幸運は勇者を好む(こううんはゆうしゃをこのむ、ラテン語: Audaces fortuna iuvat、英語: Fortune favours the bold)は、ラテン語由来の成句。英語の場合に勇者に相当する "bold" の部分は、"brave" や "strong" の場合もある。歴史的に英語圏の軍関係者に用いられており、現在においても個々の家系の紋章にも使用されている。
「幸運は勇者を好む(Fortune favours the bold)」は、ラテン語の成句に由来し、多少、言葉は異なるがほぼ同じ意味として "ラテン語: audentes Fortuna adiuvat"、"Fortuna audaces iuvat" "audentis Fortuna iuvat"[1]などがある。特に最後のものは、ウェルギリウスの『アエネーイス』の敵役であるトゥルヌスが用いている[2]。 "Fortuna" は運、もしくはそれを司るローマ神話の女神フォルトゥナを指す。
この成句の別のバリエーションとして、テレンティウスの紀元前151年の喜劇「ポルミオ」の第203行目に「ラテン語: fortes Fortuna adiuvat」が登場する[3]。 オウィディウスの『恋の技法(アルス・アマトリア)』では、この言葉を流用した "audentem Forsque Venusque iuvat" (ヴィーナス(愛と美の女神)はフォルトゥナ(幸運の女神)のように勇者を好む)が用いられている。
小プリニウスの記録によれば、紀元79年のヴェスヴィオ山の噴火に際して、叔父の大プリニウスは、友人ポンポニアヌス(Pomponianus)の救出及び火山調査のため、艦隊を率いて同地に向かうことを決めた時、「'Fortes' inquit 'fortuna iuvat: Pomponianum pete.'(「幸運は」と彼は言った。「勇敢な者を好む。ポンポニアヌスの下に行くぞ」)」と引用している[4][5]。 大プリニウスと彼の部下たちは、最終的にこの遠征中に亡くなった。
ラテン語の「Fortuna Eruditis Favet(幸運は用意周到な精神を好む)」という言葉も使われている。フランスの細菌学者ルイ・パスツールはこんな言葉を残している。「Dans les champs de l'observation le hasard ne favorise que les esprits prepares(観察の場において、好機は用意周到な精神のみを好む)」。
元は「大胆さは行動の始まりだが、その終わり方は幸運が支配する(古代ギリシア語: Τόλμα πρήξιος αρχή, τύχη δε τέλεος κυρίη、ローマ字:Tolma prexios arche, tuche de teleos kurie)」というデモクリトスの言葉を言い換えたものの可能性がある。