ロボットアニメ(和製英語:robot anime)とは、ロボットを中心的題材としたアニメーションのこと。物語性のある作品であれば主人公格に据えたものをいう。多くは「メカアニメ」と呼ばれる上位カテゴリに含まれ、カテゴリ内の中心的一分野を形成する[注 1]。
これを他と区別して語られるべきものとして捉えるのは20世紀後期後半の日本のアニメ(日本製アニメーション)から生まれてきた概念である。日本のアニメを中心に通用しているものの、明確に定義されてはいない。
メディアミックス作品の展開が多い関連分野でもこの概念は用いられており、その意味では「ロボットアニメ」のいう呼称は係る概念における最狭義と捉えるべきである。これを踏まえた広義の用語として「ロボットもの」がある。英語圏(英語圏のファンや関係者の間[注 2])では "mecha anime and manga" のジャンルに含まれる "mecha anime" の下位カテゴリとしての "robot anime" である。
ロボットアニメは登場するロボットの種類によって幾つか類型に分けられる。一般的にロボットアニメといえば、「ヒトを模していない自律型ロボット」「遠隔操作型ロボット」「搭乗型ロボット」のアニメを指す例が多いが、本節で述べるように「アンドロイド(ガイノイドも含む)」や「装着型ロボット」も広義的にはこの部類に該当する。
ここでは、ロボットアニメに主人公格で登場するロボットの類型を、日本での捉え方を中心にしながら、可能な限り外国での捉え方も交えて解説する。
何をもってロボットアニメとするか、あるいはそのアニメがロボットアニメか否かは見る側で基準や根拠がまちまちであり、ファン同士で意見が食い違うことがしばしばある。「アンドロイド」「装着型ロボット」も狭義的にはロボットアニメには含まれないので論題にされる。 「ロボット」は原初であるカレル・チャペックの『R.U.R.』においては、有機質からなる人造人間であったが、20世紀以後現在においてはもっぱら金属など無機質の機械からなるものをいう、定義の遷移が生じており、有機質・生命体のものや、あるいはゴーレムのように非科学的手段で稼働するものをロボットに含めうるかという議論も存在する。以下は具体例。
1970年前半は現在では「スーパーロボット系」などと呼ばれるジャンルのテレビアニメが生まれた時代である(初の作品がマジンガーZ)。魅力的かつ個性的な造形を持ち、通常兵器では到底及ばぬ強大な戦闘力を持つ巨大人型戦闘ロボットの存在を前提として、勧善懲悪と巨大メカ戦を基本にしながら今なお多くのファンを持つ作品群が数多く生まれた。そのほぼ全ての作品が玩具として商品展開されており、その中には『鋼鉄ジーグ』の様に視聴率には恵まれなくとも、玩具の販売成績の優秀さに支えられて放映が続いた作品も存在していた。
1974年に「合体・変形ロボット」作品の元祖と位置づけられる『ゲッターロボ』が製作される。これ以降数々の合体・変形ロボットアニメが製作されるようになった。
1976年になると長浜ロマンロボシリーズの第一作である『超電磁ロボ コン・バトラーV』が製作された。それまでのロボットアニメにみられる勧善懲悪から脱却し、敵側が地球を侵略する理由を強く描いて善悪の相対化を行い、それと同時に様々なドラマ性が追求され高年齢のファンを獲得することになる。
1979年の『機動戦士ガンダム』の出現を皮切りに、世界観に政治・軍事・組織論なども絡ませ複雑化する物語(『太陽の牙ダグラム』はガンダムとは逆に解放・独立派側からの視点で描かれている)や、物理学・機械工学・SF理論などにある程度準拠したリアリティのあるメカデザイン・設定や戦闘描写がなされた「リアルロボット系」と総称されるアニメ群が一代ムーブメントを巻き起こす。そして、このリアルロボット系作品もまた『超時空要塞マクロス』『装甲騎兵ボトムズ』など様々な方向性に分化し、それぞれに頂点といえる作品を経ながら、その席巻は1980年代中盤にかけて続いた。
