連続して射撃すると指に掛かる負担が大きく、現実的にはリボルバー方式の拳銃を連射することは射手の疲労が大きく、精密射撃には適さない、という難点がある。
本銃は上述のダブルアクション機構の難点を独自の機構により克服したもので、これにより、リボルバーの高い機構的信頼性と、ダブルアクションと同じく引き金を引くだけで次弾が発射できる機構でありながら、シングルアクション並みの引き金の軽さを実現し、速射性と高い命中精度の両立を目指していた。
この"AutoRevolver"は2006Mと並んでその独自の機構とデザインから銃器コレクターに珍重されており、多数の創作作品にも登場している他、2006M同様、オリジナルデザインの銃器のデザインモチーフとしても引用されている。
なお、本銃の作動機構はアメリカ合衆国の特許を取得している[1]。
マテバ社とギゾーニは前モデルであるマテバ 2006Mの一応の成功を受け、そのコンセプトを発展させた新たなリボルバーの設計と開発に着手した。1990年代に入りドイツの投資家の出資を受けて開発が行われ、1996年から1997年にかけて「AutoRevolver」の名称で試作品が完成、翌1998年には「Modello 6 Unica」の製品名で量産と販売が開始された。
「オートリボルバー」は開発時には.357マグナム弾および.38スペシャル弾を使用するものとして設計されたが、正式な製品としての「6 ウニカ」ではアメリカ市場での大型リボルバー拳銃に対する需要と話題性を考慮して大口径マグナム弾モデルも開発されて市場に投入された。マテバ社の製品としては前作の2006Mがその特異な構造から注目されていたことから本銃も発表時より話題になり、大口径マグナム弾モデルの発表時には.454カスール弾を使用できる大威力リボルバーということもあって高い注目を集めた。
本銃はリボルバーとしては複雑な構造の製品でありながら、開発・量産ともに特に問題は発生せず、販売された製品にも作動不良の続発等といった機構上の問題はほとんど発生しなかったが、構造が複雑で、“単純な構造で信頼性が高い”というリボルバーの利点を減損している上、同威力の銃弾を用いるものに比べて大型となり、実用性が低かった。更に、製造コストが高いことから高価な製品となり、発表時に期待されたほどのセールスを獲得できず、主にアメリカ市場での販路の拡大に努めたが、1998年の量産開始から2004年まで生産が継続されたものの[注 2]、比較的少数の生産に終わった。
マテバ社は事業の不振から2005年に清算され、6 Unicaも絶版となったが、2014年にはイタリアの投資家が“MATEBA”の商標権と各製品の製造権を所得したとして「マテバイタリア(Mateba Italia srl)」として新たに起業し、2017年には銃器製造会社として活動を開始した[2]。マテバイタリア社のラインナップには6 Unicaも記載されていたが[3]、同社が出展した銃器見本市でのブース展示や公式サイトに例示されていたものはいずれも旧マテバ社により製造されていたもので[4][5]、マテバイタリアとして製造したものが出展・提示された例はなく、2022年5月にはマテバイタリア社はイタリアの公安当局に「銃器に関する違法な販売と輸出、武器の製造に関わる企業が遵守しなければならない各種の法令や公的書類の作成・提出に対する違反を行った」として摘発され、同社には銃器の製造・販売に関するライセンスの取り消しと企業活動の停止、および工場の閉鎖が命じられ[6]、同社は6 Unicaを再び生産することも発売することもないまま活動を停止した。
