弦楽四重奏曲 ホ短調は、ジュゼッペ・ヴェルディの現存する唯一の室内楽曲であり、《アイーダ》のナポリ公演のさなかの1873年の春に作曲された。
1873年の3月上旬を予定されていた《アイーダ》の公演は、ソプラノ歌手、テレサ・シュトルツの急病により延期されていた。ヴェルディはナポリで空いた時間で室内楽の作曲に集中し、《アイーダ》の初演に遅れること2日の1873年4月1日に、逗留先のホテルにおける非公開のリサイタルで《弦楽四重奏曲ホ短調》の初演を行なった。そのときの演奏者は、ピント兄弟のヴァイオリンと、サルヴァドーレのヴィオラ、ジッタリティエッロのチェロであった。
ナポリの余暇に四重奏曲を作曲しました。ある日の晩に、自分のホテルでこれを演奏してもらいましたよ。重要な曲と並べることはちっともしないで、しかも特に誰も招かずにね。お客は、私を訪ねて来るいつもの7 - 8人だけでしたな。この四重奏曲は美しいのか醜いのか。私には分かりません。私に分かるのは、それでもこれが弦楽四重奏曲だということです!
ヴェルディの卑下するような口調にもかかわらず、本作は19世紀の弦楽四重奏曲の古典的なレパートリーに数えられており、時に弦楽合奏用の編曲が演奏されることもある。
以下の4つの楽章から成り、スケルツォ風の終楽章がフーガとして構築されていることで名高い。