数学におけるモーデルの定理(モーデルのていり、英: Mordell's theorem)とは、有理数体 Q 上の楕円曲線 E の有理点と無限遠点 O のなすアーベル群 E(Q) が有限生成になる、という定理である。有限生成アーベル群の基本定理から有限生成アーベル群は次に同型であることが知られている。
ここで は有限アーベル群(ねじれ部分群)である。(r は E の階数(ランク)と呼ばれ、関連する予想にミレニアム懸賞問題のBSD予想がある。)
有限生成アーベル群 E(Q) の場合、ねじれ部分群 T は次のいずれかに同型となる(メイザーのねじれ定理)。
モーデルの定理は後にアンドレ・ヴェイユによって代数体上のアーベル多様体の有理点のなす群に関するモーデル・ヴェイユの定理へと拡張された[1]。
以下モーデルの定理を正確に述べるために少し準備をする。
これは E(Q)/2E(Q) が有限群であるという定理である。一般にアーベル群 A が有限生成ならば A/2A は有限群になるので、これは E(Q) が有限生成となるための必要条件になっている。ここで、一般には A/2A が有限群でも A が有限生成になるとは限らないことに注意しなければならない(反例として、Q/2Q = {0} だが Q は有限生成でないことがあげられる)。
有理数 x について高さ H(x) を次のように定義する。x = m/n (n, m ∈ Z で、n と m は互いに素)と既約分数で表示したとき
また P ∈ E(Q), P ≠ O に対して H(P) を P の x 座標の高さとし、H(O) = 1 と定義する。
このとき次の2つの条件を満たす正数 C が存在することが知られている。
いま f を E(Q) から E(Q)/2E(Q) の上への自然な準同型
とし E(Q) の部分集合 A の f による像が E(Q)/2E(Q) であるとする。(すなわち f: A → E(Q)/2E(Q) が全射。いま A に演算は定義しない。)
このときモーデルの弱定理より A が有限集合でも構わないことがわかる。そこで とする。ここで正数 M を
と定めると次のモーデルの定理が成り立つ
高さの定義よりこれは有限集合でなので、結局 E(Q) は有限生成であることが分かる。
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モーデル・ヴェイユの定理(Mordell–Weil theorem)は、数体 K の上のアーベル多様体 A に対し、A の K-有理点の群 A(K) が、モーデル・ヴェイユ群(Mordell-Weil group)と呼ばれる有限生成アーベル群であるという定理である。A が楕円曲線で K が有理数体 Q の場合をモーデルの定理と言い、1908年頃にアンリ・ポアンカレ(Henri Poincaré)により提示された疑問に答えたもので、1922年にルイス・モーデル(Louis Mordell)により証明された。
接する弦のプロセス(tangent-chord process)(三次曲線(cubic cuve)における加法定理の一種)は、17世紀より知られている。フェルマー(Fermat)のは無限降下法は良く知られていたが、モーデルは(無限降下法の)証明の重要な段階である商群 E(Q)/2E(Q) を証明することに成功した。確かにこの群の有限性は、E(Q) が有限生成であることの必要条件であり、このことはアーベル群のランクが有限であることを意味していて、本質的に難しいことであることが判明している。このことの証明は、E の点の二重性の直接の解析により初めて可能となる。
数年後、アンドレ・ヴェイユ(André Weil)はこの問題を取り上げ、数体上の高い種数を持つ曲線のヤコビ多様体へ一般化し、1928年に彼の博士論文として出版した[2]。一層抽象的な方法が要求され、同一の構造を持つ証明が遂行された。証明の後半は、A(K) の点の「サイズ」の限界を意味するある種類の高さ函数を必要とした。座標の測り方として、高さは対数的であり、従って大まかに言うと、同次座標(homogeneous coordinates)の集合を書き下すことに何デジット必要かという疑問であった。アーベル多様体では、射影多様体として表現されていることから、何の前提も必要ない。
証明の前半も後半も、その後のテクニックの前進により大きく改善され、ガロアコホモロジーでは降下法が適用され、最良の高さ函数は、二次形式であることが研究により示されている。
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