メキシコ国鉄 | |
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報告記号 | NDEM, NDM, NDMZ |
路線範囲 | メキシコ |
運行 | 1903年 | –1995年
メキシコ国鉄は、かつてメキシコにあった国有の鉄道会社である(「政府が運営する鉄道」ではない)。スペイン語ではFerrocarriles Nacionales de México、略称はNdeMまたはFNM。1938年から1998年まで存在し、のちに分割・民営化された。ただし、現在でも、インフラは政府が保有している。
メキシコ国鉄の設立そのものは1908年、ポルフィリオ・ディアス政権下においてである。当時、ヌエボ・ラレドやシウダー・フアレスといったアメリカ合衆国との国境の都市とメキシコシティとを結ぶ大規模な鉄道は政府が運営していた。当時の憲法には、石油等とともに、鉄道は国家によって独占されることが明記されていた(第28条)。そのため、民間会社が鉄道事業を行うことは想定しておらず、法が未整備の状態であった。
時代は下り、1938年に、ラサロ・カルデナス大統領はNdeMを国営企業とした。国営であるために、モータリゼーションが進んで旅客輸送が自動車やバスに転移しても、その恩恵に与れない低所得の人々のために、運賃が安い旅客列車(1990年代には荷物車と客車合わせて1~3両程度の列車が多かった)の運行を続けた。 それは需要のある貨物列車の本数を規制するというような非効率的な運営や近代化の遅れに直接繋がってしまった。
1980年初頭、メキシコは経済政策の失策から国家的な経済的危機に陥った。政権交代で一時は回復するものの、1985年のメキシコ地震、そして翌1986年の原油価格下落から再び経済危機に直面。時のカルロス・サリナス・デ・ゴルタリ大統領は、対策として運輸政策の民営化を進めた。しかし、労組の反対やナショナリズム(かつて鉄道はイギリス資本に支配されていた)などから、機関車の保守工場の民営化等が行われたのみであった。1993年12月に制定された新外資法では大幅な外資の導入を可としたものの、鉄道は国家独占と規定されていた。
保守工場は、全国を5つの地域に分割し、下記の3つが民営化された。残る2つは国営のまま残った。
続くエルネスト・セディージョ政権は、1994年末に起こったメキシコ・ペソ切り下げに起因する経済危機を乗り切るための緊急対策として、その民営化のペースを早めた。売却益は政府の財政収支改善と、国鉄職員の年金、道路整備に充てられることとされた。1995年1月には、憲法第28条を改正し、さらに5月には民営化の法的根拠となる鉄道サービス法を制定した。
民営化の計画は次のようなものであった。
最初に入札にかけられたのは北東鉄道であった。1996年、メキシコ鉄道輸送(Transportación Ferroviaria Mexicana、TFM/Mexican Rail Transportation)が約111億メキシコ・ペソ(約1,600億円)で落札した。TFMは、メキシコの国営海運会社TMMが51%、アメリカのカンザス・シティ・サザン鉄道(KCS)が49%出資する会社であった。この割合は、前述の「外資の最大割合は49%」に基づいたものである。そして、翌1997年6月に、TFMに引き渡された。
2005年4月には、KCSがTFMの株式の大半を取得し、同年12月、TFMをカンザス・シティ・サザン・ド・メキシコと改称した。
次に、太平洋北部鉄道が入札にかけられた。1997年6月、落札したのはフェロメックス(Ferromex)である。フェロメックスは、メキシコ有数の鉱山会社であるグルポ・メヒコが74%、アメリカのユニオン・パシフィック鉄道(UP)が26%出資する会社である。落札金額は39億メキシコ・ペソ(約590億円)であり、翌1998年2月に引き渡された。後述する旅客鉄道の運営も手がけ、メキシコ最大の鉄道運営組織である。
最後に、南東鉄道が入札にかけられた。当初は南東部の鉄道すべてを売却する予定であったが、テワンテペク地峡を国に残し、残る路線を民営化することに変更された。1998年6月、メキシコ第二の建設会社でるトリバサ・グループ(Grupo Tribasa)を中心とするグループが28億9800万メキシコ・ペソ(約460億円)で落札し、フェロスールとした。このグループは、トリバサが55%、メキシコの金融グループであるインブルサ・グループ(Grupo Financiero Inbursa)が40%、アメリカの鉄道会社、オムニトラックスが残る5%を分担している。引き渡しは同年12月であった。その際、ユカタン半島の路線について、トリバサ・グループは購入しないことを決め、それ以外の路線を承継した。
各支線については、前述の承継会社や、ユーザーである鉱山会社が承継した。次に、支線の区間及び承継者を示す。
旅客輸送については、次に区間と承継者を示す(のちに一部は廃止)。
国鉄を引き継いだ3つの鉄道運営組織のうち、フェロスールの親会社(正確にはそのまた親会社)がフェロメックスと同じとなり、経営統合を計画しているが、独占禁止法に抵触するとのかどで中断されている。
TFMは、株主の構成が変わり、カンザス・シティ・サザン鉄道の子会社となった。2005年12月には、名称をカンザス・シティ・サザン・ド・メキシコと改め、機関車の塗装スキームも変更されつつある。
日本は、メキシコ国鉄に対して以下のような技術支援を行ってきた。
また、資金協力(政府開発援助)も行っている。