メンドーサ・ライン(Mendoza Line)とは、メジャーリーグベースボールにおいて野手の低打率を示す表現であり、具体的には打率.200を基準とする。打率.200を下回った時に「メンドーサ・ラインを下回った(below the Mendoza Line)と表現される[1]。
1970年代から1980年代にかけてパイレーツやマリナーズなどでプレーしたマリオ・メンドーサ遊撃手の打率が例年.200前後だったことに由来する(ただしメンドーサの通算打率は.215である)[1]。
長らく、1979年にカンザスシティ・ロイヤルズの主砲ジョージ・ブレットがESPNの記者に対して「新聞を開いたら真っ先に(打率ランキングで)誰がメンドーサ・ラインの下にいるのかをチェックしている」と語ったのが発祥とされてきた。これをきっかけに、ESPNの看板番組「スポーツセンター」でメンドーサ・ラインという表現が頻繁に用いられるようになり、ファンの間にも定着していった[2]。
実際には、ブレットよりも先に、メンドーサのチームメイトだったトム・パチョレック(Tom Paciorek)とブルース・ボクテ(Bruce Bochte)がメンドーサをからかうためのジョークとして「メンドーサ・ライン」を使ったのが始まりである。彼らが春先のスランプに苦しんでいたブレットに「気をつけないと打率がメンドーサ・ラインに届かないぜ」と声をかけ、それからブレットもメンドーサ・ラインという言葉を使い始めた[2]
1980年代以降、遊撃手や捕手にも打力が要求される時代となり、レギュラー野手がメンドーサ・ラインを下回るケースは減った。近年では1999年にルーベン・リベラが打率.195を記録して以来、2010年にカルロス・ペーニャ、マーク・レイノルズが1割台を記録するまで、400打数以上で.200を下回った選手は1人もいなかった。しかし、打数が少ない春先などは大物選手であっても低打率であることが珍しくなく、メンドーサ・ラインは一定の目安として度々言及される[1][3]。
2003年に出版されたマネー・ボールに代表されるセイバーメトリクスによる選手能力のデータ分析が進むと、低打率でも出塁率や長打率などに秀でた野手は起用される傾向が増え、打率.200以下でも規定打席に到達する選手が増えている。[要出典]この傾向が顕著な選手はジョーイ・ギャロで2020年、2021年と2年連続で規定打席に到達し打率.200未満を記録しており、2022年シーズン終了時点で通算打率が.199である。
現在では、メンドーサ・ラインは野球のみならず、株価、投資信託から学業成績、営業成績などあらゆる分野において、許容できないほど低水準の状態にある、もしくは近いことを表す言葉として使用されている[2]。