『夢幻紳士』(むげんしんし)は、高橋葉介による漫画。探偵・夢幻魔実也(むげん まみや)を主人公とする作品群の総称であり、「夢幻紳士」は主人公の異名でもある。OVA化もされている。
「夢幻紳士」は高橋葉介の代表的シリーズで、昭和初期の日本を主な舞台とし、黒衣の探偵「夢幻魔実也」を主人公とする。
作品・シリーズによって作風や設定が大きく異なり、これらは基本的には世界観が異なる物語として、主人公「夢幻魔実也」も別世界における同姓同名の別人物という形で相互に関連しないように描かれている。 作品・シリーズによって年齢も大きく異なるが、黒い背広で白いスカーフを巻き、鍔広の黒い山高帽を被るというスタイルは共通している。
反面、短編や設定の重複する部分の多い作品間では、属する世界観の境界がしばしば曖昧である。作者のお遊びとして別世界観の主人公同士が共演する作品もあり、また多くの作品が繰り返し出版社や収録形式を変えて再録されているため、全作品の厳密な分類は困難となっている。本記事では説明の便宜上、2008年現在最新の作者の定義に沿って分類・記述し、必要であればその中でさらに細分化あるいは別節を設けて説明する。
なお、本作の主人公と同じ読みの名前を持つ「麻実也」(まみや)というキャラクターが作者の短編『仮面少年』(朝日ソノラマ刊「マンガ少年」掲載・1979年)に登場するが、本作と物語上の関係は無い。キャラクターデザインは似通っており、掲載時期から見て後述の〈夢幻紳士 マンガ少年版〉のデザインの原型と考えることは可能である。
夢幻紳士 マンガ少年版 | |
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ジャンル | 怪奇・ギャグ |
漫画:夢幻紳士 | |
作者 | 高橋葉介 |
出版社 | 朝日ソノラマ プレイガイドジャーナル社 少年画報社 |
掲載誌 | マンガ少年 漫金超 エイリアン |
レーベル | ハードカバー版 - ソフトカバー版 デュオセレクション ワイド版 高橋葉介作品集 文庫版/文庫新装版 ソノラマコミック文庫 ワイド新装版 高橋葉介セレクション |
発表期間 | 1981年1月-1982年12月 |
巻数 | 全1巻 |
話数 | 全6話 |
テンプレート - ノート |
昭和初期(1920年代後半)の東京を主な舞台とする怪奇漫画。猟奇的な表現やナンセンス、ユーモアを交えながら、少年探偵「夢幻魔実也」が怪奇事件に挑む姿を描く。最初期の夢幻紳士作品であり、当時より作者が得意とした、同一人物を主人公とした短編連作という形式をもつ。
毛筆の強弱を利用した描線、また昭和初期のガジェットを執拗に描き込んだ背景なども、この時期の特徴である。雑誌『マンガ少年』に連載された作品は特にこの傾向が強いが、連載最終話の「夢幻少女」やそれより後の作品になる短編「案山子亭」「亜里子の館」では画風が幾分マイルドになり、それまでのナンセンスユーモアを抑えて、静かで叙情的、あるいはドライな作風になっている。
1981年、『マンガ少年』(朝日ソノラマ刊)誌上にて短編連作『夢幻紳士』シリーズとして全4話連載されたのを含め、他誌に掲載された「案山子亭」(チャンネルゼロ・プレイガイドジャーナル社刊『まんがゴールデンスーパーデラックス 漫金超』掲載・1982年)・「亜里子の館」(少年画報社刊『少年KING増刊 少年少女SFまんが エイリアン』掲載・1982年)の短編2作を加えた計6作が、この〈マンガ少年版〉と分類されている。無論、この「マンガ少年版」という副題は1985年の単行本刊行時に、〈夢幻紳士 冒険活劇篇〉と区別するため付加されたものである。
なお、1983年の初出単行本に書き下ろされた絵物語(挿し絵入りの小説)「絵物語 夢幻紳士・遊鬼塔の怪人」は、それ以後〈マンガ少年版〉を収録した単行本には常に併載されているが、この作品には〈冒険活劇篇〉のキャラクターである「老博士」と「甲保」が登場している。
この節の加筆が望まれています。 |
表中の収録単行本の詳細は前節「単行本」を参照。なお(主に単行本に描き下ろされた)イラスト・口絵の類は種類が多く、またタイトルの特定・タイトルと画の同定が困難なため、リストからは省略している。
サブタイトル | 初出 | 収録単行本 | |||||
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顔泥棒 | 『マンガ少年』1981年2月号 | ハードカバー版 | デュオセレクション | 高橋葉介作品集 (7) | ヨウスケの奇妙な世界 (1) | ソノラマコミック文庫 | 高橋葉介セレクション |
使い魔の壷 | 『マンガ少年』1981年3月号 | ||||||
青蛇婦人 | 『マンガ少年』1981年4月号 | ||||||
夢幻少女 | 『マンガ少年』1981年5月号 | ||||||
案山子亭 | 『漫金超』1983年夏号(第5号)(※1) | ||||||
亜里子の館(※2) | 『エイリアン』1983年1月15日号(※3) | ||||||
絵物語 夢幻紳士・遊鬼塔の怪人 | 『夢幻紳士』単行本(1983年3月) |
夢幻紳士 冒険活劇篇 | |||
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ジャンル | 怪奇・冒険・ギャグ | ||
漫画:夢幻紳士 | |||
作者 | 高橋葉介 | ||
出版社 | アニドウ 徳間書店 | ||
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掲載誌 | 月刊ベティ リュウ 少年キャプテン | ||
レーベル | 連載中 アニメージュ・コミックス ワイド版 高橋葉介作品集 文庫版 スコラ漫画文庫 文庫新装版 ハヤカワコミック文庫 | ||
発表号 | 1982年1号 (8月15日号) - 1991年10号 (10月18日号) | ||
巻数 | アニメージュ・コミックス 全10巻 高橋葉介作品集 通巻9巻 スコラ漫画文庫 全7巻 ハヤカワコミック文庫 全5巻 | ||
話数 | 全68話 | ||
OVA:夢幻紳士 冒険活劇編 | |||
原作 | 高橋葉介 | ||
監督 | 辻初樹 | ||
キャラクターデザイン | 辻初樹 | ||
アニメーション制作 | スタジオぎゃろっぷ | ||
製作 | ビクター音楽産業株式会社 | ||
発売日 | 1987年2月 | ||
話数 | 全1話 | ||
テンプレート - ノート |
