ローガンジョシュ

ローガンジョシュ
種類 カレー
フルコース メインディッシュ
発祥地 インド亜大陸
地域 カシミール
提供時温度 熱い状態で食べる
主な材料 羊肉ヤギ肉、アルカンナの根
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ローガンジョシュ (ウルドゥー語: روغن جوش‎、英語: rogan josh、または英語: roghan joshあるいは英語: roghan ghosht) は、ペルシアあるいはカシミール地方に起源を有する、を使ったスパイシーな香りのするカレー料理である[1]赤肉料理で、とくに伝統的レシピでは羊肉ヤギ肉を用いてつくられる。主にアルカネットの花か根と、カシミール唐辛子を使って色や味をつける。カシミール料理の代表的なものである。

語源

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名称の語源については諸説ある。「ローガン」(roughan) は、ペルシア語ウルドゥー語で澄んだバターオイルの一種であるギーあるいは油を意味する一方、「ジョシュ」(jušあるいはjosh) はもともと「煮る」を意味する動詞"jušidan"に由来する言葉で、シチューや蒸し煮を作ることを意味する[2]。この定義によると、ローガンジョシュは「ギーでシチューにする」という意味になる[3]

この料理名の語源についてはまた別の説もある。最初の部分はウルドゥー語で「茶色」か「赤色」を示す「ローガン」(roghan、ウルドゥー語: روغن[1]) あるいはカシミール語で「赤色」を示す「ローガン」(roghan[4]) であるとされる。後半は「肉」を意味する"gošt"("ghosht"とローマ字で書かれることもある)か、あるいは"juice"を意味する言葉で、おそらくは「赤い肉」か「赤い汁」を指すという説である[5][6]。"rogan josh"も"rogan ghosht"のこの料理を指す時に使われているので正確な語源は不明であり、もともとの名前がどちらだったかもはっきりとはわかっていない[5]

起源

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上から見たローガンジョシュ

ローガンジョシュはカシミール料理の定番で、カシミール式のコース料理であるワズワンのメイン料理のひとつである。この料理はもともと、ムガル帝国の人々によりカシミールに持ち込まれたものであるが、ムガル帝国の料理はもともとペルシア料理からの影響を受けていた。インドの平野部では夏の暑さが厳しかったため、ムガル帝国の人々は標高と緯度のおかげでもっと涼しい気候を有するカシミールを頻繁に訪れていた[2]

調理法

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ローガンジョシュは、にんにくしょうが、香りの強いスパイス(チョウジローリエカルダモンシナモンなど)で味付けしたグレイビーで煮込んだラムマトンの蒸し煮料理であり、レシピによってはタマネギヨーグルトも加える[7]。まず蒸し煮にした後、 パン生地でふたをしてゆっくり熱するインド特有の調理法で時間をかけて調理する[8]。特徴的な深みのある赤色は、伝統的にアルカネットの花か根を乾燥させたものを使用して出す[6]。カシミール唐辛子も使用する[9][10]。カシミール唐辛子はパプリカに近いマイルドな風味を有する[11]サフランが入ることもあり、とくにムスリムは好んで使う[10]

カシミールの料理においては、ヒンドゥー教徒とムスリムの間で調理法に相当な違いがある。ムスリムはプラーンと呼ばれる地元産のシャロットと、ケイトウの一種であるマヴァルの花びらを色づけに使う(この花は「体を冷やす」効果もあると言われている)[7]。ヒンドゥー教徒はこうした材料やにんにく、タマネギを避けているが、こくや風味のためにヨーグルトを加えることもある[7]フェンネルアサフェティダを加えることもある[12]

この料理はジャンムー・カシミール州のものであるが、とくにカシミール料理を専門としていないイギリスのカレー店でも定番である。グラスゴーのカレー店におけるドーサなどと同様、バングラデシュ料理を出すような店でも移民してきた料理人により吸収され、インド亜大陸の代表的な料理としてローガンジョシュが出てくることがある[13]

レシピの変化

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伝統的な調理法では乾燥唐辛子をまるごと用い、種を抜いて水につけ、細かくしてペースト状にしてから使うが、調味のため伝統的ではない簡単な方法としてカシミール唐辛子の粉(インド食材店で購入可能)を使ったり、パプリカパウダー(こちらを多めにする)とカイエンヌパウダーを混ぜたものを使うこともある(マドハール・ジャフリーのレシピではパプリカパウダー4に対してカイエンヌパウダー1の比で入れるようにとなっている)[14]。サンジーヴ・カプールのレストランで使っている新しいレシピでは、ブラックカルダモン、アニス、ローリエを使う[15]

