『地球防衛軍テラホークス』(ちきゅうぼうえいぐんテラホークス、Terrahawks)は、1983年から1986年にかけてイギリスで放映された、人形劇による特撮のTVシリーズ[1]。製作は操り人形を用いた特撮映画やテレビシリーズを多く製作していた、ジェリー・アンダーソン率いるアンダーソン・パー・ピクチャーズである。
「テラホークス」の原点は、1977年に東北新社が「スペース1999」のあと行き詰まりを見せていたジェリー・アンダーソンに、本格SFアニメーションの共同製作を持ちかけたところに始まる。「サンダーホークス」(THUNDERHAWKS)と仮題されたこの企画は、英国側のデザインなどに東北新社側が難色を示したことなどから、英国のプロットを残しつつ日本のスタッフによる製作で再出発することになり、「地球奪還指令テラホークス」と改題して監督に『勇者ライディーン』、『長浜ロマンロボシリーズ』の長浜忠夫、デザインに『勇者ライディーン』、『超電磁ロボ コン・バトラーV』、『無敵超人ザンボット3』の安彦良和、ブレーンにSF作家の豊田有恒、石津嵐、脚本家の鈴木良武、田口成光などが加わって進行したが、当時の日本は「スター・ウォーズ」を嚆矢とするSFブームの到来前であり、時代を先取りしたがゆえにセールスがうまくいかずに結果として流れてしまう(なお安彦良和がデザインしたテラホークスのコスチュームのデザインは『機動戦士ガンダム』の地球連邦軍の制服にモディファイされている[注 1])。
数年後ジェリー・アンダーソンは、日本のアニメ企画とは無関係に、テラホークスの題名をそのまま使い、新しいパートナーで出版会社出身のクリストファー・バーとともにプロダクションを起こして、クリストファーの発案で"THUNDERHAWKS"を人形劇として製作した。それが本作である。日本の水準では高額な予算ながら、アンダーソンの意図としては低予算作品として製作された。しかし、新しい伴侶メアリーと、若いバーに支えられた本作は、ジェリーの新しいキャリアの第一歩となるはずだった。
製作スタッフは、旧知のボブ・ビル、アラン・パディロ、デスモンド・サウンダーズ、メインライターのトニー・バーウィック(タイトルにクレジットされている「〜ステイン」という洒落の名前は、全てこの人)等のほかに、監督のトニー・レニー、ファンの自作ミニチュア展示会で親交を結んだ特撮監督スティーブン・ベッグ等の若者が参加した。3シーズン、39エピソードが製作され、かつてのATVを受け継いだセントラルTVで放送された。
内容は「サンダーホークス」をベースにしており、「サンダーホークス」の企画書に書かれたストーリー(敵の宇宙船が縮小して地球に侵入する)は実際の第一話のストーリーとなった。日本人キャラクターのヒロが登場するなど、日本への配慮、あるいは先の企画の名残が散見される。アンダーソンは東北新社に日本での展開を打診。最終的に、東北新社配給、NHK総合テレビジョン放送によって日本では陽の目を見ることとなった。
『サンダーバード』的なユーモアを重視した作風を目指して制作されたため、本作の人形は『サンダーバード』以来ひさびさに人形の頭身が5頭身にもどされた。
人形造形もアンダーソン作品の母、クリスティーン・グランヴィルが久しぶりに担当したが、表情をより人間に近いものとするため、ファイバーグラス製の顔を持つマペットではなく、骨格にラバーをかぶせた新技術が使用された。従来のジェリー・アンダーソン作品の「スーパーマリオネーション」とは異なり、日本の人形劇で一般的なパペット(下あやつり)が使われている。その技法を、本作では「スーパーマクロメーション」と称号している。
本編の台詞で印象的なのが、防衛チーム内での特殊なコールサインが復活した事である。本作では「10-10」(テン・テン:了解)、「10-30」(テン・サーティ:待機)等の、数字の組み合わせを使った通信符号テン・コードを使用した[注 2]。
地球人と美意識や考え方が異なるゼルダとその手下によるユニークな発想の地球侵略作戦(アンダーソン曰く本作のシナリオづくりには「宇宙人的な発想が必要」とのこと)と、それを的確な判断で阻止するナインスタイン率いるテラホークスとの知恵競べともいえる戦いが、時にコミカルに、時にハードタッチで描かれた。
人間的な人格をもっているゼロイドと人間との関わりによるドラマも平行して描かれており番組を盛り上げた。これは前述の初期企画案「サンダーホークス」のときから企画書に書かれてあった本作の特色であった。
戦争に対するシビアーな視点がみられる話もいくつかあり、「クリスマス月面デスマッチ!?」(A CHRISTMAS MIRACLE)のような反戦色のつよい異色作もつくられた。
2019年8月、新シリーズが新たに制作されることが発表された[3]。新シリーズでは、ケイトを主人公としてストーリーが構築される予定である。
