封入胎児(ふうにゅうたいじ、英: fetus in fetu, inclusio fetalis、独: Fetus in fetu, fetale Inklusion、仏: fœtus in fœtu、羅: fetus in foetu)は、二重体と呼ばれる一卵性双生児奇形の特殊な場合。一卵性双生児の片方の発育が極端に悪く、もう片方の体内に寄生するように発育したもの[1]。別名・胎児内胎児(たいじないたいじ)。
発生学的原因及び奇形腫との違いは、完全には解明されていない[2]。発生確率は出生50万例に1例程度[3]。さらに稀に、2体の寄生体が発育していることがあるが、文献に報告されたのは全世界で100例未満[4]。
発育が悪いほうを寄生体、良好な方を自生体と呼ぶ。寄生体は自生体の頭蓋腔、眼窩、胸腔(縦隔)、腹腔(腹膜腔)、骨盤腔に存在することが多く、栄養を自生体に依存する[5][6]。最も高度に分化した成熟奇形腫ととらえる見方もある[7]。
CT、超音波などの画像診断と組織病理学により発見されるケースが多い[2]。寄生体はほとんどの場合無脳症であるが、ほぼすべての症例で脊柱と四肢が存在する(それぞれ91%と82.5%)。そして下肢は上肢よりも発達している[4]。脊柱があることにより、奇形腫ではないと診断される。
封入胎児という名称は完全に統一されてはいない。
『医科学大事典』[5]・『学術用語集 医学編』[8]・『日本医学会医学用語辞典 英和』[9]・『南山堂医学大辞典』[6]は「封入胎児」を、『看護大事典』[7]・『ステッドマン医学大辞典』[10]・『医学英和大辞典』[11]は「胎児内胎児」を主な見出し語とする。
その他、『研究社 医学英和辞典』は"fetus in fetu"の訳語として「封入奇形胎(児), 胎児内胎児」を挙げる[12]。