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Mendelssohn Bartholdy:Violinkonzert e-Moll - 五明カレン(Vn)、ピエタリ・インキネン指揮ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団による演奏。ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団公式YouTube。 | |
Mendelssohn:Violinkonzert e-Moll op.64 - ローラント・グロイター(Vn)、アラン・ギルバート指揮NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団による演奏。NDR Klassik公式YouTube。 | |
Mendelssohn - Violin_Concerto_in_E minor,_Op.64 - クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団による演奏《ソリストを務めたフランク=ミヒャエル・エルベン(Frank-Michael Erben)は同楽団コンサートマスター》。EuroArts公式YouTube。 |
ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64, MWV O 14 は、フェリックス・メンデルスゾーンが1844年に作曲したヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲である。
明るい華やかさ、幸福感と憂愁の両面を併せもち、穏やかな情緒とバランスのとれた形式、そして何より美しい旋律でメンデルスゾーンのみならず、ドイツ・ロマン派音楽を代表する名作であり、本作品はベートーヴェンの作品61やブラームスの作品77と並んで「3大ヴァイオリン協奏曲」と称される。また、単に「メンデルスゾーンのコンチェルト(協奏曲)」と言う場合、本作品以外の協奏曲を指すことがほとんどないため、日本の音楽愛好家はこれを短縮した『メンコン』の愛称で本作品を呼び習わしている。
本作について最初に言及されているのは、1838年、メンデルスゾーンがライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の常任指揮者の地位にあった時、そのコンサート・マスターであったフェルディナント・ダヴィッドに送った手紙で、「翌年の冬までにはホ短調の協奏曲を贈る」との内容が書かれている。しかし、実際に翌年には完成せず、演奏上の技術的な助言をダヴィッドから得ながら作曲は進められ、結局この作品が完成したのは、最初の手紙から6年後の1844年9月16日のことであった。
メンデルスゾーンは本作品以前にもう1曲、『ヴァイオリン協奏曲 ニ短調』(MWV O 3)を作曲しているが、こちらは1951年にヴァイオリニストのユーディ・メニューインが再発見するまで永い間忘れられており、本作品とは知名度に大きな差がある。また、それぞれ2曲ずつあるピアノ協奏曲(第1番と第2番)や2台のピアノのための協奏曲(ホ長調と変イ長調)、『ヴァイオリンとピアノのための協奏曲 ニ短調』(MWV O 4)など、メンデルスゾーンのその他の協奏曲は、いずれも本作品のような知名度はない。
初演は1845年3月13日にライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会にて行われ、フェルディナント・ダヴィッドのソロヴァイオリン、指揮は副指揮者のニルス・ゲーゼ(当初はメンデルスゾーン自身が指揮を執る予定であったが、体調を崩していたため初演の際にはフランクフルトに滞在していた)が行った。
メンデルスゾーンは1842年から44年ごろにかけて、ホ短調のピアノ協奏曲の作曲を試みたが、2楽章までのピアノスコアと、第1楽章冒頭のオーケストレーションに手を染めたところで中断してしまう。この曲は本作と調性が同じであり、類似点が多く指摘されていることから、メンデルスゾーンは同曲作曲の途中でヴァイオリン協奏曲に移行したのではないかと考えられている。アメリカのメンデルスゾーン研究家であるR. ラリー・トッド(R. Larry Todd)はこの考えに基づき、第1・2楽章のオーケストレーションと共に本作の第3楽章を転用した補筆版を発表しており、こちらはCDもリリースされている。
独奏ヴァイオリン、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦五部。
全3楽章、演奏時間は約30分。全ての楽章を中断なく続けて演奏するよう指示されている[2]が、これは後年シベリウスの交響曲に見られるような有機的なつながりによるものではなく、各楽章の楽想はむしろ独立性が強い。したがって、連続して演奏するようにという指定は、作品の持つ流動感や漸進性を中断させないための配慮であると考えられている[注 1]。これは『ピアノ協奏曲第1番 ト短調』(作品25, MWV O 7)にも応用されている。
また、それまでは奏者の自由に任されることが多かったカデンツァ部分も全て作曲し、音を書き込んでいる。これはベートーヴェンの『ピアノ協奏曲第5番《皇帝》』と同様、曲の統一性のためである。
また、3大ヴァイオリン協奏曲の中では演奏時間が最も短く、オーケストラが活躍する場面が多くない一方で、独奏ヴァイオリンが休みなく弾きっぱなしになっている。
作曲家の諸井誠は、本作を収録したLP「これがメンデルスゾーンだ!」(1974年、CBSソニー)の解説で、高名な海外ヴァイオリニスト(名は伏せてある)が来日して学生たちと「史上最高のヴァイオリン協奏曲は?」の話題になった際、ベートーヴェンを「最高の音楽だが最高の協奏曲ではない」、ブラームスを「ヴァイオリン独奏付の交響曲でしかない」、チャイコフスキーを「メンデルスゾーンに酷似しすぎている」と退けたあげくに同曲を押したエピソードを紹介、独奏パートがとりわけ奏者から愛されていることを示唆している。