作中で魔実也を称して「夢幻紳士」と呼ぶ唯一のシリーズ。『ベティ』(アニドウ刊)に掲載された短編「脳交換クラブ」(1982年)を第1話とし、その後雑誌『リュウ』(徳間書店刊)および『少年キャプテン』(同社刊)で1983年-1991年に渡って掲載された連載漫画『夢幻紳士』を指す。この3誌の連載は掛け持ちではなく、『月刊ベティ』創廃刊の後『リュウ』で連載を開始、さらに後に『リュウ』の休刊にともない掲載誌を『少年キャプテン』に移したもので、掲載誌こそ違うものの実質的にはひと繋がりの連載シリーズである。
連載時の題名は〈マンガ少年版〉と同じく『夢幻紳士』であり、特に初期作は執筆時期・作風とも〈マンガ少年版〉に近いため、後述する作者による定義を措けば世界観の区別が困難である。特に第1話「脳交換クラブ」の掲載時期は〈マンガ少年版〉の「夢幻少女」と「案山子亭」の間に位置するが、作者は一貫して「脳交換クラブ」を〈マンガ少年版〉ではなく〈冒険活劇篇〉の作品と見なしており、第2話にあたる「伊号700奪回せよ」は『リュウ』誌での連載第1話目にも関わらず「脳交換クラブ」の直接の続編となっている。
本作を原作とするOVAが1987年に発売されており、このタイトルは原作のアニメージュ・コミックスでの副題(「夢幻紳士 1 冒険編」「夢幻紳士 2 活劇編」)を合成し『夢幻紳士 冒険活劇編』となっている。原作でも1998年の文庫化に際し『夢幻紳士 冒険活劇編』の名が正式にシリーズの呼称として与えられ、後2006年に再度文庫化された際に他のシリーズとの統一をとるためか「冒険活劇篇」の字に改められた。これ以前には正式な呼称がなく、他シリーズとの区別の際には(アニメージュ・コミックスのブランドで最初に単行本化されたことから)「アニメージュ・コミックス版」と呼ばれた。また作者が〈冒険活劇篇〉連載後期のコメディ性を指して「スチャラカ・ホーム・コメディ」と称した[1]ことから、〈冒険活劇篇〉の呼称が定着する以前には「スチャラカ編」とも呼ばれていた。
作者にとって異例の長寿連載であり、執筆時期によって作風が大きく異なる。主人公「夢幻魔実也」と彼を取り巻く環境は同一であるが、ジャンルは怪奇アクション漫画から伝奇冒険活劇、スラップスティック・コメディへと変転している。この項では作風によって大きく3期に区切り、それぞれについて述べる。
昭和初期(大正デモクラシー末期)の東京を主な舞台とする怪奇アクション漫画。少年探偵「夢幻魔実也」が怪奇事件に挑む姿を描く。オカルティックな題材と、各話に必ず挿入されるアクションシーンが特徴。
〈マンガ少年版〉の後期の作と作風が非常に近く、魔実也のテレパシー能力もほぼ同様の定義である。
昭和初期の日本から太平洋戦争前夜の世界各地に舞台を転々と移す、コメディの要素を含む冒険活劇漫画。少年探偵「夢幻魔実也」が巻き込まれる数々のトラブルに挑む姿を描く。舞台の時代性を感じさせる情景描写と、当時の世相を反映した作劇上のガジェットが特徴。特に大日本帝国陸軍、ナチス・ドイツ、満州国等が多く扱われた。
初期に見られたオカルティックな要素がほぼ排され、作風としては伝奇アクションに近い。魔実也の性格は初期の超然としたものから、表情豊かなより少年らしいものに変わっている。特に福音温子・夢幻狂四郎などのトラブルメーカーの登場により、狼狽えたり所謂ツッコミを手厳しく入れたりという行動を取るようになった。また魔実也のテレパシー能力の設定はこの時期以降無視されている。
昭和初期の東京を舞台とするスラップスティック・コメディ漫画。少年探偵「夢幻魔実也」とその家族が巻き込まれる数々のトラブルに翻弄されつつも、ドタバタの内に解決に導く姿を描く。テンポ良く挿入されるギャグの連続と、人情喜劇的なハッピーエンドが特徴。
舞台は日本に固定され、起こる事件も従来より遥かに狭いスケール、かつ荒唐無稽なものに変わっていった。主人公以外流動的であった主要キャラクターの配置も、魔実也・温子・狂四郎・雪絵の4名に固定されるようになる。昭和初期という舞台設定はしばしば意図的に無視され、現代あるいは昭和中期を下敷きにしたギャグ表現が多く使われた。扉の前の1ページに本編と無関係な挿話が入るスタイルが定着したのもこの時期である。
画風はギャグタッチに整理され、キャラクターの頭身が低く丸みを強調したものになる。特に狂四郎のデザインは変化が激しく、元々の大柄な体躯の怪人物といった外見から、だるまのように太めで全体に丸々としたデザインに変わっている。
連載終盤ではさらに魔実也の性格が大きく変化して、従来常識人として描かれていた彼が平然と相手をからかい、事態を自ら引っかき回すキャラクターに変わっている。これは〈マンガ少年版〉のキャラクター性に近いが、よりパワフルで能動的である。
アニメージュ・コミックス等では巻数表記の後に「冒険編」「活劇編」等のサブタイトルが付けられているが、これらは単行本化にあたって付与された修飾的なものであり、厳密に各話に「-編」と区切りが付いているわけではない。
この節の加筆が望まれています。 |
表中の単行本名・詳細は前節「単行本」を参照。なお(主に単行本に描き下ろされた)イラスト・口絵の類は種類が多く、またタイトルの特定・タイトルと画の同定が困難なため、リストからは省略している。
サブタイトル | 初出 | 収録単行本 | ||||
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脳交換クラブ | 『月刊ベティ』創廃刊号(1982年8月) | アニメージュ・コミックス (1) | 高橋葉介作品集 (7) | スコラ漫画文庫 (1) | ハヤカワコミック文庫 (1) | |
伊号700奪回せよ(※1) | 『リュウ』1983年1月号 (vol.21) | |||||
妖虫博士と蝶の谷 | 『リュウ』1983年3月号 (vol.22) | |||||
ミイラの花嫁 | 『リュウ』1983年5月号 (vol.23) | |||||
老博士の要塞・其之一 | 『リュウ』1983年9月号 (vol.25) | 高橋葉介作品集 (8) | ||||
老博士の要塞・其之二 | 『リュウ』1983年11月号 (vol.26) | |||||
百発百中 | 『リュウ』1984年1月号 (vol.27) | アニメージュ・コミックス (2) | ||||
密林の夢幻紳士 | 『リュウ』1984年3月号 (vol.28) | |||||
夜歩く | 『リュウ』1984年5月号 (vol.29) | |||||