この1970年代から1980年代にかけては、ロボットアニメブームと呼ばれるほど多数のロボットアニメ作品が製作された。視聴率も平均して高く、主な放送時間も夜7時から9時のプライムタイムであった。視聴者層の大半を占める子供たち向けの玩具(アニメに登場するロボットのプラモデルなど)の売り上げも好調であり、それらを販売する玩具メーカーがテレビアニメのスポンサーについた。
だが、ピークを過ぎてくると、作品の量的飽和や過剰なリアル志向への行き詰まり感、人間キャラによるバトル物の流行などに伴ってタイアップ玩具の市場の閉塞感が見え隠れする様になり、それらに反動するかの如く、1970年代のスーパーロボット系作品へのオマージュを盛り込みつつ美少女や超能力といった要素を持たせたOVA作品が1987年頃から立て続けに製作され、この流れは1990年代前半まで続いた。また、日常系ロボットアニメ、『ドラえもん』『Dr.スランプ アラレちゃん』のヒットもこの時代である。
1990年代でも玩具業界のタイアップによるロボットアニメの特徴を正統に受け継いだ作品は製作され続け、『勇者シリーズ』『エルドランシリーズ』『平成ガンダム』と呼ばれる一連の子供向け作品群が生まれた。また、テレビゲーム『ドラゴンクエスト』などのブームを受けて、『魔神英雄伝ワタル』といったファンタジー要素を持たせたものも多く現れた。
こうした状況下で『新世紀エヴァンゲリオン』が発表された。アニメ・漫画・特撮・SF・その他文芸作品など、過去作品のオマージュをふんだんに盛り込んでおり、リアルやスーパーといった分類ではくくりきれない個性を放つ作品となった。
しかし、1990年代後半には視聴率低下やテレビ局側の事情などが重なり、テレビ朝日系列が『勇者シリーズ』や『ガンダム』を手放すなど、陰りが見え始めていった。
2000年代に入る頃には全日枠のアニメが激減状態となり、一時期はTBS系夕方枠(MBS製作)が存在感を示したが基本的には深夜アニメでの放映が標準となった。巨大ロボットが登場する番組の内、全日枠で現在も長期的に放送を継続しているのは、アニメではなく特撮の『スーパー戦隊シリーズ』のみである。
高年齢層向けでもポストエヴァ系の作品が徐々に勢いを失うにつれ作品数の減少が続いた。2000年代後半には『コードギアス』や『天元突破グレンラガン』など新作のヒットや、『創聖のアクエリオン』などパチンコ業界とのメディアミックスの成功もあったものの、巨大ロボットアニメは全体的に衰退傾向を呈し、『ガンダム』『マクロス』『エヴァンゲリオン』をはじめとする20世紀から続くシリーズの続編が中心となった。
これは、家庭用ゲームやトレーディングカードゲームの普及などによる趣味の多様化によって、選択肢が増加した事を原因とする玩具業界全体の不振に伴うスポンサーの撤退、テレビ局と制作会社・玩具会社との軋轢などや、日本の総人口に占める子供の割合が低下したことによって、そこからさらに獲得できる客層の割合が減少したこと、そして現実の技術の発達や情勢の変化による従来の定番の陳腐化などが主な要因だった。
こうした経緯を受けて、テレビ放送されるロボットアニメのビジネスモデルは大きく変わった。企画段階から若年層や玩具会社を排除、立体商品は高年齢層を想定した設計のものに加えて、限定的な版権許諾型ビジネスで発売されるガレージキットなどに留まった。一方でDVDを販売する映像レーベルやメディアミックス系出版社などの販売元が企画の中核となり、既にロボットアニメに親しんでいる高年齢層向けのアニメとして製作しソフトの売り上げを主たる収入源と位置づける、新たなビジネスモデルに基づいた作品が作られるようになった。それら客層に合わせて過去のヒット作のリメイクや続編作品なども作られるようになっていった。