当時、久々のNHKでの全国ネット放送ではあったが、本来のターゲットである幼稚園〜小学校低学年を対象にした『テレビマガジン』や『てれびくん』といった子ども向けのテレビ雑誌では扱いが非常に小さく、十分な宣伝がなされたとはいいがたかった。高年齢層向けのSF関係の雑誌でも「ジェリー・アンダーソンの新作」といった先行宣伝が若干行われた程度だった。
さらに、当時の日本は『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』のブームの直後であったためか、アンダーソン作品の主なファン層である高年齢層にはSF作品はシリアスなストーリーが好まれる傾向があり(当時、過去のアンダーソン作品で日本で評価が高かったのは『キャプテンスカーレット』であった。)『サンダーバード』以来の5頭身のキャラクターによるウィットの効いたユーモラスなドラマを志向した本作は、ヒットには至らなかった。
視聴率の不振による梃入れから、『海底大戦争 スティングレイ』の日本版におけるトニー谷の語り風に羽佐間道夫によるコミカルなナレーションが第9話よりつけられたが思いのほか視聴率は上昇せず、第20話以降は時間帯をゴールデン枠から夕方に移された。再放送も放送終了後に1度しかされていないため幻の作品となりつつあった。しかし、CSの海外ドラマ専門チャンネルスーパー!ドラマTVのオンデマンドサービス『スーパー!ドラマ クラシック』にて2017年8月31日より配信開始、同年10月7日には『「スーパー!ドラマ クラシック」第1話見せますSP』と題された特別編成内で第一話が放送され、およそ30年振りに日の目を見る事となった[4]。
日本での放映にあたっては、放送局がCMの入らないNHKであり、ほぼ30分の時間枠のため、追加として出崎哲演出によるアニメーションのタイトルバックが作られた。そこで流れる日本版主題歌「ギャラクティカ・スリリング」、エンディングテーマ「大切な言葉(ワン・ワード)」を歌うのは、元ザ・リリーズの燕 奈緒美・真由美姉妹である。声の出演者の紹介画面で流れたインストゥルメンタル曲「0(ゼロ)のテーマ」も含めて、日本版独自の音楽は新田一郎が担当した。なお、オリジナルのオープニング・エンディングもアバンタイトル・ミニコーナーのBGMとして流されている。
各メカニックをはじめとする本作関連の玩具はバンダイによって作られたものの、日本でのマーチャンダイジングは行なわれず、NHK放映時も日本国内販売はされなかった。
本作はイギリス本国では好成績をおさめ、1986年にアンダーソンとバーは本作によってえた収益をもとに、ライブアクションとぬいぐるみ、マペットを併用した意欲的な新作「スペース・ポリス」のパイロットフィルムを製作し関係者の好評を博した。「スペース・ポリス」は、『セサミ・ストリート』で有名な操り人形師の第一人者ジム・ヘンソンとの共同製作による作品でもあった。
しかし、シリーズ化直前にジム・ヘンソンが他界。さらにヘンソンの会社がディズニーに買収されるなど資金面でトラブルが生じ、この企画のシリーズ化が実現するのは、8年後の1994年の「スペース・プリシンクト」まで待つ事になった。「スペース・プリシンクト」は「スペース・ポリス」の改題シリーズ化作品である。シリーズ化に伴いタイトルが「スペース・プリシンクト」に変更になったのは「スペース・ポリス」というタイトルがすでに登録されており使用不可だったという事情による。
これを「サンダーバード」を評価基準とする日本のファンはシルヴィアの企画力が欠如したためとする評価が散見されるが、実質「サンダーバード」の内容にシルヴィアは参加していない。ITCのルー・グレイドの様な強力で豊富な資産力が存在しない事が、最大の理由である(なお「スペース・ポリス」および「スペース・プリシンクト」は『エイリアン・ネイション』に近い要素を持つ作品だが『エイリアン・ネイション』は1988年の作品であり「スペース・ポリス」のパイロットフィルムの完成のほうが先(1986年)であった。)。
コード | 意味 |
---|---|
10-0 | 否定 |
10-10 | 了解 |
10-20 | 位置 |
10-30 | 待機 |
10-40 | 戦闘態勢 |
10-50 | 発射 |
10-90 | 緊急事態 |
1-0 | 極秘 |
日本では1985年4月2日[5]から1986年3月12日[6]にかけて、NHK総合テレビで放送された。時間帯は1話〜19話が火曜19:30〜19:58[5]、20話〜39話が水曜18:00〜18:28[7]。本放送時には新聞の番組欄[8]でサブタイトルに続けて番組内容を説明するあおり文がつけ加えられていた。あおり文のみ太字で表記。
現在一般に流布している放映リストはムック『ザ・メイキング・オブ・テラホークス』(1985年8月20日発行・角川書店)に掲載されたもの。これは放映中に発表された放映予定表で、実際のリストとはサブタイトル表記や順番が異なる。
英 | 英語サブタイトル | 英放送 年月日 |