ジャフディの眼 | 『リュウ』1984年7月号 (vol.30) | スコラ漫画文庫 (2) | ||||
褐色の人魚(※2) | 『リュウ』1984年9月号 (vol.31) | |||||
上海の夢幻紳士 | 『リュウ』1984年11月号 (vol.32) | |||||
年末の夢幻紳士 | 『リュウ』1985年1月号 (vol.33) | ハヤカワコミック文庫 (2) | ||||
忍風夢幻外伝 | 『リュウ』1985年3月号 (vol.34) | アニメージュ・コミックス (3) | 高橋葉介作品集 (13) | |||
ツェッペリンを乗っとれ!!(※3) | 『リュウ』1985年5月号 (vol.35) | |||||
紐育の夢幻紳士(※4) | 『リュウ』1985年7月号 (vol.36) | |||||
偉大なる血 | 『リュウ』1985年9月号 (vol.37) | |||||
白衣の夢幻天使(※5) | 『リュウ』1985年11月号 | |||||
夢幻紳士対猫夫人 | 『リュウ』1986年1月号 | |||||
(夢)印大サーカス(※6) | 『リュウ』1986年3月号 | スコラ漫画文庫 (3) | ||||
極北の夢幻紳士 | 『リュウ』1986年5月号 | アニメージュ・コミックス (4) | 高橋葉介作品集 (14) | |||
曠野の夢幻紳士 | 『リュウ』1986年7月号 | |||||
王道楽土の夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1986年8月号 | |||||
満映キネマの夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1986年10月号 | |||||
夢幻紳士 IN 満洲バンスキング | 『少年キャプテン』1987年1月号 | ハヤカワコミック文庫 (3) | ||||
鍼と黄土と夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1987年3月号 | |||||
魔界の森の夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1987年5月号 | アニメージュ・コミックス (5) | ||||
洋上の夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1987年7月号 | 高橋葉介作品集 (15) | ||||
洋上の夢幻家御一行様 | 『少年キャプテン』1987年9月号 | スコラ漫画文庫 (4) | ||||
夢幻狂四郎の青春 | 『少年キャプテン』1987年11月号 | |||||
師走団欒夢幻家御帰国 | 『少年キャプテン』1988年1月号 | |||||
瀕死の探偵 | 『少年キャプテン』1988年3月号 | |||||
(噂)の二人(※7) | 『少年キャプテン』1988年5月号 | アニメージュ・コミックス (6) | ||||
夏だ海辺だ夢幻紳士(※8) | 『少年キャプテン』1988年7月号 | |||||
今度は山だぞ夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1988年9月号 | 高橋葉介作品集 (16) | ||||
忍びの者純情編(※9) | 『少年キャプテン』1988年11月号 | |||||
冬だ見合いだ年の瀬だ おまけもついてる夢幻紳士(※10) | 『少年キャプテン』1989年1月号 | ハヤカワコミック文庫 (4) | ||||
魔実也誕生秘話 | 『少年キャプテン』1989年3月号 | アニメージュ・コミックス (7) | スコラ漫画文庫 (5) | |||
父と子の絆 | 『少年キャプテン』1989年4月号 | |||||
霊感商法はヤバイゾ | 『少年キャプテン』1989年5月号 | |||||
茶碗の思い出 | 『少年キャプテン』1989年6月号 | |||||
どすこい夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1989年7月号 | |||||
夏だオバケだ夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1989年8月号 | 高橋葉介作品集 (17) | ||||
竜を見たか | 『少年キャプテン』1989年9月号 | |||||
花園の夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1989年10号 | |||||
少女探偵アッコちゃん | 『少年キャプテン』1989年11月号 | アニメージュ・コミックス (8) | ||||
夢幻雪絵の青春 | 『少年キャプテン』1989年12月号 | |||||
不良少年と呼ばれたい | 『少年キャプテン』1990年1月号 | スコラ漫画文庫 (6) | ||||
新春かしましトリオ | 『少年キャプテン』1990年2・3月合併号 | |||||
三人姉妹 | 『少年キャプテン』1990年4月号 | |||||
弁当物語 | 『少年キャプテン』1990年5月号 | |||||
桜の下の夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1990年6月号 | 高橋葉介作品集 (18) | ||||
夢幻猫の冒険 | 『少年キャプテン』1990年7月号 | ハヤカワコミック文庫 (5) | ||||
夢幻猫の冒険[その2](※11) | 『少年キャプテン』1990年8月号 | アニメージュ・コミックス (9) | ||||
渚でデート | 『少年キャプテン』1990年9月号 | |||||
怪奇の館 | 『少年キャプテン』1990年10月号 | |||||
猟奇陽炎男 | 『少年キャプテン』1990年11月号 | |||||
影の暗殺者 | 『少年キャプテン』1990年12月号 | |||||
幻の雪山 | 『少年キャプテン』1991年1月号 | スコラ漫画文庫 (7) | ||||
初春公演、夢幻一座(※12) | 『少年キャプテン』1991年2月号 | |||||
季節はずれのサンタクロース | 『少年キャプテン』1991年3号 | 高橋葉介作品集 (19) | ||||
恋の格闘王 | 『少年キャプテン』1991年4月号 | アニメージュ・コミックス (10) | ||||
