ラプラス=スティルチェス変換(ラプラス=スティルチェスへんかん、英語: Laplace–Stieltjes transform)は、ラプラス変換に類似した変換である。ピエール=シモン・ラプラスとトーマス・スティルチェスにちなんで命名された。関数解析、基礎および応用確率論を含む多くの数学分野で活用されている。
ある関数 g: R→Rに対するラプラス=スティルチェス変換は、
と定義される。ただし右辺のルベーグ=スティルチェス積分が存在する必要がある。
しばしばsは実数であり、また正の半直線上でのみ定義される関数(すなわちg: [0,∞) → R)のみ扱うような場合もある。このようなときは、上記の積分は0から∞の範囲となる。
ラプラス=スティルチェス変換は、その性質の多くがラプラス変換と共通である。
たとえば畳み込みについては、2つの写像 g と h についてそれぞれラプラス=スティルチェス変換が存在するとき、以下の性質が成り立つ。
ラプラス=スティルチェス変換は基礎確率論および応用確率論において、しばしば有用である。たとえば、確率分布 F に従う確率変数 X に対して、ラプラス=スティルチェス変換は期待値との関連で説明される。
具体的な応用例としては、マルコフ連鎖のような確率過程の初到達時刻(first passage time)や、再生理論などが挙げられる。物理学においては、たとえば場の量子論での和をゼータ関数正則化の手法によって正則化する際に、ラプラス=スティルチェス変換が用いられることがある。
ラプラス=スティルチェス変換は、他の積分変換(たとえばフーリエ変換やラプラス変換)と密接な関係がある。特に以下の点に注意する。
- 関数 g が導関数 g' を持つとき、gのラプラス=スティルチェス変換は g' のラプラス変換に等しい。
- 関数 g のフーリエ=スティルチェス変換(これは上記と同様、g' のフーリエ変換と一致する)は以下のように与えられる。
指数分布に従う確率変数 Y に関するラプラス=スティルチェス変換は以下の通り。
ラプラス=スティルチェス変換に関する、よく知られた文献には以下のようなものがある。
- Apostol, T.M. (1957). Mathematical Analysis. Addison-Wesley, Reading, MA. (For 1974 2nd ed, ISBN 0-201-00288-4).
- Apostol, T.M. (1997). Modular Functions and Dirichlet Series in Number Theory, 2nd ed. Springer-Verlag, New York. ISBN 0-387-97127-0.
確率論およびその応用との関連では、次の文献が参考になる。
- Grimmett, G.R. and Stirzaker, D.R. (2001). Probability and Random Processes, 3rd ed. Oxford University Press, Oxford. ISBN 0-19-857222-0.