野球において審判員(しんぱんいん)または、アンパイア (英: umpire(s)) は、試合の進行と判定を行う者である。
MLBの審判はアマチュアゲームを皮切りに、マイナーリーグの審判を経験し、一握りの者だけがメジャーリーグの審判を務めることができる[2]。
日本プロ野球では1950年の2リーグ分裂後、セントラル野球連盟、太平洋(パシフィック)野球連盟それぞれで審判員を採用していたが、2011年より各リーグの審判業務を統合し、日本野球機構審判部の審判委員として活動することになった。
審判団の責任者を責任審判員という。少年野球では球審が審判の責任者(責任審判員)を兼務していることが多い[3]。ただし日本プロ野球の場合は「球審=責任審判員」とは必ずしも限らない。
球審(きゅうしん、英: umpire-in-chief ; plate umpire)は、通常は捕手の後方に配置されるが、単独審判制で審判を行う場合には、状況に応じて、投手の後方に位置することもある。試合を司る重要な役割を担い、その任務は、投球の判定や打者に対する判定、競技の進行に関わる宣告など多岐にわたる。特に投球の判定は、1試合につき200球~400球ほどに及び、膨大な集中力と持久力が要求される。また、投球やファウルボールが球審の身体に当たることも珍しくなく、他の審判員と異なり、怪我防止のために防具を装備する必要がある。
従来は新聞報道、実況放送、場内アナウンス、スコアボード等で球審を指して主審(crew chief ; chief umpire)と呼んでいたが[注釈 1][4][5]、野球には主審という肩書名称の審判員は存在しない。主審に相当するのは責任審判員であり、球審が責任審判員であるとは限らない。球審を主審と呼ぶ例は減りつつあるが、使用例も散見される[6][7][8][9]。
スコアボードでは、「CH」、「PU」、「PL」、あるいは単に「球」と表記される。
塁審(るいしん、英:base umpire(s) ; field umpire(s) )は複数審判制で審判を行う場合に、内野に配置される審判員のことをいう。日本のプロ野球でもっとも一般的である4人審判制では、塁審は通常、一塁・二塁・三塁の各塁付近に位置する。3人審判制・2人審判制では、塁審の数がそれぞれ2人・1人となり、球審とともに、走者や打球の状況によってそれぞれフォーメーションを対応させながら判定を行う。6人審判制では塁審に加えて外野にも審判員(外審)が配置される。いない場合は、一塁・三塁の塁審が外野に飛んだ打球についても判定の責任を持つ。
一塁や三塁に塁審が立つ場合は、原則としてファウルラインをまたがず、ファウルライン際のファウルグラウンドに立つ。これは万が一飛球が塁審に当たった場合に、迷わずファウルボールと判定できるためである。二塁塁審が内野内に位置する場合は、選手のプレイの妨げにならないよう注意しながら、腰を落とした低い姿勢で身構える(膝を突いた体勢で構えると、打球が飛んできた場合など、とっさのときに身動きが取れなくなってしまうので、膝は突かない)。しかし備えてはいても、予想しなかったバウンドをした打球に当たったり、周りが見えていない選手の体当たりを受けたりするハプニングが発生する。内野内にいる二塁塁審に打球が当たった場合は打者に一塁が与えられる(規則5.06(c)(6))。
外審(がいしん)は、6人審判制のときに外野に配置される審判員のことをいう。外野審判(がいやしんぱん)とも呼ばれる。レフト側とライト側に各1名が配置され、英語での呼称はそれぞれ left field umpire, right field umpireである。以前は線審、またはラインアンパイアーと呼ばれていたが、外野の広範囲における打球の判定を行うことから、現在ではこの名称で呼ばれている。
定位置は、かつては主にオーバーフェンスかどうかなどの判定をしやすいよう[注釈 2]外野フェンス際でファウルラインをまたいだ位置となっていた[注釈 3]が、現在はハーフスイングの判定をしやすいようファウルポールと一・三塁ベースとの中間からフェアグラウンド内に約1.5メートル入った地点である。
NPBではセ・リーグが1990年から、パ・リーグでは1996年から公式戦・オープン戦において外審を廃止し、4人審判制で試合を行っている。4人審判制では一塁・三塁塁審が外審の役割を兼ねるが、塁審の位置から外野フェンスまでは距離があり、両翼ポール際に飛んだ打球の判定(本塁打かファウルボールか等)でしばしば判定抗議による試合中断などが起きたため、NPBでは2010年シーズンからビデオ判定制度(現在のリクエスト制度)が導入された(当初は本塁打かどうかの判定のみ)。現在、NPBが外審を置くケースは日本シリーズ・クライマックスシリーズおよびオールスターゲームのみとなっている。