今夜はサイコ!! | 『少年キャプテン』1991年5月号 | |||||
大誘拐 | 『少年キャプテン』1991年6月号 | |||||
男の純情は花一輪 | 『少年キャプテン』1991年7月号 | |||||
アッコくの一花嫁修業す(※13) | 『少年キャプテン』1991年8月号 | |||||
乙女の国の夢幻紳士 | 『少年キャプテン』1991年9月号 | |||||
そーゆーわけで大団円 | 『少年キャプテン』1991年10月号 |
サブタイトル | 初出 | 収録単行本 | ||||
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描き下ろし戯曲 夢幻紳士・老博士の逆襲 | アニメージュ・コミックス (1)(1984年8月) | アニメージュ・コミックス (1) | 高橋葉介作品集未収録? | − | − | |
小説 花のお江戸の夢幻紳士 | アニメージュ・コミックス (2)(1985年3月) | アニメージュ・コミックス (2) | ||||
おまけ シャーロック・ホームズの平穏な日常 | アニメージュ・コミックス (5)(1988年9月) | アニメージュ・コミックス (5) | スコラ漫画文庫 (7) | |||
おまけ 2001年宇宙の旅の巻 | アニメージュ・コミックス (8)(1991年1月) | アニメージュ・コミックス (8) | ハヤカワコミック文庫 (5) | |||
漫画にならなかった没ストーリィー覚え書きノート | スコラ漫画文庫 (7)(1999年1月) | − | − | − | ||
絵物語 夢幻紳士 場外乱闘篇「夢幻紳士と螺子男」 | ハヤカワコミック文庫 (1)(2006年4月) | − | ハヤカワコミック文庫 (1) | |||
絵物語 夢幻紳士 営業篇「霧の中の女」 | ハヤカワコミック文庫 (2)(2006年5月) | ハヤカワコミック文庫 (2) | ||||
絵物語 夢幻紳士 流浪篇「夢幻紳士 七変化」 | ハヤカワコミック文庫 (3)(2006年6月) | ハヤカワコミック文庫 (3) | ||||
夢幻紳士 納涼篇「真夜中のメイド」 | ハヤカワコミック文庫 (4)(2006年7月) | ハヤカワコミック文庫 (4) | ||||
夢幻紳士 広報篇「夜の客(※1)」 | ハヤカワコミック文庫 (5)(2006年8月) | ハヤカワコミック文庫 (5) |
タイトルは『夢幻紳士 冒険活劇編』。
ビクター音楽産業株式会社より1987年に、VHD、レーザーディスク、VHSで発売された。49分。
原作における「ミイラの花嫁」「老博士の要塞」のプロットを混成したストーリーを中心に、「百発百中」「妖虫博士と蝶の谷」「脳交換クラブ」などのエピソードを交えて作劇されている。OVAオリジナルキャラクターである富野寿太郎は「老博士の要塞」の天丸博士、里見桜子は「伊号700奪回せよ」の千絵子からの引用であり、名無しの日本軍隊長も片桐将校のデザインが転用されている。甲保の名は原作の「コホ」ではなく「カホ」と発音される。
パッケージ裏には「遂に出た! レトロチックにスチャラカ浪漫!!」と題された紹介文が掲載されている。
先ごろ死亡した政財界の大物四方天照(よも あまてる)に見初められた踊り子、福音温子が魔実也の探偵事務所に助けを求めて転がり込む。彼女は怪力を持ち宙を飛ぶ奇怪なワニの仮面の男達に追われていた。アルカードの奮戦空しく、隙を突かれ攫われる温子。
折しも帝都では連続少女誘拐事件が巷を賑わせていた。魔実也は次の被害者と目される天才ピアニスト里見桜子に変装し、あえて捕らえられて誘拐団のアジトに潜入する。そこに居たのは追放された異端の科学者、富野寿太郎博士だった。富野博士は四方天照に見出され、死者復活のための科学とオカルトの合一を研究していた。そして誘拐団のボス老博士は富野博士と結託し、研究成果をえさに西欧各国や日本の軍部から金を引き出していた。
後を追ってきた江戸川警部ら警官隊とワニ男(富野博士が死体から作った怪物だった)の大立ち回りの末、逃げ出した老博士ら幹部を追う魔実也。着いた先は無人島に造られた巨大なピラミッドだった。富野博士は誘拐した少女達の生命を生贄に、四方天照を生き返らせようとする。儀式は魔実也の仕掛けた爆薬によって止められたが、それをきっかけに研究成果を狙った世界各国の軍隊が入り乱れる戦いとなる。ついに血迷ったドイツ軍将校がピラミッドを爆破。魔実也らは辛くも脱出したが、夢破れた富野博士は恩人四方天照の死体と運命を共にし、事件は闇に葬られた。
夢幻紳士 怪奇篇 | |||
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ジャンル | 怪奇 | ||
漫画 | |||
作者 | 高橋葉介 | ||
出版社 | 徳間書店 日本出版社 | ||
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掲載誌 | メディウム 少年キャプテン 季刊コミックアゲイン 少年キャプテンセレクト リュウ | ||
レーベル | 連載中 アニメージュコミックススペシャル アニメージュ・コミックス ワイド版 高橋葉介作品集 文庫版 ソノラマコミック文庫 文庫新装版 ハヤカワコミック文庫 愛蔵版 - | ||
発表号 | 1984年1号 (4月号) - 1991年2号 (4月) | ||
発表期間 | 1982年7月-1991年4月 | ||
巻数 | アニメージュコミックススペシャル 全3巻 アニメージュ・コミックス 通巻1巻 高橋葉介作品集 通巻2巻 ソノラマコミック文庫 通巻2巻 ハヤカワコミック文庫 全1巻 愛蔵版 全1巻 | ||
話数 | 全19話 | ||
テンプレート - ノート |
昭和初期の東京を主な舞台とする怪奇漫画。青年探偵「夢幻魔実也」と彼の周囲で起こる怪奇事件を描く。多くは愛憎の情を描いた物語である。静謐なムードで描かれる世界観と、凄惨な怪異を描きつつも悪趣味に傾かず叙情的な内容が特徴。
ギャグ・コメディ要素を排したシリアスな短編連作シリーズ。従来の夢幻紳士作品と異なり、魔実也は青年として描かれる。その能力は〈マンガ少年版〉に準ずるが、性格は大きく異なり能動的に動くことが少なく、事象の傍観者的役割を果たす事が多い。