日 | 日本語サブタイトル(ムック) | 日 | 日本語サブタイトル (本放送時) |
国内放送 年月日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | EXPECT THE UNEXPECTED (Part.1) | 1983年 10月8日 |
1 | テラホークス発進せよ! PART I | 1 | 人類滅亡の危機迫る テラホークス発進せよ! PART1 |
1985年 4月2日[5] |
2 | EXPECT THE UNEXPECTED (Part.2) | 10月15日 | 2 | テラホークス発進せよ! PART II | 2 | 人類滅亡の危機迫る テラホークス発進せよ! PART2 |
1985年 4月9日[9] |
3 | THUNDER-ROAR | 10月22日 | 3 | サンダーパワーの恐怖 | 3 | サンダーパワーの恐怖! | 1985年 4月23日[10] |
4 | HAPPY MADEDAY | 10月29日 | 8 | 変装アンドロイド | 8 | 変装アンドロイド ・ツリー・ホークス操縦不能!、 北極でナゾの変身 |
1985年 5月28日[11] |
5 | THE UGLIEST MONSTER OF ALL | 11月5日 | 10 | 恐くてかわいい宇宙グマ | 10 | 恐くてかわいい宇宙グマ SOS!こちら指令機、発進不能だ! |
1985年 6月18日[12] |
6 | CLOSE CALL | 11月12日 | 6 | ホークネストの秘密 | 6 | ホークネストの秘密ー危機! 時限爆弾スイッチオン、 破壊工作員を追え |
1985年 5月14日[13] |
7 | THE GUN | 11月19日 | 11 | 合体キューブの威力 | 11 | 合体キューブの威力・撃墜せよ! 不審な宇宙貨物船が接近 |
1985年 6月25日[14] |
8 | GUNFIGHT AT OAKY'S CORRAL | 11月26日 | 9 | オーキー牧場の決闘 | 9 | オーキー牧場の決闘 卑劣なトリック!・キューブ、砂漠に潜入 |
1985年 6月11日[15] |
9 | THUNDER PATH | 12月3日 | 12 | 帰って来たサンダーパワー | 12 | 帰って来たサンダーパワー・ 怪獣アンドロイドがほえる |
1985年 7月2日[16] |
10 | FROM HERE TO INFINITY | 12月10日 | 5 | ナゾの宇宙船 | 5 | ナゾの宇宙船・核燃料を回収セヨ! | 1985年 5月7日[17] |
11 | MIND MONSTER | 12月17日 | 13 | マインド・モンスターの襲撃! | 13 | マインド・モンスターの襲撃!・ 恐怖!白い煙の正体は… |
1985年 7月9日[18] |
12 | A CHRISTMAS MIRACLE | 12月24日 | 20 | クリスマスの奇跡 | 30 | クリスマス月面デスマッチ!?[注 3] | 1985年 12月18日[19] |
13 | TO CATCH A TIGER | 12月31日 | 15 | ナインスタイン隊長を救え | 15 | ナインスタイン隊長を救え! 絶体絶命・ゼルダの処刑室 |
1985年 8月20日[20] |
14 | OPERATION S.A.S | 1984年 9月30日 |
17 | 天才ヤングスター!? | 17 | 天才ヤングスター!? 防衛網の盲点をつき地球に潜入 |
1985年 9月17日[21] |
15 | TEN TOP TOP | 10月7日 | 18 | ケイト誘拐事件 | 18 | ケイト誘拐事件[注 4]・ ゼルダの念力、スチューをあやつる |
1985年 9月24日[22] |
16 | PLAY IT AGAIN SRAM | 10月14日 | 22 | 歌え! ゼルダ・バンド | 21 | 太陽系紅白歌合戦 | 1985年 10月16日[23] |
17 | THE ULTIMATE MENACE | 10月21日 | 25 | 殺人コンピューター、ザイクロン | 24 | 宇宙最強の敵ザイクロン | 1985年 11月6日[24] |
18 | MIDNIGHT BLUE | 10月28日 | 21 | ニュータイプ、ジーフ登場 | 20 | ニュータイプジーフ登場 | 1985年 10月9日[7] |
19 | MY KINGDOM FOR A ZEAF | 11月4日 | 23 | 時間の支配者テンポ卿 | 22 | 時間の支配者 | 1985年 10月23日[25] |
20 | ZERO'S FINEST HOUR | 11月11日 | 24 | ゼロイドうそつかない | 23 | ゼロイドうそつかない | 1985年 10月30日[26] |