高校野球では、阪神甲子園球場で行われる選抜高等学校野球大会、全国高等学校野球選手権大会において、日没以降の試合(ナイター)となる場合に限り、外審が配置される。
公認野球規則4.19〔注〕の定めに基づき、日本のアマチュア野球では提訴試合が認められていない。そのため日本のアマチュア野球における公式試合では、試合担当審判員が規則適用を誤った場合、それによって起こる抗議や紛争を即時解決できるような規定を定め、これに基づいて控え審判員の制度を設けていることが多い。
控え審判員は、試合を担当する審判員が規則適用に関する明らかな間違いを犯している場合には、誤った規則を適用されたチームの抗議の有無に関係なく、その誤りを訂正させることができる。たとえば、アウトカウントやボールカウントを常に確認し、カウントの間違いがあれば訂正させることができる。 また、試合を担当する審判員が裁定に苦しむときは、控え審判員と協議することができるうえに、試合担当審判員は控え審判員にその裁定を仰ぐこともできる。
日本プロ野球にも控え審判員は置かれているが、プロの場合は試合担当審判員の急病や、事故などのときに緊急出場する場合、リクエストなどの際の判定の決定などのために置かれており、目的が異なる。
野球の審判員は球審・塁審・外審の区別なく、タイム、ボーク、インフィールドフライ、反則投球などによるボールの汚損の宣告、その他、ルールの適切な適用を行う権限が同等に与えられており、これを遂行する任務がある。
さらに球審には以下のような任務がある。
塁審は主に塁における判定や走者に関する判定を行うが、試合の状況によっては定位置にあたる塁以外でも判定を行う場合がある。また、一塁または三塁に位置する塁審にあっては、ハーフスイングのときに球審から要求があった場合の、スイングの判定も重要な役割となる。
飛球を捕球できたか否か(アウト、ノーキャッチ)や、打球のファウルボール、フェアボールの判定、スタンドに入ったボールが本塁打か否か(エンタイトルツーベースあるいはファウルボール)などの判定については、内野を越えるまでは原則として球審が、塁を超えていく打球については原則として塁審が判定を行う。さらに外審が配置されている場合は、塁審の頭上を越えて外野に飛んでいく打球について外審が判定を行う。
公認野球規則あるいはOfficial Baseball Rules では審判員が宣告しなくてはならない項目が定められているが、そのジェスチャーは定められていない。統括団体によってはその団体主催の試合に限定してジェスチャーを規定している場合もある。
審判が6人いる場合は判定担当地域がほぼ決まっているが、4人以下の場合は状況によって変わる。
例:4人制で走者無し、センター後方への飛球の場合
球審:三塁へ向かう。
一塁塁審:打者走者の一塁触塁を確認後、必要があれば本塁へ向かう。
二塁塁審:打球を追って外野へ向かう。
三塁塁審:二塁へ向かう。
まれに分担がうまくいかず二人の審判が別々の裁定を行ってしまうこともみられる。
アメリカ・メジャーリーグのレギュラーシーズンにおいては4人制が採用されており、オールスターゲームとプレーオフ、ワールドシリーズにおいてのみ6人制となっている。マイナーリーグでは基本的に4人制が採られることはなく、3Aは3人制(まれに4人制有)、2A・1A及びアマチュアは2人制となっている。
前述の通り、日本ではプロ・アマとも4人制が基本である。ただし、オールスターゲーム、日本シリーズ、および各リーグのプレーオフ (2007年からはクライマックスシリーズ) では外野審判を配置し6人制とすることになっている。かつてはセントラル・リーグが1989年まで、パシフィック・リーグが1995年まで、それぞれ公式戦全試合で外野審判を置いていた。プロ野球の二軍は3人制(まれに4人制あり)が採られる。社会人の硬式野球においては、都市対抗野球本選と日本選手権本選で2004年まで全試合外審が配置されていたが、2005年より廃止された。アマチュアでは3人制や2人制を敷いているところもある。
日没や濃霧などの理由で視界が悪くなってきた場合、試合途中から6人審判制に切り替える場合もある。
単独審判制の場合、審判員は球審のみである。球審は判定を行うにあたって最適な位置を占める。基本的には無走者の場合は本塁後方、走者がある場合には投手の後方に立つ。
本塁上に球審を配置するほか、塁審を1名配置する。塁審は、無走者の場合は一塁におけるプレイを判定する。走者がある場合には投手の後方に立ち、球審とともに各塁の判定を行い、打球、送球の状況に応じてフォーメーションを対応させる。
