ユアンティ Yuan-ti | |
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特徴 | |
属性 | 混沌にして悪 |
種類 | 人怪 (第3版) |
画像 | Wizards.comの画像 |
掲載史 | |
初登場 | 『Dwellers of the Forbidden City』 (1981年) |
ユアンティ(Yuan-ti)は、テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)に登場する架空のヒト型爬虫類種族である。ユアンティは太古に蛇神と混血した邪教徒たちの末裔たるヘビ人間で、複数のキャンペーンセッティング(D&Dのゲーム世界)で階級社会を築いている。彼らは恐るべき超能力の使い手である。
ユアンティは『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』(AD&D)の第1版から登場している。
ユアンティが初めて登場したのは冒険シナリオ集、『Dwellers of the Forbidden City』(1981、未訳)で、そこで“ピュアブラッド(Purebloods)”、“ハーフブラッド(Halfbreeds)”、そして“アボミネーション(Abominations)”の3階級が登場した。そしてこの3階級は『Monster Manual Ⅱ』(1983、未訳)に掲載された。
『ドラゴン』151号(1989年11月)では“ユアンティの生態”特集が組まれ、歴史や社会とともに、ユアンティの儀式によって変質したモンスター、“ヒスタッチー(Histachii)”が紹介された。
AD&D第2版でユアンティの3階級は『Monstrous Compendium VolumeⅠ』(1989、邦題『モンスター・コンベンディウムⅠ』)に登場し、『Monstrous Manual』(1993、未訳)に再掲載された。また、D&Dで東洋風ゲームを扱うオリエンタルアドベンチャーの世界、カラ・トゥアのモンスター集、『Monstrous Compendium Kara-Tur Appendix』(1990、未訳)にはヒスタッチーが登場し、こちらも、『Monstrous Manual』に再掲載された。
超能力を扱ったサプリメント、『The Complete Psionics Handbook』(1991、未訳)でユアンティの超能力のバリエーションが紹介されている。
D&D第3版では『モンスターマニュアル』(2000)に3階級が登場している。また、『モンスターマニュアルⅢ』(2004)ではドラゴンとユアンティの交配によって生まれたスヴァクラー(Ssvaklor)が登場している。
フォーゴトン・レルムのモンスター集、『Monsters of Faerun』(2001、邦題『フェイルーンのモンスター』)には、ユアンティの儀式で外見を保ちながら蛇人間となった“テインテッド・ワン(Tainted One)”と、この版でのヒスタッチーに該当する“ブルードガード(Broodguard)”が登場した。ピュアブラッドとテインテッド・ワンは『Races of Faerun』(2003、未訳)でプレイヤー用種族として設定された。
モンスター種族をPCとして選べるサプリメント、『Savage Species』(2003、未訳)ではテインテッド・ワンとブルードガードがプレイヤー用種族として登場している。
第3版でリメイクされた『Fiend Folio』(2003、未訳)では“アナテマ(Anathema)”の階級が登場した。
幽霊が棲む街を舞台とした『 Ghostwalk』(2003、未訳)ではテインテッド・ワンとブルードガードが登場した。
D&D第3.5版でも改訂された『モンスターマニュアル』に登場している。
『Expanded Psionics Handbook』(2004、邦題『サイオニクス・ハンドブック』)ではユアンティのサイオニック版が登場した。
