劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY | |
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監督 | 阿部記之 |
脚本 | 十川誠志 |
原作 | 久保帯人 |
製作 |
深沢幹彦 萩野賢 |
出演者 |
森田成一 折笠富美子 斎藤千和 江原正士 |
音楽 | 鷺巣詩郎 |
主題歌 | Aqua Timez「千の夜をこえて」 |
撮影 | 福島敏行 |
編集 |
植松淳一 奥野英俊 |
制作会社 | studioぴえろ |
製作会社 | 劇場版BLEACH製作委員会 |
配給 | 東宝 |
公開 |
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上映時間 | 93分[1] |
製作国 |
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言語 | 日本語 |
興行収入 | 6.6億円[2] |
次作 | 劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸 |
『劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY』(げきじょうばんブリーチ メモリーズオブノーバディ)は、2006年12月16日に公開された日本の長編アニメーション映画[1]。久保帯人による漫画作品『BLEACH』を原作とするテレビアニメシリーズの劇場版アニメーション第1作[3]。阿部記之が監督を務め、studioぴえろが制作した[1]。
アメリカ合衆国では2008年6月11日から12日まで限定劇場公開された[3]。
黒崎一護とオリジナルキャラクター・茜雫の交流を軸に描いた物語が展開される[4]。
空座町に欠魂と呼ばれる謎の霊生物が大量発生するという異変が起き、死神代行・黒崎一護は朽木ルキアとともに現場へ向かうが、そこに突如として死神の少女・茜雫が現れる。所属をはぐらかし、自らの素性を明かそうとしない茜雫に振り回され、一護は町中を走りまわる羽目になる[4]。同じころ、尸魂界(ソウル・ソサエティ)でも上空に空座町の風景が浮かび上がるという異変が発生する[4]。世界崩壊の前触れとされるこれらの現象は、現世と尸魂界の狭間に広がる断界の中に出現した新たな空間・叫谷が急速に拡張を続け、ふたつの世界に密着したことで起きたものであった。浦原喜助は、一連の現象を起こした首謀者は、輪廻を外れた魂魄から抜け落ちた記憶の集合体・思念珠を探しているのではないかと推測し、自身が敵の素性について調べている間、一護に思念珠を探すよう要請する。あてもなく思念珠を探す一護に呆れた茜雫は、一護の手伝いをすると約束するが、その矢先、厳龍率いる闇の一族・ダークワンが茜雫を狙って現世に放たれる。安全のため黒崎家に泊まることになった茜雫は、楽しそうな一護の家族を見て、自らの家族のことも語ろうとするが、さまざまな生前の記憶が入り混ざり混乱をきたす。
翌日、思念珠を探していた一護と茜雫は、車で事故に遭い亡くなった魂魄の少年と出会い、事故で離ればなれになったという父親を探して町を歩きまわる。再会を果たした少年と父親は、茜雫のまわりに集まっているたくさんの魂魄によってここを見つけることができたといい、その魂魄は茜雫が呼んでくれたのだと礼を述べるが、茜雫は親子の言葉の意味を理解できず動揺する。そのようななか、一護と茜雫の近くで穿界門が開かれ、中央四十六室からの厳令を受けた死神たちが茜雫の身柄を拘束するために派遣されてくる。尸魂界は、茜雫こそが現世に戻った思念珠であり、厳龍の目的を思念珠の力を利用した世界破壊であると結論づけたのであった。尸魂界の決定に一護は反発してみせるが、そこにふたたびダークワンが現れ、茜雫は叫谷へと連れ去られてしまう。
かつて尸魂界の覇権争いに敗れ、尸魂界を追われた一族の末裔である厳龍は、宿願とする世界崩壊を果たすため、現世と尸魂界を思念珠の力で引き寄せ衝突させることを企てていた。茜雫は欠魂の依り代として叫谷の中央に備え付けられ、やがて叫谷との融合を始める。涅マユリは、隊首会の席で思念珠と欠魂の性質について説き、これを利用したダークワンの目論みにより、世界崩壊まであと1時間しかないことを告げる。隊首会に乗り込んだルキアは、茜雫を救うため叫谷に向かった一護への援軍を求めるが、山本総隊長はその要請を一蹴し、鬼道砲により叫谷と密着している接地面を空間ごと消滅させることを決断する。叫谷でダークワンと交戦していた一護のもとに、ルキアをはじめとする護廷十三隊の死神たちが命令を侵し集結する[5]。各所で繰り広げられる戦闘の末にダークワンは殲滅され、厳龍との激闘を制した一護の手によって茜雫は奪還される。鬼道砲が発射され、叫谷が崩壊を始めるなか、一護たちは現世への帰還を果たす。瀞霊廷は歓喜に湧くが、尸魂界と現世の間には引力が生じており、すでに融合を始めていた。茜雫は一護と世界を守るため、断界面で自らの近くにいる欠魂たちのエネルギーを爆発させ、ふたつの世界の融合を回避させる。
