ミノタウロス (ロケット)

ミノタウロスI

ミノタウロス (Minotaur) はアメリカ合衆国固体燃料ロケットシリーズ。ミニットマンピースキーパー大陸間弾道ミサイルを転用している。製造はノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ(旧オービタル・サイエンシズ)が行っている。

ミノタウロスI小型人工衛星低軌道に投入するために使用される。ミノタウロスII英語版(キメラ、またはTLVとしても知られる)は弾道飛行に使用され、おもにトラッキングや弾道弾迎撃ミサイル試験のターゲットとして使用される。ミノタウロスIII英語版も弾道飛行に使用される。ミノタウロスIVは衛星打ち上げに使用され、低軌道投入能力はミノタウロスIのそれより大きい。ミノタウロスV2013年9月に初打ち上げに成功した機種で、静止トランスファ軌道月遷移軌道を含む、より高い軌道への投入が可能な設計をしている。一方ミノタウロスCはトーラスロケットが改名されたものである。

ミノタウロスI、IIはミニットマンミサイル派生で、ミノタウロスIII、IV、V、Cはピースキーパー派生である。ミノタウロスIとIV, V, Cが現役。

ミノタウロスC

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空中発射型のペガサスロケットピースキーパー由来の0段目を追加して地上発射型に転用したロケット。1994年とシリーズとして最も早くに打ち上げられたが、当初は「トーラスロケット」と呼ばれており、ミノタウロスの名称ではなかった。2011年の二度目の打ち上げ失敗の後に、現在のミノタウロスシリーズ由来の名称へと改名された。末尾の「C」は商用 (Commercial) を意味する。[1]

ミノタウロスI

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本来のミノタウロスIは1段目にM55A1、2段目にSR19、3段目にOrion 50XL、4段目にOrion 38を使用し、オプションで5段目にHAPSを使用する。

ケープカナベラル空軍基地からだと高度185km、軌道傾斜角28.5度に580kgのペイロード能力があり、ヴァンデンバーグ空軍基地だと高度740kmの太陽同期軌道に310kgのペイロード能力がある[2]

ミノタウロスII

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弾道飛行用ロケットで、本質的にはミニットマンIIに軌道誘導・制御システムを備えたものである。1段目にM55A1、2段目にSR19、3段目にM57を使用。高度6700kmの弾道飛行に460kgのペイロード能力がある[2]

ミノタウロスIII

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弾道飛行用ロケットで、1段目にSR-118、2段目にSR-119、3段目にSR-120、4段目にSuper HAPSを使用。高度6700kmの弾道飛行に3060kgのペイロード能力がある[2]。2013年9月の時点で、まだ打ち上げ実績はない。

ミノタウロスIV

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1段目にSR-118、2段目にSR-119、3段目にSR-120、4段目にOrion 38を使用。ケープカナベラルから高度185km、傾斜角28.5度の軌道に1735kgのペイロード能力がある。初飛行は2010年4月22日[3]

ミノタウロスV

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上段(5段)を新たに追加して、静止トランスファー軌道や、惑星ミッションに使用する。NASAはこのミノタウロスVを使用してLADEE(Lunar Atmosphere and Dust Environment Explorer)を2013年9月に打ち上げた。

打上げ記録

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日時 (UTC) ロケット 回数 ペイロード 射場 軌道 結果
2000-01-27 03:03:06 ミノタウロスI 1 JAWSat (P98-1) (FalconSat1 / ASUSat1 / OCSE / OPAL) ヴァンデンバーグ SLC-8 LEO 成功
2000-05-28 20:00 ミノタウロスII 1 OSP-TLV Missile Defense Technology Demonstrator ヴァンデンバーグ LF-06 弾道 成功
2000-07-19 20:09:00 ミノタウロスI 2 MightySat II.1 (Sindri, P99-1) / MEMS 2A / MEMS 2B ヴァンデンバーグ SLC-8 LEO 成功
2001-12-04 04:59 ミノタウロスII 2 TLV-1 IFT-7 GMDS target mission ヴァンデンバーグ LF-06 弾道 成功
2002-03-16 02:11 ミノタウロスII 3 TLV-2 IFT-8 GMDS target mission ヴァンデンバーグ LF-06 弾道 成功
2002-10-15 02:01 ミノタウロスII 4 TLV-3 GMDS target mission ヴァンデンバーグ LF-06 弾道 成功
2002-12-11 08:26 ミノタウロスII 5 TLV-4 GMDS target mission ヴァンデンバーグ LF-06 弾道 成功
2005-04-11 13:35:00 ミノタウロスI 3 XSS-11 ヴァンデンバーグ SLC-8 LEO 成功
2005-09-23 02:24:00 ミノタウロスI 4 Streak (STP-R1) ヴァンデンバーグ SLC-8 LEO 成功
2006-04-15 01:40:00 ミノタウロスI 5 COSMIC / FORMOSAT-3 ヴァンデンバーグ SLC-8 LEO 成功
2006-12-16 12:00 ミノタウロスI 6 TacSat-2 / GeneSat-1 MARS LP-0B LEO 成功
2007-03-21 04:27 ミノタウロスII 6 TLV-5 FTX-02 SBR target mission ヴァンデンバーグ LF-06 弾道 成功
2007-04-24 06:48 ミノタウロスI 7 NFIRE MARS LP-0B LEO 成功
2007-08-23 08:30 ミノタウロスII+ 7 TLV-7 Mission 2a sensor target for NFIRE satellite ヴァンデンバーグ LF-06 弾道 成功
2008-09-24 06:57 ミノタウロスII+ 8 TLV-8 Mission 2b sensor target for NFIRE satellite ヴァンデンバーグ LF-06 弾道 成功
2009-05-19 19:55 ミノタウロスI 8 TacSat-3 / PharmaSat / AeroCube 3 / HawkSat I / CP-6 MARS LP-0B LEO 成功
2010-04-22 23:00 ミノタウロスIV Lite 1 HTV-2a ヴァンデンバーグ SLC-8 弾道 成功
2010-09-26 04:41 ミノタウロスIV 2 SBSS ヴァンデンバーグ SLC-8 SSO 成功
2010-11-19 01:45 ミノタウロスIV HAPS 3 STP-S26(FASTRAC-A / FASTRAC-B / FalconSat-5 / FASTSAT / O/OREOS / RAX) コディアック LP-1 LEO 成功
2011-02-06 12:26 ミノタウロスI 9 NROL-66 ヴァンデンバーグ SLC-8 LEO 成功
2011-06-30 03:09 ミノタウロスI 10 ORS-1 MARS LP-0B LEO 成功
2011-08-11 ミノタウロスIV Lite 4 HTV-2b ヴァンデンバーグSLC-8 弾道 成功
2011-09-27 ミノタウロスIV+ 5 TacSat-4 コディアック LP-1 HEO 成功
2013-09-07 03:27 ミノタウロスV 1 LADEE MARS LP-0B 月投入軌道 成功
2013-11-20 01:15:00 ミノタウロスI 11 ORS-3ミッション(STPSat-3とCubeSat28機) MARS LP-0B LEO 成功

参考文献

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  1. ^ 鳥嶋真也 (2017年11月9日). “ミノトールCの悩み - 失敗を乗り越え、よみがえった米国の小型固体ロケット”. マイナビニュース. 2022年11月24日閲覧。
  2. ^ a b c Minotaur”. Encyclopedia Astronautix. 2009年5月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年3月17日閲覧。
  3. ^ Minotaur IV”. Orbital Sciences Corporation. 2011年3月17日閲覧。

外部リンク

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