フォーゴトン・レルムのサプリメント、『Serpent Kingdoms』(2004、未訳)ではピュアブラッド、テインテッド・ワン、ブルードガードがプレイヤー用種族として登場している。また、この書では“ユアンティの聖なる守護者(Yuan-ti Holy Guardian)”と“ユアンティの魔術師殺し(Yuan-ti Mageslayer)”が登場した。
『Monster Manual Ⅳ』(2006、未訳)には、“アボミネーションの邪教主(Abomination Cult Leader)”、“ハーフブラッドの詐欺師(Halfblood Deceiver)”、“火界のユアンティ(Yuan-ti Ignan)”、そして“ピュアブラッドの抹殺者(Pureblood Slayer)”が登場した。
エベロンのサプリメント、『Secrets of Xen'drik』(2006、邦題『ゼンドリックの秘密』)では、雑魚戦闘員たる“ユアンティ・レッチリング(Yuan-ti Wretchling)”が登場した。
D&D第4版では、『モンスター・マニュアル』(2008)、『モンスター・マニュアルⅢ』(2009)に登場している。この版から階級が“マリズン(Malison)”、“アボミネーション(Abomination)”、“アナテマ(Anathema)”の3階級になり、邪悪な蛇神“ゼヒーア(Zehir)”を崇める種族となった。また、ゼヒーアを崇める人間たちの教団、“蛇舌教団(Snaketongue Cultists)”が登場し、これまでの従僕的立場を担うようになった。
第4版によって登場した個体は以下の通りである。
また、エッセンシャルズのモンスター集、『Monster Vault』(2010、未訳)では、上記にある個体の中からユアンティ・マリズンの追跡者、ユアンティ・マリズンの“蛇の目”、ユアンティ・アボミネーションに加えて、“ユアンティ・マリズンの詠唱者/Yuan-ti Malison Chanter”が登場している。
D&D第5版では、『モンスター・マニュアル』(2014)にユアンティ・アボミネーション、ユアンティ・マリズン、そしてユアンティ・ピュアブラッドが登場している。
『Volo's Guide to Monsters』(2016、邦題『ヴォーロのモンスター見聞録』)ではユアンティの詳細な設定に加え、アナテマ、ブルードガード、そして以下の個体が登場している。これらはすべてマリズンに属している。
ユアンティは血統による階級によって外見から異なっている。『モンスター・コンベンディウムⅠ』にはユアンティの外見を決めるランダム表すらある[1]。
ユアンティは“混沌にして悪”の種族であり、敬虔な悪の信奉者である。
ユアンティはジャングルの奥深くにある古い遺跡に生息し、秘密の寺院を築き信仰を絶やさないでいる。彼らの建造物は全体的に丸みを帯び、階段の代わりに棒や傾斜を設けている。寺院は彼らの生活の根幹であり、彼らはその場所をひた隠しにしている。そこには指導者たる司祭たちがおり、血生臭い儀式が行われている。寺院は人間の都市の地下にある場合もあり、人間の信者も出入りしている[1]。
ユアンティは蛇神の元で常に世界征服の謀略を巡らせている。彼らは人間社会に潜入し、信奉者を増やしてその勢力を拡大しようと企てている。
ユアンティは完全な肉食で、特に鳥やヒト型生物の肉を好む[1]。
また、ユアンティは全ての爬虫類に敬意を払っており、同じ蛇人間であるナーガやメドゥーサとは盟約を結ぶことも多い[4]。
ユアンティは蛇神を崇める人間たちの邪教団を組織し、二級市民として扱っている。彼ら信徒はユアンティを蛇神の使徒として敬い、彼らのために犠牲になることを厭わない。ユアンティは恩恵として、信徒を蛇人間に改造する儀式を施している[4]。
ユアンティは版や背景世界によって様々な蛇神を崇めているが、そのいずれも邪神である。
第3版および3.5版では“混沌にして悪”の邪神マーショールク(Mhairshaulk)を崇めている。グレイホーク、フォーゴトン・レルムの両世界はこれに準拠している。
エベロンでは“中立にして悪”の邪神にして「暗黒六帝」の一柱たるディヴァイラーを崇拝している。彼らはディヴァイラーをいつの日か世界を飲み込む蛇に他ならないと考えている[5]。