6ウニカのオートマチック機構は、フレームがバレル(銃身)およびシリンダーのある上半分(アッパーフレーム)と、ハンマー(撃鉄)およびトリガー(引き金)メカニズムのある下半分(ロアフレーム)に分かれており、初弾をシングルアクションまたはダブルアクションで発射すると、発射反動によりアッパーフレームが0.5インチ(12.7mm)後退し、撃鉄を起こした状態にした後、シリンダーを回転させながら前進して射撃位置に戻り、次発発射可能な状態になる、というものである。このため、本銃は回転式拳銃でありながら、フレームの上半分が前後に可働するという、オートマチック式拳銃と同じ構造になっている[注 3]。この方式は20世紀初頭にイギリスのウェブリー社が発売したウェブリー=フォスベリー・オートマチック・リボルバーと同様だが、シリンダーを回転させるための機構が異なる。
シリンダーは単純な円筒形ではなく、後端だけが円形で、全体としては六角形断面の多角柱形状となっている。側面に溝のない“ノンフルート”型で、ノッチの凹みもない。前作であるマテバ 2006Mとは逆に射撃時には右回りに回転する時計回り方式となっており、振り出し方向も一般的なリボルバーと同じ下方振り出し方式となっているが、シリンダーラッチ開放レバーはフレームの左右両面にある[注 4]リボルバーとしては珍しい構成である。シリンダーを振り出すための支持部(ヨーク(クレーン)と呼ばれる)は、フレームとの接続部が下方にある銃身部を避けるために側面に張り出しているため、大きく湾曲した「く」の字形になっている。なお、.454カスール弾モデルは発砲時の衝撃でシリンダーが勝手に開いてしまうことを防ぐためにヨーク(クレーン)に固定用ラッチが追加されており、シリンダーを開放するにはフレ-ムにあるラッチ開放レバーに加えてヨーク部のラッチを操作する必要がある。また、本銃にはシリンダーの上部でフレームの前部と後部を繋いでいる“ブリッジ”と呼ばれる部分が存在していない。
前作であるマテバ 2006Mのコンセプトを引き継ぎ、バレルは3インチの短銃身型と4・5・6・7・8インチおよび213 mm(8.375 インチ)の長銃身型、計7種類が用意され、専用の工具を用いればユーザーが個人で簡単に交換することができる。銃身を覆うバレルシュラウドの上部には“ベンチレーテッド・リブ”と呼ばれる銃身冷却と軽量化を兼ねた長方形のスリットがあり、銃身長に応じた数[注 5]が開口されている。また、シリンダーとバレルを変更する事で、フレームはそのままに多種類の弾薬を用いることができた。ただし、本銃の特徴であるオートマチック機構を正常に作動させるためには、弾薬に合わせて銃身基部下側から上部フレーム下面に配置されているリコイルスプリングをそれぞれ専用のものに入れ替える必要があった。5インチ以上の長さで口径が.44マグナム弾および.454カスール弾の銃身には銃口部分にマズルコンペンセイターを装着するためのネジ山が切ってあるものが標準になっており、通常は大型の円筒形コンペンセイターを装着して用いられる。コンペンセイター装着モデルの銃身固定ナットは専用工具を用いずとも5/8 インチまたは 16mm のスパナがあれば回すことが可能である[9]。
トリガープル(トリガーを引くために必要な力)、およびトリガーストロークは調節可能で、トリガープルの公称値(マニュアル記載値)はシングルアクションで 3.3 ポンド(約1.5 kg)、ダブルアクションで 11ポンド(約 5 kg)[10]、標準平均値は同じく 4 ポンド(1.815 kg) / 12.8 ポンド(約 5.806 kg)となっている。グリップ(銃把)は射撃時に起倒する撃鉄および前後動するアッパーフレームで射手の手を傷つけないように[注 6]後面上端が大きく張り出した形状となっており、素材にはフランス産の家具用高級ノワイエ(Noyer)材(ウォールナット)が用いられていた。グリップは1枚の板から削り出された1ピース構成のもので、底部の一本のネジで固定されている[9][注 7]。
フレームには酸化焼入れ処理を施した“ブラック(ブルースチール)”モデルとニッケルメッキの施された“シルバー”モデルの二種類があり、ユーザーが銃身を変更したために銃身とフレームで素材が異なっている個体も多数存在する。大口径マグナム弾仕様モデルは発砲時の衝撃に耐えるためにフレームが強化されており、アッパーフレームのシリンダー収容部周縁にリブが追加されている。ロングバレルモデル用の下部フレーム、トリガーガードの前方左右両側面には3基のネジ穴のあるオプション取付基部が設けられており、ここにスコープマウントを装着することが可能で、通常は右側にネジ止めする専用のスコープマウントが公式オプションとして販売された。この3基のネジ穴は後述のカービンモデル(マテバ グリフォーネ)のフォアエンドを取り付ける際にも使用される。
