図書館情報専門家協会 (イギリス)

図書館情報専門家協会
CILIP
設立2002年 (22年前) (2002)
1877年(Library Association)
1958年(Institute of Information Scientists)
所長Paul Corney
代表取締役Nick Poole
職員43名[1]
予算£3.900万[1]
会員数9,337名 (2019年現在)[2]
所在地イギリスの旗 イギリス ロンドン WC1
ウェブサイト公式ウェブサイト

図書館情報専門家協会: Chartered Institute of Library and Information Professionals, 頭字語: CILIP, 発音[ˈsɪlɪp] SIL-ip シリップ)はイギリス図書館員、情報専門家(英語)や知識マネージャーを対象とする職能団体[3]で、設立は2002年[4]。合併前の前身は旧図書館協会(LA、LAUK)と旧情報科学者協会(IIS)である[5]。2017年のブランド化以前の旧称は王立図書館情報専門家研究所(英: Chartered Institute of Library and Information Professionals)。

#CILIPスコットランド(英: CILIP in Scotland、頭字語: CILIPS)はスコットランドの独立した運営体で、CILIPとサービス水準合意を取り交わし提携したサービスを提供する。

当協会は2020年目標を「情報と図書館技能ならびに専門的価値観を民主的で平等な社会の繁栄の中心に置く」とした。


沿革

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当協会は2002年、図書館協会(略称LAまたはLAUK)と情報科学者協会(IIS=1958年1月23日設立)[6][7]を統合して設立された[4]。前者は1877年設立、初の国際図書館員会議[8][12]の議決を受けており、1898年に勅許状を授与された組織であった[13][14][15]

図書館協会の初代会長はジョン・ウィンター・ジョーンズ John Winter Jonesが務め、歴代会長にリチャード・ガーネット(1893年生 Richard Garnett)、フレデリック・G・ケニオン(1910年生 Frederic G. Kenyon)、 W・C・バーウィック・セイヤーズ(1938年生 W. C. Berwick Sayers)、ライオネル・マッコルビン(1952年生 Lionel McColvin)、ダグラス・ジョン・フォスケット(1976年生 Douglas John Foskett)の名がある[16]。当協会は1927年に創設50周年を祝い、ヨーロッパ14ヵ国とアメリカの図書館協会は国際図書館連盟設立の地エジンバラで50周年を祝う決議に署名した。

2002年の統合時、CILIPの会員数は推定およそ2万3千人[17]、初代会長シェイラ・コロール Sheila_Corrall[18]から2003年に会長職を継いだのは、マーガレット・ワトソン Margaret Watson である[19]


説明

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ロンドンにあるCILIP本部

ロンドンのリッジマウント通り Ridgmount_Street[20]にある当協会の本部所在地は、1965年に建てられた旧図書館協会本部を継承した[21]

CILIPはイギリスの公益団体英語版である[22]

活動

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会報『Information Professional』創刊号(2017年11月)。表紙の人物は大英図書館ロリー・キーティング Roly_Keating

当協会の前身の機関は会報『Library Association Record [23]』(1899年 - 2002年)、後継の『Library&Information Update』(2002年 - 2017年 [24])を出しており、統合後は2017年に月刊機関誌『Information Professional』[25]を創刊、ニュースやインタビュー、分析を提供してきた。また採用Webサイト『Lisjobnet』の発行元であり、ファセット出版(Facet Publishing)名義で専門書を出版する。

例年、会員および非会員を対象とした年次会議を主催し、過去の基調講演はカーラ・ヘイデン博士(アメリカ議会図書館司書)、ルチアーノ・フロリディ教授、ナイジェル・シャドボルト卿(英語)が登壇した[要出典]

協会の活動趣旨として図書館員や情報専門家の仕事の認知度向上を期し、普及キャンペーンや広報活動を率いたり賞や表彰制度を設け、最善慣行を推進するよう努めている。キャンペーンは図書館サービスを提供する地方自治体の法定義務を公表する「My Library By Right」[26]2017年イギリス総選挙期間の質の高い情報発信を擁護した「Facts Matter [27]」の他に、毎年恒例の図書館週間運動[28]および表彰制度「Libraries Change Lives Award」(仮訳:「図書館は人々の生活を変える」大賞)[29][30][31]を実施する。

児童書分野のカーネギー賞ケイト・グリーナウェイ賞を授与し、両賞に関わる「アムネスティCILIPオナー表彰」は人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルと提携したものである。ジェイソン・ファラダン賞 (英語)やトニー・ケント・ストリクス賞を選考・授与するUKeiG(英語)を含め、傘下の特別利益団体も独自の賞を設けている。

提携関係にある諸団体には、たとえば#稀覯本蒐集(Book_collecting)や刑務所図書館[32]専門、CILIPと同様の会員数を擁する「社会変革情報」Information for Social Change、「全国購入グループ」[33]、「索引士協会」(英語)などがある[34]。また当協会の沿革を見ると、図書館協会となる以前は1927年の国際図書館連盟(IFLA)の設立組織の一つでもあった[35]