力を使い果たした茜雫は、自分が現世で生きていたことを確かめたいと願い、一護に背負われ生前の記憶に残る墓地を訪れる。墓碑に茜雫という名前は刻まれていなかったが、一護から「お前はこの街で生きてきた、家族もちゃんといた」と伝えられると、安心し、一護にまた会えることを確かめ、静かに消えていった。そこにルキアが近づき「もうすぐ、欠魂のエネルギーが尽きる。そして、茜雫についてのすべては、我々の記憶から消えるであろう。」と告げる。
日常に帰った一護のもとへ、突風とともにどこからか赤いリボンが運ばれてくる。それを掴んだ一護の前を、茜雫によく似た少女が髪をなびかせて走り抜けていく。一護はしばらくリボンを見つめ、ふたたび歩き出す。
監督の阿部記之は、サブタイトル(「誰のものでもない記憶[21]」)に込められた意味と作品のテーマについて以下のように語っている。
その人が経験したこととか出会った人たちというのは、それこそ誰のものでもなく、その人がその人であるためのとても大切な記憶で、その人が今まで生きてきた証しでもあると思います。一概には言えませんが、もしもそれがなくなってしまったらやはり悲しいことではないかと思いますので、いろんな人が、今生きている瞬間のその記憶をずっと大切にしてくれればという思いがあります。 — 阿部記之[21]
また、阿部は本作の制作に際し、永井豪の短編作品『真夜中の戦士』に描かれた「『自分は本当は何者なのか』『そもそも自分は人間なのか』という疑問や不安というテーマ」を参考にしたと語っている[22]。
原作者の久保帯人は、茜雫・巌龍・欠魂などのオリジナルキャラクターのデザインやネーミング、設定類のネーミングを担当した[23]。ぴえろからシナリオを受け取った際、オリジナルキャラクターのデザイン依頼を受けた久保であったが、シナリオのチェックを進めるうちにアイデアが湧き、設定類のネーミングも手掛けることになったという[15]。ネーミングに関しては「『BLEACH』らしい名前を意識して変えさせてもらったものが多い」と語っており、叫谷をその一例として挙げている[19]。
久保は当時、作業時間が1週間しか作れなかったため、できる限りの要望を書き出すことに苦労したと語っている[15]。また、シナリオ面でも久保の提案によってキーアイテムの変更などがなされた[24]。
登場人物が使用する武器や戦い方などの演出方法に関しては、劇場の画面の大きさや迫力のある音響効果に合わせてスケールの大きなものにすることが意識された[21]。また、阿部は「登場人物たちがお互いに関わり合うことで何かに気付き、その気持ちに変化が起こっていく様子や、弱いものを利用して野望を達成しようとする敵に対する怒りなどの感情表現」にも注力したと語っている[21]。
本作の制作はテレビシリーズの制作と並行して進められたこともあり、人手不足を補うために制作スタッフの増強が行われた[21]。プロデューサーの萩野賢は、美形が多く似せるのが難しいキャラクターの特徴を、初参加のスタッフは短い時間の中でつかまなければならず、大変だったと思うと振り返っている[21]。
作中に登場する町は東京都八王子市がモデルとなっており、制作にあたってロケハンが行われた[25]。南大沢駅の駅前や周辺のショッピングモールが再現されている[26]。
音楽は鷺巣詩郎が担当した[6]。テレビシリーズと同様に、レコーディングは鷺巣が音楽制作の拠点とするロンドン・パリ・東京のスタジオで行われたが、本作では特にロンドンの比重が高かったという[27][注 1]。ロンドンでのレコーディングには、ヴァイオリニストのギャヴィン・ライト率いるロンドン・セッション・オーケストラ (Gavyn WRIGHT and London Session Orshestra) が参加した[27]。鷺巣はオリジナル・サウンドトラックのセルフライナーノーツにおいて、ソプラノ・シンガーのキャサリン・ボット (CatherineBOTT) の参加を特筆すべき事項のひとつに挙げており、「この素晴らしいソプラノ・シンガーのパフォーマンスは今回の劇場版に、ギャヴィンのオーケストラとともに『このうえない輝き』を与えてくれた」と賛辞の言葉を残している[28]。