今日ではオリジナル・シリーズもの共に一定のヒット作が生まれつつも、上記の通り大人層を主流としたことによる主要客層の高齢化・固定化や定番構造をあまりにも多用し続けていることによる作品構造のマンネリ化といった問題は依然として抱えており、特に子供や若年層などの新規客層の乏しさが一層問題視されるようになっている。それでも現在は未だ数多くの作品が製作され続けているが、ロボットを単独のメインに据えずあくまで一構成要素に留める作品も作られる等ジャンルの拡散が進んでいる状況であり、各社が新しいロボットアニメの主流の模索を続けている。
等身大ロボットアニメでは、主要キャラクターとして登場するコンピューターゲーム(ビジュアルノベル)『To Heartシリーズ』が、そのヒットの結果複数回アニメ化され商業的に一定の成功を納めるなど、萌えキャラとして登場することが増えた。
地上波民放では全系列で放送例が見られるが、特に1980年代前半以前のフジテレビ系、20世紀のテレビ朝日・テレビ東京系、2000年代のTBS系などで多数放送されていた。
フジテレビは、歴史的にはエポックメーキングな作品である『鉄腕アトム』『鉄人28号』『タイムボカンシリーズ』『マジンガーZ』『ゲッターロボ』などを放送してきたが1980年代後半以降はレギュラー枠として巨大ロボットアニメを放送していない。
名古屋テレビの土曜夕方5時30分枠は1977年の『無敵超人ザンボット3』に始まり、1990年に移動するまで足掛け13年に渡り、数多くのロボットアニメを世に送り出した。
NHKでは玩具会社のCMが不可能であるため稀だが、巨大ロボットアニメを放送した例として『女神候補生』『時空冒険記ゼントリックス』などがある。
日本国内で製作されているロボットアニメは外国に輸出され、中には世界各国で放送されたものもある。地域によっては日本国内以上の人気を得たアニメもあり、1970〜80年代にかけて輸出された『UFOロボ グレンダイザー』(ヨーロッパでは「ゴルドラック」や「アトラス」などに改題されている)は、ヨーロッパ圏で高視聴率をキープした記録がある。1979年にフィリピンに輸出された『超電磁マシーン ボルテスV』は当時のマルコス政権打倒に貢献したとして、フィリピンで認知度100%の国民的アニメになっていると日本でも報道された。
アメリカでも『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』(1984年)、『アイアン・ジャイアント』(1999年)、『シン・バイオニックタイタン (英語版)』(2010年)、『ベイマックス』(2014年)などのロボットアニメが製作された。CGを多用した作品が多いのも特徴のひとつである。日本との合作も多く、そのうち『ロボテック』(1985年)は『超時空要塞マクロス』『超時空騎団サザンクロス』『機甲創世記モスピーダ』を、『ボルトロン』(1984年)は『百獣王ゴライオン』と『機甲艦隊ダイラガーXV』を1つの作品に繋げて輸出したもので、独自に展開した派生シリーズの中でリブートの『ヴォルトロン』(2016年)は日本でも公開された。
韓国においては『テコンV』(1976年)と呼ばれるスーパーロボットアニメを皮切りに、数々のロボットアニメが製作された。その中で『幻影闘士バストフレモン』(2001年)、日本との合作で『無限戦記ポトリス』(2003年)などは日本国内でも放送された。他にも変身自動車トボト、ハローカボトなどがある。
中国や台湾においても『星原戦記アストロプラン (中国語版)』(2010年)、『戦闘装甲鋼羽 (中国語版)』(2011年)、『超限猎兵凯能 (中国語版)』(2013年)、『重甲機神Baryon (中国語版)』(2018年)など数々のロボットアニメが製作されている。中には日本と中国が合作した『重神機パンドーラ』(2018年)、中国・香港・マカオ・台湾が合作した『黎明之神意 (中国語版)』(2014)のような作品もある。
ヨーロッパではオリジナルのロボットアニメこそ製作していないものの、1980年代にハンナ・バーベラ・プロダクションが製作した『マシンロボ』の北米展開版アニメなど、日本製作以外のロボットアニメを放送したことがある。