怪奇漫画アンソロジー『メディウム』(徳間書店刊)に1984年-1987年に渡って連載された『夢幻紳士 怪奇編』シリーズ、および『メディウム』休刊後『少年キャプテン』に不定期連載(1988年)された同名シリーズを中心とする。同時期には『少年キャプテン』誌上で〈冒険活劇篇〉も連載されていたが、「怪奇編」と銘打たれた本作は設定・作風が明らかに異なっており、〈冒険活劇篇〉とは明確に一線を画している。連載時の題名から長く区分上「怪奇編」と呼ばれていたが、2007年の文庫化に際して他のシリーズと統一をとるためか「怪奇篇」の字に改められた。
前記の連載の他には『季刊コミックアゲイン』(日本出版社刊)に掲載された「針女」(1984年)、アンソロジー『少年キャプテンセレクト』(徳間書店刊)第2巻に掲載された「蝙蝠」(1991年)、ほか単行本むけの書き下ろし作品「おいてけ沼」「令嬢と人面瘡」が〈怪奇篇〉に数えられる。「蝙蝠」は直前の作品「夜会」の掲載から約1年半の間を開けて発表されたため、初回単行本には収録されなかった。
怪奇篇を収録した単行本には常に「夢幻紳士・人形地獄」(『リュウ』掲載・1982年)が収録されているが、この作品での魔実也は「少年探偵」であり、周囲も江戸川警部・アルカードら〈マンガ少年版〉〈冒険活劇篇〉に登場したキャラクターで構成されている。ほか作風や執筆時期から見れば〈マンガ少年版〉の後期あるいは〈冒険活劇篇〉の初期に繋がる作品と言えるが、それらと比較しても特にプロットの怪奇性が強く、また前出の『メディウム』第6号に再掲された経緯のためもあってか本作は〈怪奇篇〉の(風変わりな)一部として扱われている。
〈怪奇篇〉の魔実也は〈冒険活劇篇〉に2コマだけゲスト出演した事もあり(第46話「少女探偵アッコちゃん」冒頭)、この時は冒険活劇篇の魔実也から「何であんたが出てくるわけ?」と言われ、「仕事がなくてヒマでな」と答えていた。温子からは「パロディ漫画のパロディじゃないのよ!」とツッコまれている。
この節の加筆が望まれています。 |
表中の収録単行本の詳細は前節「単行本」を参照。なお(主に単行本に描き下ろされた)イラスト・口絵の類は種類が多く、またタイトルの特定・タイトルと画の同定が困難なため、リストからは省略している。
サブタイトル | 初出 | 収録単行本 | ||||
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夢幻紳士・人形地獄(※1) | 『リュウ』1982年9月号 (vol.19)(※2) | アニメージュコミックススペシャル (3) | 高橋葉介作品集 (12) | ヨウスケの奇妙な世界 (3) | ハヤカワコミック文庫 | 愛蔵版(早川書房) |
幽霊船 | 『メディウム』1984年4月号 (VOL.1) | アニメージュコミックススペシャル (1) | 高橋葉介作品集 (11) | ヨウスケの奇妙な世界 (2) | ||
老夫婦 | 『メディウム』1984年7月号 (VOL.2) | |||||
吸血鬼 | 『メディウム』1984年10月号 (VOL.3) | |||||
沼 | 『メディウム』1985年1月号 (VOL.4) | |||||
針女(※3) | 『季刊コミックアゲイン』1985年5月春号(第4号) | |||||
幽霊夫人 | 『メディウム』1985年4月号 (VOL.5) | |||||
首屋敷 | 『メディウム』1985年10月号 (VOL.7) | |||||
サトリ(※4) | 『メディウム』1986年2月号 (VOL.8) | アニメージュコミックススペシャル (2) | ||||
木精(※5) | 『メディウム』1986年4月号 (VOL.9) | |||||
夢魔 | 『メディウム』1986年7月号 (VOL.10) | |||||
昇降機 | 『メディウム』1986年10月号 (VOL.11) | 高橋葉介作品集 (12) | ヨウスケの奇妙な世界 (3) | |||
蜘蛛 | 『メディウム』1987年1月号 (VOL.12) | |||||
半人形 | 『メディウムSPECIAL』1987年5月号 | |||||
花火 | 『少年キャプテン』1988年6月号 | アニメージュコミックススペシャル (3) | ||||
鬼 | 『少年キャプテン』1988年9月号 | |||||
蛇 | 『少年キャプテン』1988年10月号 | |||||
夜会 | 『少年キャプテン』1988年12月号 | |||||
蝙蝠 | 『少年キャプテンセレクト』VOL.2(1991年4月) | アニメージュ・コミックス (10) | ||||
おいてけ沼 | 『夢幻紳士 怪奇篇』文庫新装版(2007年4月) | − | − | − | − | |
令嬢と人面瘡 | 『夢幻紳士 怪奇篇』愛蔵版(2017年4月) | − | 愛蔵版(早川書房) |
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『夢幻紳士 人形地獄』のタイトルで実写映画化された。原作は「夢幻紳士 人形地獄」(早川書房)。2018年に製作され[5]、2021年6月26日から商業公開が行われた[6]。監督は海上ミサコ。
原作では少年探偵だが、ほかの怪奇篇同様に青年探偵へと変えて映画化している。
監督の海上は原作の漫画を13歳のときに読み衝撃を受け、以降、企画を温め続けた[7]。2015年、MotionGalleryによるクラウドファンディングを行い[8]、同年9月にクランクインし、月に数日しか撮影できない状態で2017年4月にクランクアップした[9]。
商業公開は当初2021年5月を予定していたが[7]、新型コロナウイルスによる感染症の拡大を受けて公開延期となり[10]、上述のように2021年6月の公開となった。
夢幻紳士 夢幻外伝篇 | |
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ジャンル | 怪奇 |
漫画:夢幻紳士《恐怖編》 / 夢幻外伝 | |
作者 | 高橋葉介 |
出版社 | 朝日ソノラマ |
掲載誌 | 眠れぬ夜の奇妙な話 ネムキ |
レーベル | 連載中 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス 文庫版/文庫新装版 ソノラマコミック文庫 |
発表号 | 1992年8号 (7月30日号) - 1996年31号 (5月30日号) |
巻数 | 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス 全3巻 ソノラマコミック文庫 通巻3巻 ソノラマコミック文庫新装版 全2巻 |
話数 | 全21話 |