21 | COLD FINGER | 11月18日 | 38 | コールドフィンガー | 38 | 氷の巨人・コールドフィンガー | 1986年 3月5日[27] |
22 | UNSEEN MENACE | 11月25日 | 19 | 見えない敵モイド | 19 | 見えない敵モイド・透明人間が スペースホークの防御線を突破! |
1985年 10月1日[28] |
23 | SPACE GIANT | 12月2日 | 37 | スポリラの逆襲 | 37 | 巨獣になったスポリラ | 1986年 2月26日[29] |
24 | CRY UFO | 12月9日 | 34 | 謎のUFOを探せ | 34 | どうなってんの?スチュー | 1986年 2月5日[30] |
25 | THE MIDAS TOUCH | 12月16日 | 16 | 金塊衛星の危機 | 16 | 金塊衛星の危機! 怪獣クレール地球に潜入・ゼロ大活躍 |
1985年 9月10日[31] |
26 | MA'S MONSTERS | 12月23日 | 26 | 勢ぞろいザ・モンスター | 25 | 勢ぞろいザ・モンスターズ[注 5] | 1985年 11月13日[32] |
27 | TWO FOR THE PRICE OF ONE | 1986年 5月3日 |
27 | ベビースター誕生 | 26 | ベビースター誕生 | 1985年 11月20日[33] |
28 | FIRST STRIKE | 5月10日 | 31 | 初めての敗北 | 31 | 代理将軍初めての敗北 | 1986年 1月8日[34] |
29 | TERRABOMB | 5月17日 | 32 | 突撃!宇宙グマ爆弾 | 32 | 突撃!宇宙グマ爆弾 | 1986年 1月22日[35] |
30 | SPACE CYCLOPS | 5月24日 | 35 | 宇宙の一つ目怪物現わる! | 35 | スペースモンスター現る! | 1986年 2月12日[36] |
31 | DOPPELGENGER | 5月31日 | 33 | 2人のヤングスター!? | 33 | 人形になったヤングスター | 1986年 1月29日[37] |
32 | CHILD'S PLAY | 6月7日 | 28 | ベビースターの爆弾作戦 | 27 | ベビースターの爆弾作戦 | 1985年 11月27日[38] |
33 | JOLLY ROGER ONE | 6月14日 | 29 | ベビースター | 28 | なぞなぞ海賊放送局 | 1985年 12月4日[39] |
34 | RUNAWAY | 6月21日 | 30 | ヤングスターの家出 | 29 | ヤングちゃんの家出 | 1985年 12月11日[40] |
35 | SPACE SAMURAI | 6月28日 | 14 | 宇宙のサムライ | 14 | 宇宙のサムライ・ 一刀両断!ゼルダの陰謀 |
1985年 7月16日[41] |
36 | TIME WARP | 7月5日 | 36 | ヘンテコ時間差パニック | 36 | へんてこ時間差パニック | 1986年 2月19日[42] |
37 | OPERATION ZERO | 7月12日 | 39 | テラホークス最後の日!? | 39 | テラホークス最後の日!? | 1986年 3月12日[6] |
38 | THE SPORILLA | 7月19日 | 7 | 宇宙の猛獣スポリラ | 7 | 宇宙の猛獣スポリラ・ ゼロ軍曹撤退セヨ!、 100万ボルトのアタック |
1985年 5月21日[43] |
39 | GOLD | 7月26日 | 4 | スペースから来た金塊 | 4 | スペースから来た金塊・ 巨大いん石が地球を襲う |
1985年 4月30日[44] |
主題歌、およびサウンドトラックはそれぞれビクター音楽産業(現:JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)より発売された。
放送終了直後の1986年4月7日[45]から1987年3月23日[46]まで再放送があった。
時間帯は月曜16:30〜16:58[45]。しかし大相撲や高校野球の中継によって中止になることが多く、26話で終了している。最終回のみ放送時間は16:30〜16:55[46]。
NHK総合 火曜 19:30枠 | ||
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
地球防衛軍テラホークス
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NHK総合 水曜 18:00枠 | ||
ウオッチング
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地球防衛軍テラホークス
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