第4版になると、闇と毒、暗殺を司り蛇を創造した悪の神、ゼヒーアを信奉するようになる。ユアンティは殺人を尊ぶゼヒーアへの供物として、蛇で満たされた穴に生贄を放り込む。ゼヒーアはプライモーディアル(神々に敵対する古代神霊)に対抗するために、全次元界の絶対的支配者にならんとする野望を抱いており、常に謀略を企てている。他の神々はゼヒーアが神々の敵対者と戦っている間はその存在を監視しつつも黙認している[4]。
第5版では“夜の蛇”デンガー(Dengar)、“巣穴の母”マーショールクとともに、“死の歯擦声”スセス(Seeth)といった神々が列挙されている。翼あるユアンティであるスセスは新しきユアンティ帝国を築くことを誓っており、マーショールクの教団から転向する者が出始めている[6]。
『Volo's Guide to Monsters』に登場する3種類のマリズンはいずれも違う神格に仕えており、“心に囁く者”はスセス、“悪夢を囁く者”はデンガー、“穴の長”はマーショールクに仕えている。外見もそれぞれ、“心に囁く者”は下半身、“悪夢を囁く者”は上半身、“穴の長”は両腕が無数の蛇である[7]。
エベロンでのユアンティの故郷はサローナ大陸である。だが、サローナは夢の次元界からの侵略者クォーリと融合した強化人間インスパイアドに支配され、迫害されたユアンティはアルゴネッセン大陸に逃げ延びた。だが、アルゴネッセンでもドラゴンに迫害され、ゼンドリック大陸に流れ着いた。学者たちはこの迫害によってユアンティが邪悪な種族に変貌してしまったと説く。いずれにせよ、エベロンでもユアンティは一、二を争う邪悪な種族であり、自らの眷属を繁殖させようと人間を浚っては忌まわしい儀式の生贄としている。
また、『ゼンドリックの秘密』では太古にコアトルと血縁を結んだ“秩序にして善”のユアンティ、“シュラスサカール(Shulassakar)”が登場する。彼らはコーヴェア大陸に流れ、タレンタ平原の遺跡都市クレゼントに隠棲している。彼らはコアトル及び正義の神シルヴァー・フレイムを信奉している。『City Of Stormreach』(2008、未訳)ではモンスター及びプレイヤー用種族として設定されている[5]。
人類がフェイルーン大陸を支配する遙か前、爬虫類人の始祖たる種族、サッルーフ(Sarrukh)が古代人と蛇を融合させて作ったのがユアンティの始まりである。ユアンティはリザードフォークより知性的でナーガより忠実だったので両者の関係はしばらく良好だったが、ユアンティの社会が成熟するにつれ、サッルーフの影響力も低下した。サッルーフの帝国が持続している最中にユアンティはサッルーフの力を得るために立ち上がり、結局サッルーフは支配者の座から降りた。サッルーフが信奉していた世界蛇の神性は失われ、ユアンティは長らく忘れられていた、より残酷で専制的なマーショールクの神性を崇拝するようになった。
しかしながら、ユアンティはその勢力を拡充するのではなく、人間やデミ・ヒューマンの社会に組織を潜り込ませ、遠大な策謀を練る事にした。マーショールクが信者を無視して、深き眠りについたからである。その後、ネザリル帝国崩壊の最中に、翼の生えたユアンティの1人、ゼッスがマーショールクの化身であると宣言し、新しい帝国を興す事を告げユアンティを統べるようになった。しかし、その後ゼッスもまた深き眠りへと落ちていった。
グレイホークの世界において、ユアンティは主としてヘプモナランドの荒廃した都市に居住している。彼らはオルメカ人の蛇神、トラロック(マーショールクとの関係は定かではない)によって作られたと伝わっている。ユアンティが初めて登場した『Dwellers of the Forbidden City』はグレイホーク世界に属する。
マジック:ザ・ギャザリングでD&D世界を扱った拡張セット、『フォーゴトン・レルム探訪』(2021年)にユアンティは、「ユアンティの毒牙刃」(緑カードのクリーチャー)と、「ユアンティの呪われしもの」(青カードのクリーチャー)が登場している[8]。
ユアンティはウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が提唱するオープンゲームライセンスの“製品の独自性(Product Identity)”によって保護されており、オープンソースとして使用できない[9]。