本作にはゲスト声優としてお笑いトリオの安田大サーカスとタレントの森下千里が出演した[21]。萩野によると、安田大サーカスの起用は小さな子供にも客層を広げることを目的としたものであった[21]。
2006年12月16日より有楽町スバル座ほかにて公開された[29]。興行通信社の調べによると、公開2日間の興行収入は約1億4,200万円を記録し、国内映画ランキング(全国週末興行成績)において初登場5位にランクインした[29]。キネマ旬報社の調べによると、最終の興行収入は6億6,000万円となった[2]。
アメリカ合衆国で『BLEACH』の作品展開を行うビズメディアは、ナショナル・シネメディアグループのNCM FATHOMの配給により、2008年6月11日・12日に全米の300館を超える劇場にて本作の上映会を開催した[3]。上映会では阿部記之、萩野賢、工藤昌史のインタビューも紹介された[3]。「アニメ!アニメ!」はこの上映会について、「作品の高い人気と好調なビジネス展開のなかで行われる新作映画のプロモーションの一環とみられる」とし、「通常の劇場公開というよりも、全国規模のファン向けイベントの色彩が強い。また映画は今後発売するDVDのプロモーションと考えていいだろう。」と分析した[3]。また、同年7月には、同国のサンディエゴ市内にて本作の特別上映会が開催された[30]。上映会のオープニングには、サンディエゴ・コミコンにゲスト参加するため同市内を訪れていた久保帯人が登壇した[30]。
DVDの完全生産限定版は発売初週に20,000枚、通常版は19,000枚の売上を記録し、オリコンDVD総合部門ランキングにて1位と2位を独占した[31]。
アニメ・エキスポを運営する日本アニメーション振興会 (The Society for the Promotion of Japanese Animation) が発表した「2009 SPJA Industry Awards」では、本作がBest Feature Filmにノミネートされた[32]。また、本作に登場する朽木ルキアがBest Female Characterに、英語吹き替え版でルキア役を演じたミシェル・ラフがBest Voice Actress (English) にそれぞれ選出された[33]。
2007年9月5日にアニプレックスから、DVDが完全生産限定版と通常版の2形態で発売された。完全生産限定版には、本編ディスクに加え、キャストによる映像付き本編コメンタリーを収録した特典ディスク1、完成披露試写舞台挨拶映像や劇場用トレーラーなどを収録した特典ディスク2が同梱された。また、工藤昌志による描き下ろしジャケット(デジパック仕様)、ブックレット、19枚のピンナップセットも付属された[35]。
2022年12月14日にはアニプレックスからBlu-ray Discが発売された[36]。
発売日 | 規格品番 | 出典 | ||
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DVD完全生産限定版 | DVD通常版 | BD通常版 | ||
2007年9月5日 | ANZB-2181 | ANSB-2181 | [35] | |
2022年12月14日 | ANSX-2181 | [36] |
『BLEACH THE MOVIE MEMORIES OF NOBODY ORIGINAL SOUNDTRACK』 | ||||
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劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY の サウンドトラック | ||||
リリース | ||||
録音 |
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ジャンル | サウンドトラック | |||
時間 | ||||
レーベル | アニプレックス(SVWC-7420) | |||
劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY アルバム 年表 | ||||
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EANコード | ||||
EAN 4534530015921 |