いくつかの専門家グループはそれぞれの会議を開き、たとえば毎年恒例のLILAC(図書館員の情報リテラシー会議)の主催者は2005年以来、CILIPの情報リテラシーグループである[36][37]2019年のコロナウイルス感染症の流行下では情報の専門家としてBBCと協力、フェイクニュースへの対応を解説したり[38]ライブ配信を利用して就学期の年齢層に図書を推薦し、電子書籍版の貸し出しに結びつけた[39]

職能開発

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当協会はイギリスの大学(英語版の一覧(英語))で図書館情報学の学位課程を認定するほか[注釈 1]、ドイツ、オマーン、カタール、クウェート、タイ、中国、香港で多くの海外プログラムを認定する[41]

専門家登録には対応するポスト・ノミナル・レター別に3つの段階がある[42][43][44][注釈 2]

名誉学位に似た名誉フェローシップ(HonFCLIP)は、その職業への貢献が卓越した少数の人々に授与される。当協会は専門知識と職能を測る基準に「Professional Knowledge and Skills Base」を用意、継続的な専門能力開発の機会と自己評価ツールを提供する。登録会員は、毎年登録を再検証できる[46]。イギリスの図書館関係者にとって実務上、当協会の会員登録取得は必須とされていない。

加盟団体

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当協会の加盟団体に関する以下の情報は、2002年、2003年および2005年の見積もり値を除き、CILIP評議会報告書に依拠する[47]。2003年と2004年の会員数は不明。

2002(年) 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
会員数(人) 約23,000 [48] 19,206 [50][51] 18,490 17,634 [52] 17,192 15,705 14,555 13,974 13,567 13,163 12,632 11,868 9,793 9,337

2018年に算出法の改訂により「終身会員」を会員統計の個別の分類に加えて公表したため、会員数の数値は連続しない。2019年1月時点で、当協会の終身会員は約1,000人に上った。

CILIPスコットランド

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CILIPS
設立1908年 (116年前) (1908)
所長Martina McChrystal
HeadSean McNamara
職員2名[53]
予算£22,000
会員数1,200名 (2019年現在)
所在地イギリスの旗 イギリス グラスゴー
ウェブサイト公式ウェブサイト

スコットランド図書館情報専門家協会(英: CILIP in Scotland, Chartered Institute of Library and Information Professionals in Scotland)は略称をシリップスコットランド(頭字語CILIPS)といい、CILIPに加盟する非営利団体英語版である。CILIP加盟者でスコットランド在勤または在住の場合、自動的にこのCILIPSに加盟する[54]。CILIPS理事会はCILIPから活動の方針および財務、運用上の課題ならびにアドボカシーを委譲され、職員とサービスはサービス水準合意のもとに提供を受ける[55]スコットランド政府の情報分野に関して、政府諮問機関「スコットランド図書館情報評議会」(SLIC)と協力している。

CILIPスコットランドの前身はスコットランド図書館協会(1908年設立)であり、1931年に図書館協会と提携した[56]。2002年のCILIP設立に合わせ、前身の協会は協議してCILIPSに名称変更する[57]。2003年から2009年まで発行した専門誌『Information Scotland』(ISSN 1479-8441 )はその後、ニュースレターに継承された。

出版物

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発行年順。年報以下の小見出しはアルファベット→50音順。

年報、報告書

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RDA

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稀覯本

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  • Attar, Karen ; CILIP (Chartered Institute of Library and Information Professionals, Great Britain). Rare Books and Special Collections : Directory of rare book and special collections in the United Kingdom and the Republic of Ireland. 3rd ed, Facet, Pub. 2016. ISBN 9781783300167, NCID BB2303165X.

学校図書館

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  • Barrett, Lynn ; Douglas, Jonathan ; Armstrong, Eileen ; CILIP School Libraries Group. The CILIP guidelines for secondary school libraries. 2nd ed. Facet, 2004. ISBN 1856044815, NCID BA67847598.
  • Colleges of Further and Higher Education Group of CILIP ; Eynon, Andrew ; Ennis, Kathy ; Gray, Carole ; Watson, Lin. Guidelines for colleges : recommendations for learning resources. 7th ed. Facet, 2005. ISBN 185604551X, NCID BA7864405X.

