安全靴(あんぜんぐつ、Safety boots)とは、主に工事現場や重い機械・部品を扱う工場内や、鉱業、建設業などの足への危険を伴う作業場で使用される着用者の足を保護することを目的とした靴。狭義にはJIS規格に合致したものを、やや広義にはJIS規格と同等の安全性を持つものをいうが、JIS規格より安全性の低い軽量タイプをも含むことがある。また、人体に帯電した静電気を靴から逃がすことを目的とした静電気帯電防止靴(静電靴)にも安全靴の性能を持つものや、厨房などで使用するため油や水に対する滑り止めが重視されたもの、転倒防止のため靴紐が省かれ様々な体位での使用し易さや歩行が多いため柔軟性が重視された医療従事者向けなどの物などがある。 本項ではJIS規格に定義された「安全靴」だけでなく、プロテクティブスニーカーなど「足を保護する目的の靴」について記載する。
足先への重量物の落下や釘などの踏み抜きから作業者の足を守るため、普通の靴においては皮革ないし軟質合成樹脂製である先芯や中底が鋼板でできていることが特徴である。軽量化のため硬質合成樹脂製の先芯を使った安全靴もある。他にも靴底が耐油性のある素材や硬質のポリウレタンやゴムでできたものもある。革の靴底が用いられることは少なく、総じて一般的な革靴より重い。
溶接作業においては、火花が散るため、人造皮革よりも、安全靴が炎上し難い本革の安全靴を推奨している。
表面素材は革やメッシュや布であったりする。外見は普通の長靴・半長靴・短靴タイプのものや、スニーカーや前ゴムシューズタイプのものがある。 甲皮の硬さ、ゴム製靴底や先芯による重さ、製法に起因する通気性の悪さなどが相まって、一般的に履き心地は良くない。別売りの中敷きなどを使用すれば履き心地は改善するが、静電安全靴・絶縁作業靴など、種類によっては中敷きの使用によりJIS規格の適合条件から外れ、機能が損なわれることに留意しなければならない。一方で、踏み抜き防止などの特殊機能を備えた安全靴専用の中敷きも市販されている。
JIS規格において、材質や安全性などについて規格が定められている。これらの規格を満たしたものだけが「安全靴」という名称で販売される。JIS規格における強度などの基準値を満たしていても、材質などがJIS規格を逸脱している場合は「作業靴」や「プロテクティブスニーカー」という名称で販売されることもある。 労働安全衛生法・労働安全衛生規則によって、作業内容・環境に合わせた安全靴着用の義務が定められている。
「重量物で靴先が潰れると鋼板が足先に食いこんで指が切断される、安全靴は普通の靴より危険」との噂があったが、実験番組"怪しい伝説"によれば、それは完全な誤謬と結論付けられた。実際の現場において、安全靴が歪むような事故は、極めて珍しく、普通の靴で作業する危険性を考えれば、安全靴の有効性は明白である。作業者は、普通の靴を履く危険性を負うよりも、履きやすい安全靴を探すべきである。
その安全性の高さから、オートバイの運転時に履かれることもある。
足を保護するための性能を有していても、材料や製法、構造がJIS規格に合致しない場合は安全靴と呼ぶことは出来ない。しかし、海外製の先芯を装着したスニーカータイプの靴の輸入増加に伴い、消費者が安全性についての適正な判断を行うために、日本プロテクティブスニーカ協会(JPSA)により、JIS規格と同等の業界標準(JSAA規格)が設けられており、JIS規格対象外の靴でも、JPSA規格に合致する製品に推奨マークを表示している。 プロテクティブスニーカーの規格は下記のようになっている。