本作のオリジナル・サウンドトラック。2006年12月13日にアニプレックスから発売された[37]。各楽曲の作曲はテレビシリーズに引き続き鷺巣詩郎が手掛けている[37]。初回特典として工藤昌史による「描き下ろしオリジナル・ステッカー」が封入された[37]。
出典:[38]全作曲・編曲: 鷺巣詩郎。 | ||
# | タイトル | 時間 |
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1. | 「State of Emergency」 | |
2. | 「Rush to the Scene」 | |
3. | 「Number One (Versione Filmologia)」 | |
4. | 「Always Be With Me In Mind」 | |
5. | 「Eerie Blank」 | |
6. | 「Into the Storm」 | |
7. | 「Senna」 | |
8. | 「Shadows Close in」 | |
9. | 「Perishing One」 | |
10. | 「Blast!」 | |
11. | 「Will Save You」 | |
12. | 「Turn The Tables」 | |
13. | 「Dark One」 | |
14. | 「Nothing Anymore」 | |
15. | 「Ceremony Commences」 | |
16. | 「Number One (Malicious Gravy MC)」 | |
17. | 「Come to Lend a Hand」 | |
18. | 「Frenzied Battle」 | |
19. | 「Fight to the Death」 | |
20. | 「Tables Have Turned」 | |
21. | 「Showdown」 | |
22. | 「Climax and Annihilation of the World」 | |
23. | 「Into The Fire」 | |
24. | 「Always Be With Me In Mind (Instrumental) (Bonus Tracks)」 | |
25. | 「Into The Fire (Guitar Version) (Bonus Tracks)」 | |
合計時間: |
本作の公開に伴い、2006年11月4日に池袋サンシャインシティ噴水広場にてラジオ番組『BLEACH “B” STATION』の初となる公開録音イベントが開催された[42]。
2006年12月3日にニッショーホールにて完成披露試写会が行われ、阿部記之(監督)、久保帯人(原作)、森田成一(黒崎一護 役)、折笠富美子(朽木ルキア 役)、安田大サーカス(ゲスト声優)、森下千里(ゲスト声優)が上映前の舞台挨拶に登壇した[7]。また、スペシャルゲストとして登場したAqua Timezによるシークレットライブが行われ、本作の主題歌「千の夜をこえて」が演奏された[7]。
2006年12月9日、10日に北海道・ノルベサ内イベントスペースにて「劇場版「BLEACH」公開記念 BLEACHフェスタinノルベサ」が開催された[42]。9日には森田成一と斎藤千和(茜雫 役)によるトークショーが実施された[42]。
2006年12月9日から2007年1月9日まで、池袋・サンシャイン60にて「MEMORIES OF EVERYBORDY'S FESTA IN 池袋サンシャイン60展望台」が開催された[5]。会場では映画のパネル展やアニメイト池袋本店と連動したグッズ販売が実施された[5]。アニメイト池袋本店では、2006年12月9日から12月24日まで「MEMORIES OF EVERYBORDY'S FESTA IN アニメイト池袋」が開催された[42]。会場ではアニメ設定などが展示されたほか、グッズ販売が実施された[42]。
映画の公開に先立ち、2006年12月10日に特別番組『劇場版BLEACH公開記念!「BLEACH攻略ナビ!!」』がテレビ東京にて放送された[45]。同番組には安田大サーカスと森下千里が出演した[45]。また、同月11日(10日深夜)、18日(17日深夜)にはテレビシリーズからセレクトした6話を2週連続で一挙放送する『劇場版BLEACH公開記念!「BLEACH NIGHT 決戦前夜」』がテレビ東京にて放送された[45]。同番組にはAqua Timezと俳優の栗山千明がゲスト出演した[46][47]。
2007年12月24日、月曜朝9時よりテレビ東京にて放送された[48]。