テンプレート - ノート |
昭和初期の東京を主な舞台とする怪奇漫画。青年探偵「夢幻魔実也」と彼の周囲で起こる怪奇事件を描く。〈怪奇篇〉の流れを汲む短編連作シリーズ。初期は黒ベタ塗りとラフな描線を多用した重苦しい画風で、後には筆の強弱を活かした洒脱な描線が特色となる。
〈怪奇篇〉と比較すると謎解きやどんでん返しといったミステリ的要素を多く含む作品や、いわゆる悪人の破滅で終わる勧善懲悪物語が多いのが特徴。短編連作の構成をとるが中には前作の直後から始まる物語もあり、また魔実也以外の主要キャラクターが多く登場する(〈怪奇篇〉では横溝教授がこの位置に相当したが、作者の構想の変化により主要キャラクターから除外された)など、続き物を意識させる構成になっている。これら主要キャラクターの多くは作中に名前が登場しない。
魔実也の性格は〈怪奇篇〉での超然としたものに近いが、焦ったり寝惚けたりとより人間味ある表情をたびたび見せる。また〈怪奇篇〉の時点では強力なものではないとされていた魔実也の超能力が、本編ではより超人的なものに変わっている。それに伴い、敵として魔実也の前に現われるキャラクター達も〈怪奇篇〉の頃より強力になっている。なお本シリーズ以降、しばしば青年の魔実也が娯楽として釣りをする姿が描かれるようになった。
1992年-1996年にかけて怪奇漫画誌『眠れぬ夜の奇妙な話』(連載中『ネムキ』に改題、朝日ソノラマ刊)に連載されたシリーズ。雑誌掲載時、第1話(サブタイトル「死者の宴」)はタイトルに『夢幻紳士《恐怖編》』(あるいは『夢幻紳士 〜恐怖編〜』)と題されていたが、第2話以降『夢幻外伝』となり、第1話も単行本化に際して『夢幻外伝』に改題されている。2007年の文庫化に際しての作者あとがきでは分類上「篇」の一字を付け「夢幻紳士『夢幻外伝篇』」と称されているが、タイトル上は『夢幻外伝』のまま変化は無い。
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表中の収録単行本の詳細は前節「単行本」を参照。なお(主に単行本に描き下ろされた)イラスト・口絵の類は種類が多く、またタイトルの特定・タイトルと画の同定が困難なため、リストからは省略している。
サブタイトル | 初出 | 収録単行本 | ||
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死者の宴 | 『眠れぬ夜の奇妙な話』1992年7月号 (VOL.8) | 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス (1) | ヨウスケの奇妙な世界 (4) | ハヤカワコミック文庫 (1) |
冥王星 | 『眠れぬ夜の奇妙な話』1993年1月号 (VOL.11) | |||
鴉 | 『眠れぬ夜の奇妙な話』1993年3月号 (VOL.12) | |||
海鳴りの家 | 『眠れぬ夜の奇妙な話』1993年5月号 (VOL.13) | |||
いない・いない・ばあ | 『眠れぬ夜の奇妙な話』1993年7月号 (VOL.14) | |||
人でなし | 『眠れぬ夜の奇妙な話』1993年9月号 (VOL.15) | |||
化物屋敷 | 『眠れぬ夜の奇妙な話』1993年11月号 (VOL.16) | 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス (2) | ヨウスケの奇妙な世界 (5) | |
言霊 | 『眠れぬ夜の奇妙な話』1994年3月号 (VOL.18) | |||
凶弾 | 『眠れぬ夜の奇妙な話』1994年5月号 (VOL.19) | |||
夜の劇場 | 『ネムキ』1994年7月号 (VOL.20) | |||
変化 | 『ネムキ』1994年9月号 (VOL.21) | |||
鳥女(※1) | 『ネムキ』1994年11月号 (VOL.22) | |||
水妖 | 「ネムキ」1995年1月号 (VOL.23) | 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス (3) | ヨウスケの奇妙な世界 (6) | ハヤカワコミック文庫 (2) |
目隠し鬼 | 『ネムキ』1995年3月号 (VOL.24) | |||
鞄 | 『ネムキ』1995年5月号 (VOL.25) | |||
船は行く | 『ネムキ』1995年7月号 (VOL.26) | |||
続・船は行く | 『ネムキ』1995年9月号 (VOL.27) | |||
泣きぼくろ | 『ネムキ』1995年11月号 (VOL.28) | |||
首おくれ | 『ネムキ』1996年1月号 (VOL.29) | |||
酒毒 | 『ネムキ』1996年3月号 (VOL.30) | |||
黒い天使 | 『ネムキ』1996年5月号 (VOL.31) |
夢幻紳士 幻想篇 / 逢魔篇 / 迷宮篇 | |
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ジャンル | 怪奇、ファンタジー |
漫画:夢幻紳士 幻想篇 | |
作者 | 高橋葉介 |
出版社 | 早川書房 |
掲載誌 | ミステリマガジン |
発表号 | 2004年3号 (3月25日号) - 2005年2号 (2月25日号) |
巻数 | 全1巻 |
話数 | 全12話 |
漫画:夢幻紳士 逢魔篇 | |
作者 | 高橋葉介 |
出版社 | 早川書房 |
掲載誌 | ミステリマガジン |
発表号 | 2005年3号 (3月25日号) - 2006年2号 (2月25日号) |
巻数 | 全1巻 |
話数 | 全12話 |
漫画:夢幻紳士 迷宮篇 | |
作者 | 高橋葉介 |
出版社 | 早川書房 |
掲載誌 | ミステリマガジン |
発表号 | 2006年3月号 (3月25日号) - 2007年2月号 (2月25日号) |
巻数 | 全1巻 |
話数 | 全12話 |
テンプレート - ノート |
2004年-2007年にかけて推理小説誌『ミステリマガジン』(早川書房刊)に連載されたシリーズ。『夢幻紳士 幻想篇』『夢幻紳士 逢魔篇』『夢幻紳士 迷宮篇』の3部作である。従来作よりミステリ的傾向が強く、読者に対して提示される(作中人物が客観的に意識していない)謎が物語の展開によって解明されるという構造を持つ。
