京都・ハーバード方式

京都・ハーバード方式(きょうとハーバードほうしき、Harvard-Kyoto Convention, KHと略す)とは、ASCII文字のみでデーヴァナーガリー翻字する方法の一つ。ASCIIしか使えないコンピューターでサンスクリットを処理するために、IAST翻字のうち、ASCIIにない文字を大文字などに置き換えたもので、IASTとの相互変換が機械的に行える。

概要

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パソコンで直接デーヴァナーガリーを扱えなかった時代、サンスクリット文献などを記述する際に利用されていた。

ミヒャエル・ヴィツェル英語版によると、1984年にライデン大学の Andrea van Arkel によって作られた方式が元になっており、その後1990年に京都大学で使われたという[1]

Unicodeの普及によってその必要性が少なくなった現在も、デーヴァナーガリーを入力するときの入力方式などに利用される[2]

一覧

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翻字方式にはいくつかの変種があるが、以下に表で一例を示す。IAST と比べると、

  • マクロン付き母音文字は、大文字で表す方式と、同じ母音文字を二つ重ねて表す方式がある。
  • 下に点のある文字は、原則として大文字で表す。
  • 例外として、京都・ハーバード方式での大文字の有声子音文字は、同じ調音部位の鼻音を表す。
  • śaはzaで表す。

のような対応がある。

母音
KH IAST デーヴァナーガリー
a a
A, aa ā
i i
I, ii ī
u u
U, uu ū
R
q, RR
L, lR
E, LL, lRR
e e
ai ai
o o
au au
aM aṃ अं
aH aḥ अः
子音
KH IAST デーヴァナーガリー
ka ka
kha kha
ga ga
gha gha
Ga ṅa
ca ca
cha cha
ja ja
jha jha
Ja ña
Ta ṭa
Tha ṭha
Da ḍa
Dha ḍha
Na ṇa
ta ta
tha tha
da da
dha dha
na na
pa pa
pha pha
ba ba
bha bha
ma ma
ya ya
ra ra
la la
va va
za śa
Sa ṣa
sa sa
ha ha

問題点

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京都・ハーバード方式はサンスクリットに特化されており、同じデーヴァナーガリーを使用するヒンディー語ネパール語マラータ語などについて考慮されていない。この問題を解決したものに ITRANS がある。

大文字を特殊な目的に用いるので、もともと IAST で書いてあった場合、京都・ハーバード方式に変換すると、原文の大文字・小文字情報が脱落してしまう。この問題を解決するため、小文字のみを使用して、記号を前置させる上村勝彦方式、相場徹方式[3]、岡野潔方式[4]などが作られた。

Ga, Ja, za などは原音からかけはなれているため、方式をよく知らない人には誤読されやすい。

関連項目

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脚注

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  1. ^ Kyoto-Harvard transliteration”. Indology mailing list (2009年7月12日). 2015年9月5日閲覧。
  2. ^ たとえば MW Advanced Search, 2008”. Cologne Digital Sanskrit Dictionaries. 2015年9月5日閲覧。
  3. ^ サンスクリット・チベット語の転写方法の一覧”. 相場 徹 (2001年5月30日). 2015年9月5日閲覧。
  4. ^ 岡野潔「序文 ならびにサンスクリットの転写方式についての説明」『インド仏教文学研究史』(電子版)、1998年http://gdgdgd.g.dgdg.jp/introduction.html