ミゾコウジュ

ミゾコウジュ
茨城県常総市 2023年5月下旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : シソ類 Lamiids
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
: アキギリ属 Salvia
: ミゾコウジュ S. plebeia
学名
Salvia plebeia R.Br. (1810)[1]
和名
ミゾコウジュ(溝香薷)[2][3]

ミゾコウジュ(溝香薷、学名Salvia plebeia)は、シソ科アキギリ属越年草。やや湿った場所に生える。別名、ユキミソウ[2][3][4][5]

特徴

[編集]

は四角形で直立し、高さは30-70cmになり、上方で分枝し、稜に下向きの細毛が生える。根出葉はやや大型の長楕円形で、長い葉柄があり、ロゼット状になるが、花期には枯れて存在しない。茎は対生し、短い葉柄があり、単葉で長楕円形、長さ3-6cm、幅1-2cm、先端は鈍頭、基部は次第に細まる。葉の縁には鈍い鋸歯があり、表面、裏面ともにまばらに毛が生え、表面の葉脈はへこんで細かいしわがある[2][3][4][5]

花期は本州、四国、九州では5-6月、琉球では4月。枝先に花穂を出し、多数の淡紫色の小さいを段ごとにつける。花穂ははじめ短いが、のちに長さ8-10cmに伸びる。は長さ2.5-3mm、唇型に浅く5裂し、花が終わると左右を閉じるが、果時に長さ約4mmになってまた開く。花冠は長さ約5mm、下唇は上唇より大きく、大きい紫色の斑点がある。雄蕊は4個あり、うち2個は花糸が長く、葯隔は前後がほぼ等しく伸び、下部の2個の雄蕊は不稔で互いにつながる。果実は4個の分果で、分果は広楕円体で長さ約0.8mmになる。染色体数2n=16[2][3][4][5]

分布と生育環境

[編集]

日本では、本州、四国、九州、琉球に分布し[2][3][4]、湿った草地、やや湿った道ばた、田の畔、泥地、河原などの裸地的な草地に生育する[3][4][5]。世界では、東アジアマレーシアインドオーストラリアに広く分布する[4]

名前の由来

[編集]

和名ミゾコウジュは、「溝香薷」の意で、のような湿った場所に生え、花序が香薷に似ることによる。香薷とはナギナタコウジュ(薙刀香薷、Elsholtzia ciliate[6])の類のこと[3]

香薷の名がつく日本に分布する植物は、他にスズコウジュ Perillula reptans[7]フトボナギナタコウジュ Elsholtzia nipponica[8]イヌコウジュ Mosla scabraヤエヤマスズコウジュ Suzukia luchuensis[9] などがあり、いずれもシソ科である[10]

なお、飯沼慾斎は、1856年(安政3年)に出版された『草木図説』前編20巻中第11巻の「ミゾカウジュ」において、「好テ溝畔ニ生ス.方茎高二尺ニ超エ.葉披針状香薷葉ニ似テ長ク.茎葉共ニ短毛アツテ糙渋」と記載している[11]

種小名(種形容語)plebeia は、「普通の」の意味[12]

種の保全状況評価

[編集]

準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト

都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[13]

  • 宮城県-絶滅危惧I類(CR+EN)
  • 福島県-情報不足(DD)
  • 茨城県-準絶滅危惧
  • 栃木県-要注目
  • 群馬県-準絶滅危惧(NT)
  • 埼玉県-準絶滅危惧(NT)
  • 千葉県-一般保護生物(D)
  • 東京都-準絶滅危惧(NT)
  • 富山県-絶滅危惧I類
  • 山梨県-絶滅危惧II類(VU)
  • 長野県-絶滅危惧IA類(CR)
  • 静岡県-準絶滅危惧(NT)
  • 愛知県-国リスト
  • 三重県-絶滅危惧II類(VU)
  • 滋賀県-希少種
  • 京都府-準絶滅危惧種
  • 大阪府-準絶滅危惧
  • 兵庫県-Cランク
  • 奈良県-絶滅危惧種
  • 和歌山県-絶滅危惧II類(VU)
  • 広島県-準絶滅危惧(NT)
  • 山口県-絶滅危惧II類(VU)
  • 徳島県-絶滅危惧I類(EN)
  • 愛媛県-準絶滅危惧(NT)
  • 高知県-準絶滅危惧(NT)
  • 福岡県-準絶滅危惧(NT)
  • 長崎県-絶滅危惧II類(VU)
  • 熊本県-準絶滅危惧(NT)
  • 大分県-情報不足(情報不足)
  • 宮崎県-準絶滅危(NT-r,g)
  • 鹿児島県-準絶滅危惧
  • 沖縄県-絶滅危惧II類(VU)

下位分類

[編集]

シロバナミゾコウジュ Salvia plebeian R.Br. f. leucantha Kawas. (1958)[14] - ミゾコウジュの白花品種。1957年6月、埼玉県比企郡吉見村(現、吉見町)の廃田の溝のへりで基本種の中から見いだされた[15]。品種名 leucantha は、「白い花の」の意味[16]

ギャラリー

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ ミゾコウジュ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花(増補改訂新版)』p.464
  3. ^ a b c d e f g 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1081
  4. ^ a b c d e f 米倉浩司 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』「シソ科」p.139
  5. ^ a b c d 村田源 (2015)「ミゾコウジュ」『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』p.126
  6. ^ ナギナタコウジュ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  7. ^ スズコウジュ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  8. ^ フトボナギナタコウジュ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  9. ^ ヤエヤマスズコウジュ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  10. ^ 米倉浩司 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』「シソ科」pp.101-143
  11. ^ 飯沼慾斎 草木図説前編20巻(11)、ミゾカウジュ、コマ番号24/82、国立国会図書館デジタルコレクション-2023年10月22日閲覧
  12. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1508
  13. ^ ミゾコウジュ、日本のレッドデータ検索システム、2023年10月22日閲覧
  14. ^ シロバナミゾコウジュ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  15. ^ 川崎哲也「ミゾコウジュの白花品」『植物研究雑誌』第33巻第6号、津村研究所、1958年、174頁、doi:10.51033/jjapbot.33_6_4265 
  16. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1500

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]