『幻想篇』の最終話が『逢魔篇』の1話にリンクするように構成されている。『迷宮篇』では前2作の設定を踏まえ、『迷宮篇』をもってこの3部作が1本の長編物語として再構成されるという多層的な構造となっている。こうした3部作構成や長編としての物語展開について作者自身は、連載開始時に明確な構想を持っていた訳ではなく、多くの物語展開は即興的に描いたものであると各巻のあとがきで語っている。
このシリーズの中では魔実也は人とも魔ともつかない超越的な存在として描かれる。表情は従来作より柔らかく描かれ、〈怪奇篇〉〈夢幻外伝篇〉でトレードマークであったくわえ煙草を1コマしかしていない[12]のも大きな特徴。『幻想篇』後半からは、従来黒一色で描かれる事の多かった黒衣の表現が変化し、光の照り返しを大胆にデフォルメした独特の表現になっている。
他に外伝的作品として短編『夢幻紳士 出張篇』がある。またこのシリーズの魔実也は〈冒険活劇篇〉の単行本描き下ろし作品「夢幻紳士 広報篇『夜の客(ナイト・ゲスト)』」にも「最新型」として2コマだけゲスト出演している。
『夢幻紳士 幻想篇』。『ミステリマガジン』(早川書房刊)に2004年-2005年にわたり連載された。
昭和初期の東京を主な舞台とする怪奇ミステリ漫画。主人公「僕」の周囲で起こる事件と、「僕」の幻想である黒衣の青年「彼」(魔実也)の活躍を描く。怪奇篇の流れを汲む短編連作シリーズ。現実と夢想の区別が曖昧に描かれた、幻想的な世界観を表現する。大胆に太く描かれた主線に対して、儚げな細い線で繊細に描かれた表情が特徴。
1話完結の短編連作である一方、シリーズ終盤にそれまでの伏線が回収され大きな謎が解き明かされるという1本の長編としての構造も持つ。こうした一貫性のある構造は、青年の魔実也を主人公とするシリーズでは初めてのものである。
なお、作者あとがきによれば、本作に登場する魔実也は最終話で登場するシーンを除き「影」であり魔実也本人ではない。これは魔実也が「めんどうくさい」と出演を渋ったためであると作者はあとがきで述べている。
『夢幻紳士 逢魔篇』。『ミステリマガジン』(早川書房刊)に2005年-2006年にわたり連載された。
昭和初期の東京、場末の料亭を主な舞台とする怪奇漫画。青年探偵「夢幻魔実也」が様々な怪異と出会う長い一夜を描く。『幻想篇』の直接の続編にあたる短編連作シリーズ。料亭という固定された狭い舞台と、百鬼夜行を描いた短編連作という形式を活かし、幻想的でありながら軽妙洒脱な物語となっている。
怪異との対決が各話の主軸となっており、従来作より土着的な妖怪や幽霊が多く登場する。舞台が料亭のためか魔実也の口調はくだけ、江戸言葉に近い東京弁を話す事が多い。
こちらの魔実也は幻想篇と違って本人であるが、魔物退治に出歩くのが面倒くさいと主張したため、怪異が退治されるために料亭を次々に訪れるという形式となった。本作に登場する少女「手の目」は幼過ぎて魔実也の興味を引くことはなかったが、後に独立したシリーズの主人公となっている。
『夢幻紳士 迷宮篇』。『ミステリマガジン』(早川書房刊)に2006年-2007年にわたり連載された。
昭和初期の東京を主な舞台とする怪奇ミステリ漫画。青年探偵「夢幻魔実也」の自身を襲う怪異との戦いを描く。『幻想篇』『逢魔篇』と続いた三部作の完結編となる中編連載シリーズ。初期は魔実也に迫る殺意の持ち主と各話対決していく短編連作の形式をとっているが、連載が進むにつれ魔実也が諸悪の根源を追う続き物の体をなす。従来実験的に用いられてきた、墨のかすれによる濃淡の表現を縦横に駆使した描写が特徴。
各話のサブタイトルはムンクの画の題名から採られており、扉絵はその画の人物を作中の登場キャラクターに置き換えた模写の形式で描かれている。また、多くのエピソードは物語の上でもムンクの画の情景がモチーフになっている(例えば第1話「叫び」ではムンクの『叫び』のような光景の中、背景の欄干や画の奥の人物をめぐった物語が描かれる)。
本編では逢魔篇の魔実也本人と幻想篇の影との両者が登場し、「僕」「手の目」も再登場する。
『夢幻紳士〔出張篇〕座敷鬼』。『ハヤカワミステリマガジン』(ミステリマガジンから改題、早川書房刊)2011年4月号に掲載された。
特集「高橋葉介の夢幻世界」に寄稿された短編で、同誌に連載された『逢魔篇』『迷宮篇』の世界観を受け継ぐ外伝的作品。夢幻魔実也と「手の目」が登場する。
それぞれ連載終了後に刊行されたワイド版コミックス。早川書房刊。全3巻。
「夢幻紳士 出張篇」はアンソロジー短編集『Comic M』に後述する「夢幻紳士 営業篇」とともに収録されている。
この節では夢幻紳士の題が付くものの、新作であるために作者による定義が追いついていない作品、または夢幻紳士を中心として扱わない単行本にのみ収録されたため、定義の範疇に収まらない作品について記述する。
「夢幻紳士 橋の上の女」。2000年に『サスペリア』(秋田書店刊)に掲載された短編。過去の恐怖漫画作品をしのぶ回顧特集のために書き下ろされた作品で、魔実也が怪異に襲われたお人好しの青年「涼平」を救う物語である。作者の漫画『学校怪談』と〈夢幻外伝篇〉の設定・キャラクターを繋ぐ特別編という趣向が強い。
この作品によって魔実也と〈下宿の娘〉との仲が進み、後に彼女との間にできた子の子孫が『学校怪談』の「九段九鬼子」である事、『学校怪談』の主人公「山岸涼一」の先祖が魔実也に命を救われていた事などが(収録単行本あとがきの内容も含めて)強く暗示される構成となっている。
「『夢幻紳士』原作シナリオ 『名前』」。短編集『新装版 我楽多街奇譚』(朝日ソノラマ刊・2007年)に口絵とともに掲載された台本形式の短編小説。2003年あるいは2004年に書かれたまま形にならなかった草稿を加筆修正したものである。執筆時期としては〈夢幻外伝篇〉と〈幻想篇 / 逢魔篇 / 迷宮篇〉の間に位置するが、シナリオには「夢幻紳士 怪奇篇」と記載されている。
「煙童女──夢幻紳士 怪奇篇」。ホラーアンソロジーシリーズ「異形コレクション」第42巻(光文社刊・2009年)に掲載された短編。〈怪奇篇〉のトレードマークでもある煙草に纏わる穏やかな物語である。タイトルに「怪奇篇」の題があるが表現手法は〈幻想篇〉以降のものに近い。
夢幻紳士 回帰篇 | |
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ジャンル | 怪奇 |
漫画 | |
作者 | 高橋葉介 |
出版社 | 早川書房 |
掲載誌 | ハヤカワミステリマガジン |
発表号 | 2008年9月号 (7月25日号) - 2009年9月号 (7月25日号) |
巻数 | 全1巻 |
話数 | 全15話 |