西洋版のレシピは多くがトマトをソースに加えるよう指定している。とくに、かけて食べるだけの出来合いのソースは、トマトベースだと思われるくらいにトマトを使うのが普通である。トマトは伝統的なローガンジョシュに入っていない、あるいはそもそも伝統的なインド料理そのものに含まれていないので、入れるべきではないという者もいる[16]。しかしながら、ローガンジョシュをとくに肉とトマトが基本の料理として言及する者もいる[17]。一方、トマトが入っているものはカシミール料理ではなくパンジャーブのレシピだとする者もいる[18]

他の肉の使用

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インドでは、ヤギ肉よりもちゃんとしたラム肉のほうが入手しにくいため、しばしばマトンのかわりにヤギ肉でローガンジョシュを作ることがある。牛肉で作るものもあり、ブリスケットが好まれる[19]

脚注

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  1. ^ a b Magon, Harminder Singh (2016). My Epicurean Journey. Friesen. p. 152 
  2. ^ a b Collingham, Lizzie (2006-02-06). Curry: A Tale of Cooks and Conquerors. Oxford UP. p. 34. ISBN 9780199883813. https://books.google.com/books?id=Sr3GUyWe3O0C&pg=PA34 8 August 2013閲覧。 
  3. ^ From Bonbon to Cha-cha: The Oxford Dictionary of Foreign Words and Phrases, Oxford:OUP, 2009, p.297
  4. ^ Chapman, Pat (2009). India: Food and Cooking. New Holland. p. 124. ISBN 9781845376192 
  5. ^ a b Ayto, The Diner's Dictionary: Word Origins of Food and Drink, Oxford: OUP, 2012, p.309
  6. ^ a b Wahhab, Iqbal (2016). The Cinnamon Club Cookbook. Bloomsbury. p. 106 
  7. ^ a b c Panjabi, Camellia (1995). The Great Curries of India. Simon & Schuster. p. 54. ISBN 9780684803838. https://books.google.com/books?id=TYCFJMLZ_-4C&pg=PA54 8 August 2013閲覧。 
  8. ^ Singh (1973), p.58
  9. ^ 20 Indian cities and the food they are famous for” (英語). The Times of India (2019年11月12日). 2019年11月28日閲覧。
  10. ^ a b Tara Deshpande (2019年7月28日). “The truth about Rogan Josh” (英語). Free Press Journal. 2019年11月28日閲覧。
  11. ^ Sen, Colleen Taylor. (2004). Food culture in India. Westport, Conn.: Greenwood Press. p. 84. ISBN 0-313-32487-5. OCLC 55475094. https://www.worldcat.org/oclc/55475094 
  12. ^ リジー・コリンガム 著、東鄉えりか 訳『インドカレー伝』河出書房新社、東京、2016年。ISBN 978-4-309-46419-0OCLC 944427987https://www.worldcat.org/oclc/944427987 
  13. ^ Monroe, Jo (2005). Star of India: The Spicy Adventures of Curry. John Wiley & Sons. p. 131. ISBN 9780470091883. https://books.google.com/books?id=NC42BaKAwXAC&pg=PA131 8 August 2013閲覧。 
  14. ^ Recipe Source: Rogan Josh - Madhur Jaffrey
  15. ^ Kapoor, Sanjeev (2011). How to Cook Indian: More Than 500 Classic Recipes for the Modern Kitchen. Stewart, Tabori & Chang. p. 39. ISBN 9781613121351. https://books.google.com/books?id=8BXRu6xv-eYC&pg=PA39-IA1 8 August 2013閲覧。 
  16. ^ Singh, Dharamjit (1973). Indian Cookery. Penguin. p. 21,58. ISBN 978-0140461411. https://archive.org/details/indiancookery00sing 
  17. ^ Holkar, Shivaji Rao (1975). Cooking of the Maharajas. Viking. p. 225 
  18. ^ Bhangal, Jasprit (2013). Indian Cooking with Four Ingredients. Troubador. p. 101. ISBN 9781780884868 
  19. ^ Owen, Sri (1994). The Rice Book: The Definitive Book on Rice, with Hundreds of Exotic Recipes from Around the World. St. Martin's Press. p. 275. ISBN 9780312303396. https://books.google.com/books?id=KqUFc4p2OA4C&pg=PA275 8 August 2013閲覧。