職能教育

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脚注

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注釈

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  1. ^ 呑海沙織「英国 CILIP の新しい資格の枠組み」『図書館情報専門職とその養成』日本図書館情報学会研究委員会(編)、勉誠出版、2006年、231-237頁[40]
  2. ^ 呑海沙織「英国の図書館情報学分野の専門職能力開発におけるポートフォリオ評価」『情報の科学と技術』第57巻第1号、2007年、34-45頁[40]。Watson, Margaret. Building your portfolio : the CILIP guide. Facet Pub, 2008. ISBN 9781856046121, NCID BA85500821. 2nd ed, Facet, 2010. ISBN 9781856047142, NCID BB08581189.
  3. ^ ISBN 1856044513, 1856044769, 1856045285, 1856045684, 9781856045919, 9781856046220, 9781856046435, 9781856046787, 9781856047098
  4. ^ ISBN 0888022999, 0888023006, 1856044696, 185604470X, 083893529X, 0838935303, 0838935311, 0838935362, 0838935389,ISBN 0838935478, 0838935559, 0838935567

出典

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  1. ^ a b Charity Commission. Data for financial year ending 31 December 2019” (英語). 2021年7月12日閲覧。
  2. ^ Trustees' Report and Financial Statement, 31 December 2019” (pdf) (英語). 2021年5月21日閲覧。
  3. ^ CILIPとSCONULが共同宣言を発表 | カレントアウェアネス・ポータル”. current.ndl.go.jp. 国立国会図書館. 2021年8月6日閲覧。
  4. ^ a b 荒木三男、高島勝夫、長江慧(東京都立中央図書館); 吉田直樹、白石英理子、田代尚子(東京都立中央図書館) 編「第1章 公立図書館における電子図書館のサービスと課題に関する実態調査報告と課題提言 §§3.3. 英国の図書館政策の方向」『2002 年度 公立図書館における電子図書館のサービスと課題に関する報告書』(pdf)全国公共図書館協議会、2003年3月、26頁https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/pdf/15/pdf/chapt99.pdf 
  5. ^ 第5版, 図書館情報学用語辞典. “CILIPとは”. コトバンク. 2021年8月9日閲覧。
  6. ^ UIA Yearbook Profile”. Union of International Associations. 5 March 2021閲覧。
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  8. ^ Munford 1976, p. 3.
  9. ^ CILIP, Our look: the brand guide
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  11. ^ Phil Bradley, CILIP the err.. library and information association, 28 February 2017.
  12. ^ CILIP[9]、Ian Anstice[10]Phil Bradley's weblog[11]
  13. ^ Munford 1976, p. 56.
  14. ^ (pdf) Royal Charter 1898, amended 1986 and 2002. https://archive.cilip.org.uk/sites/default/files/media/document/2017-10/CILIP%20Royal%20Charter%20-%20approved%20November%202014.pdf. 
  15. ^ 第2回国際会議は1897年にロンドンで開催。Transactions and Proceedings of the Second International Library Conference held in London, July 13 - 16, 1897; 1898
  16. ^ Munford 1976, pp. 333–336.
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  22. ^ Charity Commission [in 英語]. 図書館情報専門家協会, registered charity no. 313014.
  23. ^ ISSN 0024-2195
  24. ^ ISSN 1476-7171
  25. ^ ISSN 2515-8015
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  33. ^ nagadmin. “Homepage” (英語). National Acquisitions Group. 2021年8月6日閲覧。
  34. ^ CILIP, 23 November 2016 Board meeting, Item 14, Appendix A
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  37. ^ About LILAC” (英語). www.lilacconference.com. LILAC. 27 August 2020閲覧。
  38. ^ 英国図書館情報専門家協会(CILIP)情報リテラシーグループ(ILG)、家庭学習支援サイトBBC Bitesizeとフェイクニュースに関する指導において連携 | カレントアウェアネス・ポータル”. current.ndl.go.jp. 2021年8月6日閲覧。
  39. ^ 英国図書館情報専門家協会(CILIP)、新型コロナウイルス感染症の拡大をうけ、図書館員が子ども・若者に本を推薦するライブ配信番組“National Shelf Service”を開始:推薦本は電子書籍として貸出可能 | カレントアウェアネス・ポータル”. current.ndl.go.jp. 2021年8月6日閲覧。
  40. ^ a b 松本直樹(文学部)「14. 図書館情報専門職認定制度の国際比較」(pdf)『2019年度研究大会』、慶應義塾大学三田図書館・情報学会、2019年11月16日。 
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  48. ^ 数値は CILIP 公式ウェブサイトのアーカイブ版に依拠。 CILIP Membership, 2 December 2002
  49. ^ 会員数は 2006年9月時点、2006年12月付で支部委員会医院宛に届いた電子メールに依拠。規約改訂前、すなわちおそらくは2005年末時点の数値か?
  50. ^ CILIPの新資格制度がスタート”. current.ndl.go.jp. カレントアウェアネス・ポータル. 国立国会図書館 関西館. 2021年8月9日閲覧。
  51. ^ 2008年版の年報『Annual Report 2008』に依拠。
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  57. ^ Digital, Habanero. “Timeline”. CILIPS. 2021年8月6日閲覧。

参考文献

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主な執筆者名のアルファベット順→50音順。

関連項目

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関連資料

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発行年順

児童書

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外部リンク

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