テンプレート - ノート |
『夢幻紳士 回帰篇』。『ハヤカワミステリマガジン』(早川書房刊)に2008年-2009年にわたり連載された。
過去作〈怪奇篇〉のエピソードのうち12話を、作者自身がセルフ・リメイクするシリーズ。各話の基本的なプロットはそのままに一から描き直し、演出表現や回によっては結末に変更を加えた新作となっている。単行本化にともない、作者の次回作『顔のない女』からメインキャラクターがゲスト出演する「プロローグ」「エピローグ」の2話が書き下ろされた。
夢幻紳士 新・怪奇篇 | |
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ジャンル | 怪奇 |
漫画 | |
作者 | 高橋葉介 |
出版社 | 早川書房 |
掲載誌 | ハヤカワミステリマガジン |
発表号 | 2012年9号 (7月25日号) - 2013年8号 (6月25日号) |
巻数 | 全1巻 |
話数 | 全12話 |
テンプレート - ノート |
『夢幻紳士 新・怪奇篇』。『ハヤカワミステリマガジン』(早川書房刊)に2012年-2013年にわたり連載された。
〈回帰篇〉の続編にあたるシリーズ。同作の主人公夢幻魔実也が立ち会う新たな怪異を描く短編連作。
『夢幻紳士 妖鬼篇 座敷鬼』。『モーニング』(講談社刊)2014年44号に、同誌の読み切りシリーズ「プレミアム読み切り劇場REGALO」枠の1作品として掲載された短編。副題を同じくする『夢幻紳士 出張篇 座敷鬼』(前出)とは別作。とある料亭で夢幻魔実也と呼ばれる美青年に知り合った男が遭遇する怪異の物語。
『夢幻紳士〔営業篇〕Come Mad and Go ─さぁ気ちがいになりなさい─』。2016年1月に発行されたアンソロジー短編集『Comic M』に描き下ろされた短編。妄執に取り憑かれた女性と黒衣の青年(夢幻魔実也)の奇怪な受難の顛末を描く。
『Kiss Me』。2013年にKAWADE夢ムック『総特集 高橋葉介 怪奇幻想マンガの第一人者』(河出書房新社刊)に掲載された短編。ある髑髏と魔実也との「Kiss(キス)」を巡る、サイレント形式で進行する4ページのカラー作品。夢幻紳士/夢幻魔実也の名はタイトルや本編中に明記されていない[13]。
夢幻紳士 夢幻童話篇 | |
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ジャンル | 怪奇 |
漫画 | |
作者 | 高橋葉介 |
出版社 | 早川書房 |
掲載誌 | ハヤカワミステリマガジン |
発表号 | 2020年7月号 (7月25日号) - |
巻数 | なし |
話数 | 未定 |
テンプレート - ノート |
ハヤカワミステリマガジン2020年7月号より曜月連載中。
この節では夢幻紳士シリーズとして扱われないが、夢幻魔実也(あるいは明示されないが明らかに魔実也の特徴を備えた人物)の登場する作品について記述する。なおこれらの他に、青年探偵の魔実也が登場する作者自身による同人誌が数作発表されている。
『帝都物語 TOKIO WARS』。1989年、映画『帝都大戦』公開に際して、その原作である『帝都物語』より「戦争篇」を漫画化した単行本書き下ろし作品。
姓名不詳の「帝都の『小悪魔』」として魔実也と思しき人物が登場している。設定および執筆時期から言えば〈怪奇篇〉に属するキャラクターで、物語には直接関わらないがプロローグとエピローグを飾る印象的な人物として登場する。二・二六事件前夜から太平洋戦争終戦に至るまでと登場する時代背景が明白である事も大きな特徴である。
同作には漫画版オリジナルキャラクターとして他に、〈冒険活劇篇〉に登場した馬賊の娘「明鈴」と同じ設定のキャラクターも登場する(おそらく別人)。
「イケニエ」。1989年『SMスナイパー』(ワイレア出版刊)に掲載された短編。
怪異譚の聞き手兼説明役として、魔実也らしき人物が登場する。姓名、立場ともに不詳だが語り手の知己として描かれている。設定および執筆時期から言えば〈怪奇篇〉の魔実也に相当する。
『学校怪談』。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店刊)に1995年-2000年の間連載された少年漫画。〈夢幻外伝篇〉に登場した魔実也がゲスト・キャラクターとして登場する。魔実也の登場は連載時の時間軸で毎年お盆の時期に限られていたが、主人公の窮地を救う重要な人物として描かれ、単行本に書き下ろされたエピローグ「最終話+1」にも登場している。他にセルフ・パロディ的に〈怪奇篇〉や〈夢幻外伝篇〉からカットの構図を引用したコマもある。
本編での魔実也は主人公の1人「九段九鬼子」の先祖であり(2者の血縁関係については「ご先祖さま」という以上の情報は明示せずにぼかして表現されている)、舞台が現代で既に魔実也は死亡しているという設定のため、一種の死霊として登場する。〈夢幻外伝篇〉同様の青年の姿をしているが、精神的には当時より歳を重ねているため言行がやや異なる。特に一人称が「僕」から「俺」 / 「おれ」に変わっているのが特徴。他にも「最近の若い者は」とこぼしたり中学生を「お嬢ちゃん」呼ばわりしたりと、青年らしからぬ言動が多い。子孫の九鬼子に愛情あらわな甘い顔を見せるのも特徴。
他に関連キャラクターとして、本作オリジナルの夢幻家の血筋のキャラクターが数名、また〈夢幻外伝篇〉に登場した悪役「溝呂木紅造」と同姓のコミカルな魔人「溝呂木」(ミゾロギ)が登場する(関連は不明)。作品全体としては夢幻紳士シリーズとの関連性は薄いが、作者は九鬼子を魔実也の「女性バージョン」という意識で描いていたと発言している[14]。また、本作の中で夢幻家は代々女系であり魔実也は傍流にあたるという新設定が与えられている[15]。
「沼姫さま」。2006年『ホラーM』(ぶんか社刊)に掲載された短編。
物語と直接的な関連は薄いが、釣り人の役で魔実也らしき人物が登場する。台詞が無いため、姓名、立場ともに不詳だが設定および執筆時期から言えば〈幻想篇/逢魔篇/迷宮篇〉の魔実也に相当する。
「もののけ草紙」。『ホラーM』(ぶんか社刊)に2007年9月号より連載された。
〈逢魔編〉〈迷宮篇〉に登場した少女「手の目」を主人公にしたスピンオフシリーズ。手の目の思い出の「若旦那」として魔実也の姿が登場する。
夢幻紳士作品群の世界観の差異、具体的には「どの夢幻魔実也とどの夢幻魔実也が別人なのか」という問題について作者は数度にわたり定義と再定義を行なっている。以下はその経緯である。