照準器は照星(フロントサイト)のみが上下左右に調整でき、照門(リアサイト)は固定式である。これは「銃身を自由に交換できる」という特性上、フロント/リアサイトのいずれかを固定式にしておけば、銃身を変更した際に両方のサイトを別個に調整する必要がない、という点からの構成で、前作2006Mの反省に基づいている。
販売されたものには使用弾薬と銃身長により複数のモデルがあり、以下の4種類がラインナップされていた。.357マグナム弾モデルは.38スペシャル弾の使用も可能である。
ただし、.357マグナム弾モデルに.38スペシャル弾をそのまま使用した場合、.38SPは.357MAGに比べて発生する反動が小さいため、オートマチック機構が十分に作動しない。.38スペシャル弾を使用してオートマチック機構を正常に作動させるには、リコイルスプリングの変更が必要である。
この他、前述のように銃身には3・4・5・6・7・8インチの各種長のものがオプションとして用意されており、ユーザーが個別に交換することができた。
なお、本銃は個人のセルフディフェンスや公的機関向けの需要がほとんどなく[注 9]、発売後しばらくして販売対象がスポーツシューティングと狩猟用に絞られたため、フレームはオプション取付基部のあるもののみに生産が一本化され、銃身も3・4インチ長以外は全ての口径でコンペンセイター装着用のネジ山があるものが標準の仕様とされた。そのため、資料によってはオプション取付基部/およびコンペンセイター装着部のないものを「前期型」それらがあるものを「後期型」として区分している。また、前節で述べたように、.44マグナム弾および.454カスール弾仕様モデルはフレームにリブが追加されており、更に後者のモデルにはクレーン(ヨーク)に固定ラッチが追加されているという仕様の違いがあるが、特にこれらを別モデルとして区分することはされていない。
拳銃モデルの他、長銃身にフォアエンド(先台)とストックを備え、スコープマウント装着可能としたカービンモデルがあり、“マテバ グリフォーネ”(MATEBA Grifone)の名称[注 10]で販売された。
拳銃モデルと同じく銃身長と使用弾薬に複数のバリエーションがあり、銃身長は標準モデルで18インチ(約45.7cm)、14インチ(約35.6cm)、12.25インチ(約31cm)のショートモデルの他、20インチ(50.8cm)のロングモデルも存在し、使用弾薬は拳銃型と同様の.357マグナム弾モデル、.454カスール弾および.44マグナム弾の他に、.45ロング・コルト弾仕様がラインナップされていた。また、銃床は木製のものと金属製のものの二種類があり、金属製銃床には木製のチークピース[注 11]が装着できる。
銃本体は拳銃型と同じもので、8インチ銃身用のバレルシュラウドを装着した6 Unica本体に、銃床と左右にスコープマウント取付部のある先台が結合されている。拳銃型と同じく、マグナム弾使用モデルは銃口にマズルコンペンセイターを装着した。
なお、グリフォーネの内部機構は6 Unicaと全く同一だが、グリフォーネは6 Unicaの特徴である反動利用式のオートマチック機構を備えていない。これはカービンモデルとして銃身を延長したため、銃身を含めたアッパーフレームの重量が増大し、弾薬の発砲に伴う反動力ではオートマチック機構を十分に作動させることが不可能になったためである。これに伴い、アッパーフレームはロアーフレームに固定されている。このため、グリフォーネは通常のリボルバーのようにハンマーおよびトリガーを用いたシングルアクションまたはダブルアクションでのみ作動・撃発させることができる。