リンウーロン | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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リンウーロン・シェンキの復元図
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地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
前期ジュラ紀トアルシアン前期 - 中期ジュラ紀バッジョシアン | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Lingwulong Xu et al., 2018 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
下位分類群 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
リンウーロン(学名:Lingwulong、霊武龍)は、中国寧夏回族自治区銀川市霊武市に位置するジュラ紀前期または中期にあたる延安層から産出した、ディクラエオサウルス科に属する竜脚下目の恐竜の属。模式種はリンウーロン・シェンキ(霊武龍神奇)であり、複数の断片骨格から知られる。これまでに発見された新竜脚類では最初期のもので、東アジアで唯一明確にディプロドクス上科に分類される属である。正確な時代は不明であるが、トアルシアン後期からバッジョシアンに生息し、中央値は1億7400万年前と推定されている[1]。
2004年に羊飼いが恐竜の骨を発見して地方行政官に知らせた。2005年の春に恐竜の専門家である徐星の目に留まり、調査隊が派遣されることとなった。寧夏回族自治区霊武市付近の複数の発掘現場が調査され、約7 - 10個体分の竜脚下目の化石が発見された[1]。
2018年に徐星らは模式種リンウーロン・シェンキを命名・記載した。属名は Lingwu (霊武)への言及と普通話で「龍」を意味する long の組み合わせに由来する。種小名は普通話で「驚くべき」という意味を持ち、これまで東アジアでは発見されなかったディクラエオサウルス科の属がこの地域で発見されたことを反映する[1]。
ホロタイプ標本 LM V001a は延安層のトアルシアンからバッジョシアンにあたる層から発見され、ごく大まかに言うと1億7400万年前のものである。この標本は本来の位置で発見された一連の歯骨の歯がついた頭骨の後方部分からなり、霊武博物館が所蔵する。パラタイプ標本 LGP V001b は頭骨を欠く断片的な骨格である。後方の脊椎・仙椎・腰椎・第1尾椎ならびに右後肢の骨格要素からなる。パラタイプ標本とホロタイプ標本は同一個体のものである可能性もある。パラタイプ標本は霊武ジオパークに展示されている[1]。
本種に割り当てられている標本は複数存在する。IVPP V23704 は歯骨の29個の一連の歯である。LGP V002 は脊椎と尾椎・肩帯・前肢・骨盤を含む断片的な骨格である。LGP V003 は脊椎・仙椎・第1および第2尾椎・両腸骨を含むを含む部分的な骨格である。LGP V004 は小型個体の前方の頚椎・先方の脊椎・右の脛骨から構成される。LGP V005 は仙椎・骨盤・25個の前部および中部の一連の尾椎からなる。LGP V006 は頚椎・肩帯・前肢を含む。他にも発掘現場から出土した繋がっていない数多くの骨がリンウーロン・シェンキに割り当てられている[1]。
リンウーロンの化石は個体発生の段階が異なる7 - 10個体のもので、頭骨も発見されている。全体として、ほぼ全身の骨格が得られている[1]。
リンウーロンを他のディプロドクス上科から区別する固有派生形質には以下に挙げる特徴がある[1]。
頚椎の乳状突起の形態といった形質は、派生的なディクラエオサウルス科の状態と flagellicaudata に広がる祖先的状態の中間型に見える。背側から見て正方形の鼻先を持つ大半のディプロドクス上科とは異なり、リンウーロンの鼻先はU字型だった[1]。
リンウーロンは最古の新竜脚類の一つである。新竜脚類は1億6000万年前よりも以前の化石が発見されておらず、それゆえリンウーロンの発見により新竜脚類の化石記録は約1500万年遡ることになった。またリンウーロンは従来新竜脚類が分布しないとされていた中国から産出しており、その分布においても大きな発見であった[2][3]。徐星らの2018年の研究に基づく Flagellicaudata の単純化したクラドグラムを下に示す[1]。
Flagellicaudata |
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以下のクラドグラムは Gallina らの2019年の論文に基づき[4]、ディクラエオサウルス科の属の関係性を示す。
ディプロドクス上科 |
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従来、ディプロドクス上科はツルガイ海峡の存在ゆえに東アジアには生息しなかったと考えられており、世界中で東アジアのみにマメンチサウルス科が生息していたことの説明には、東アジアが他の大陸から孤立していたため独自に進化したとする仮説が用いられていた。しかし、リンウーロンの発見により前期ジュラ紀の東アジアにディプロドクス上科が生息していたことが示され、この古生物地理的想定に一石が投じられた[1]。記載論文の共著者であるフィリップ・マニオンは、これはパンゲア大陸が分断されるよりも前にリンウーロンまたはその祖先が分化してアジアに進出したか、あるいは大陸の分断が一時的なものに過ぎなかったことを意味すると説明した[2]。同じく共著者であるポール・アップチャーチは、中国から他の新竜脚類が産出していない理由を化石バイアスとして説明している[3]。