本塁上に球審を、一塁と三塁に塁審を配置する。フォーメーションは原則として以下のとおりであるが、走者や、打球、送球の状況に応じて対応させる。
本塁上に球審、一塁、二塁、三塁の各塁に塁審を配置する。塁審は、走者の位置、打球、送球の状況に応じてフォーメーションを対応させる。
二塁塁審は、一塁・二塁に走者がいない場合(1)は一・二塁の延長線上(外野)に、一塁または二塁、あるいは両方に走者がいる場合(2)は二塁から約5m離れた内野内(投手の後方)に立つ。ただし三塁に走者がいて内野手が内野内に近い場所で守る場合は外野に立つ。
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6人審判制の場合は塁審に加えて左翼・右翼のファウルライン際に外審を配置する。外審が立つ定位置は、1990年代まではレフト側・ライト側にそれぞれ設置されているポールの真下であった。これは、観客席から打球が跳ね返りやすい構造の球場が多いため、打球が跳ね返ったときに、フェアゾーンのスタンドか、ファウルゾーンのスタンドか、どこに当たって跳ね返ったのかを見極めるためとされてきた。2000年代からは観客席から打球の跳ね返りが少ない球場が増えてきたため、左翼側の場合はレフトポールと三塁との中間地点で内側へ約1.5メートル入った地点、右翼側の場合はライトポールと一塁との中間地点で約1.5メートル内側へ入った地点とされている。1.5メートル内側へ入る理由は、外審の立つ位置から球審・捕手・打者・投手の動作を完全に見るためである。
インサイドプロテクターを使用する際は、以下詳説するスロットスタンス、ボックススタンス、シザーススタンス、ニースタンスの4つの構え方のいずれかを採用する。人それぞれ体型や身長が違うので、どの構えが見やすいかは個人によって差があるが、いずれの構えも身体の中心は本塁の打者側の縁に位置するのが基本である。
アウトサイドプロテクターを使用する際は、両肩にかけた状態で身体の中心をホームプレート真ん中に合わせ、両足を開き自然体で構える。左右打者を問わず、また捕手が左右いずれかに寄ろうと関係なく、アウトサイドでの球審は常にホームプレート真ん中で構える。次に投手がモーションを起こすと同時に両足を並行に肩幅より広めに開き、プロテクターのくぼみ部を下顎にぴったりとくっつけ、腰と膝を曲げてやや前傾姿勢で構える。このとき、プロテクターはインジケーターを持った左手のみで支え右手は軽く左手に添える。また、構えたときにプロテクターをあまり前に突き出さず、心持ち少し前に出す程度にする。
アウトサイドプロテクターを用いた場合でも、インサイドプロクターを用いた場合でも、構えたらその位置から投球を目だけで追い、投球の方向へ顔や身体を動かしてはいけない。
アウトサイドプロテクターではマスクは左手で外すか(プロ野球においては、田中俊幸と三浦真一郎、小林毅二が常に左手で外していた)、右手で外して左脇に抱えるか左手に持ち替える。この場合、セーフと判定するときは片腕でもよい。
インサイドプロテクターではマスクを左手で外す。右手はアウト・セーフの判定を示すための手であるので、その右手をいつでも瞬時に使えるようにするのが目的である。その際、左手でマスクの左隅部分を持って正面(打球の方向。ただし、捕手ファウルフライを除く)を向いたまま外す。
右腕をベルトから抜く。左脇を開け、右手の掌をプロテクターの右角に当て、そのまま押し上げ、背中に背負う。押し上げる間がなければ、左脇に挟んでもよいし、左肘にかけている状態でもよい。いずれの場合も、プレイの判定に支障が出ないように気をつけなければならない。
背中に上げたら左脇を閉めて、プロテクターが下がってこないよう支える。 なおプロ野球において、試合中常にプロテクターを背負っていた審判員は、山本文男、藤本典征、福井宏がいる。
野球の審判員を行う際には、審判服・審判帽を着用し、
などが必要である。球審ではこれに加え
などが必要となる。ただし、野球のレベル、硬式・軟式の違いなどによって、この中から省くものもある。
一般に、スポーツの審判員は同じ服装で試合に臨むのが原則である。しかし野球では、球審だけが違う審判服を着ていることもある。これは、球審がインサイドプロテクターを装着することにより、塁審と暑さ・寒さの感じ方が変わるうえに、個人によって暑がり・寒がりもいるため、気候やその日の天候、個人のコンディションなどを考慮し、球審は最も審判しやすい服装で臨んでよいという申し合わせがなされているからである。
たとえば塁審はブルゾンであるのに対して球審は半袖シャツかブレザー、塁審は黒色シャツであるのに対して球審は水色シャツ、塁審は長袖シャツだが球審は半袖シャツなどの服装の違いが見られることもある。