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動物の性行動(どうぶつのせいこうどう)には同じ種のあいだでさえ様々な形態がある。研究者は一夫一婦あるいは多妻、種を越えた交尾、物体または場所による性的覚醒、強迫または強制によると思われる交尾、死んだ個体との交尾、同性愛的・異性愛的・両性愛的行動、状況に応じた性行動などを観察してきた。関連する研究は間性およびトランスジェンダーの動物のように肉体の性別および行動のジェンダーにおける多様性を示している。
動物の性に関する研究(とくに霊長類の性研究)は急速に発達した分野である。以前は人間および一握りの種だけが生殖とは関係のない性行為をおこない、動物の性は本能的であり、視覚や嗅覚への「適当な」刺激に反応しているだけだと信じられていた。
しかし、現在では次のようなことがわかっている。
そして、500の種では同性愛的行動も観察されている。
社会生物学および行動生態学では、配偶システムという用語は動物の社会が性行動に関してどのような構造になっているのかを記述するのに用いられている。配偶システムは、いかなる状況のもとで、どの雄がどの雌とつがいになるのかを明示する。
1体のメス | 複数体のメス | |
---|---|---|
1体のオス | 一夫一妻、単婚[2] | 一夫多妻[3] |
複数体のオス | 多夫一妻([4] | 乱婚[5] |
動物について一般に認識されている配偶システムは次の通りである。
多くの種で、メスとオスの性的行動は異なる。よくある場合として、交尾開始に際して、オスはメスよりも積極的であり、オスは視覚的な性的装飾を持つ(例:キジにおける色鮮やかな羽)。これは卵に比して精子が小さく、生産に際してコストを要さないことを含む異型配偶の結果だと考えられている。この生理学的コストの差は、オスが(他の競争相手から守れる)交尾相手の数を生殖戦略上重視し、メスが交尾相手の遺伝子の質を生殖戦略上重視する、というベイトマンの原理として知られている[6]。多くのメスは卵へのコストに加えて子育て(parental care)を行う。このため、メスは潜在的な繁殖成功(子育てにコストを費やし、子の生存可能性を高め孫世代の数を増やすこと)を重視する。タツノオトシゴやチドリ目のレンカク科鳥類に見られるようなオスがより生殖的コストを費やす場合は、上記の役割が逆転し、メスがオスよりも攻撃的かつ明瞭な色の体色を持つようになる。
ミミズなど両性具有の動物においては、子育てのコストが両親に均一に分配される。また特定の種のプラナリア(両性具有)においては、生殖行動がペニスフェンシングの形態を取る。つまりペニスフェンシングによる交尾では、最初に他方の体をペニスで貫いた個体がオスとなり、貫かれた方の個体がメスとなる。このため、貫かれた方が生殖的コストの多くを負うことになる。特徴的な行動を持つ動物としてナメクジの1種であるバナナナメクジが挙げられる。このナメクジは交尾後に時々、apophallationと呼ばれる精子競争行動の類型として、交尾相手のペニスを噛むことが知られている[7]。仮説としては、これらのナメクジはオスの生殖機能喪失を補う形で、本来オスとしての生殖機能に向けられる余剰エネルギーをメスとしての生殖機能へ用いる、という説明がある[8]。マダラコウラナメクジにおいては、コスト共有として特徴的なディスプレイ行動を行う。このディスプレイ行動においては、交尾個体同士が粘液を木などから放出して地上から高い位置につり下がり、互いが卵を維持する役目から逃れられないようにするという物である[9]。
多くの種は、子の誕生から育成までを理想的な時期に行う目的で、特定の交尾期を持つ。サンゴ・ウニ・貝類といった移動能力が限られかつ体外受精を行う海洋生物においては、精子・卵といった接合子を海中へ放出する行動が、人間の眼から観察し得る唯一の性行動となる。
基礎生産量が継続して高い地域では、年中を通じて連続した繁殖期を持つ種も存在する。この例は多くの熱帯・亜熱帯生息の霊長類に観られる。また環境が繁殖に好ましいかどうかを考慮する日和見繁殖型の動物の一部は、時間以外の要因を考慮して繁殖する。例えばイスカでは、食料が豊富な時に繁殖するが、夏に繁殖能力の活性化が起こり、秋頃に繁殖期が終わるというパターンが観られた[10]。
繁殖期は多くの場合、群れなどの構造の変化、あるいは個体間でのなわばりの変化など行動の変化に関連し、繁殖期が年1回の種(例:オオカミ[11][12])や、2回(例:イヌ[12])、それ以上の種(例:ウマ)が存在する。