「愛ある別れ 」(あいあるわかれ、原題:If You Leave Me Now )は、アメリカのロックバンド、シカゴ の楽曲。アルバム『シカゴX カリブの旋風 』に収録され、1976年7月30日にシングルとしてリリースされた。
また、1983年にコロムビア・レコード (現:SMEI )から発売されたシカゴのコンピレーションアルバム (コロンビア38590)のタイトルにもなっている。
作詞・作曲はピーター・セテラ 。
ボーカルもピーター・セテラが務め、ブラス・セクションを活かした音楽性が特徴である。
当時のシカゴとしては珍しいラブ・バラードでありながら、世界各国でヒットし、シカゴの認知を広める一曲となった。
1976年10月23日にはBillboad Hot 100 のトップに立ち、2週間その座に留まりグループにとって初のナンバーワンヒットとなったほか、イージーリスニングチャートでも1位を獲得した。
収録アルバムとしては前々作となる『シカゴⅧ 未だ見ぬアメリカ 』以降、シカゴはOR・ポップス路線へと移行し始め、その到達点としてこの曲は全米ナンバーワンヒットを記録したが、一転してバンドのリーダーであるテリー・キャス やロバート・ラム はこのような音楽性に反対した。
2010年、シカゴはアメリカ癌協会 と提携しヒット曲となった『愛ある別れ』を彼らのコンサートのライブステージで一緒に歌う機会をオークションによる入札方式で提供し、その収益は乳癌と戦うためにアメリカ癌協会に送られた。この募金活動はその後も継続されている。
アメリカの音楽業界誌Cash Box はこの曲を「優れたバラード 」であり、「豊かな色彩の」インストゥルメンテーションと「丁寧に構築された」ヴォーカルを備えていると評した。
2016年にグループがロックの殿堂入り した際、エンターテイメントとポップカルチャーのライターであるTroy L. Smith は、「殿堂入りの候補に対する疑念を払拭する(原文:kill any doubt about their candidacy)」シカゴの7曲のリストに『愛ある別れ』を入れ、「バンドの名声と、それによるロックの殿堂入りに大きく貢献するものだ。」「そして正直なところ、ピーター・セテラはシカゴの曲の中で間違いなく最高のボーカルを披露している」と述べている。
この曲はシカゴにとって国際的にも最大のヒットとなり、シカゴの活動拠点であるアメリカのほかにもイギリス、オーストラリア、アイルランド、カナダ、オランダといった他の国々でもチャートを制覇している。特にイギリスでは3週間1位を維持した。1999年にアメリカで設立されたオンライン誌『PopMatters 』のライターであるZachary Houleは、「この曲は発売と同時にラジオに浸透し、ニューヨークでチューニングした人は、それぞれフォーマットの異なる4つの局で同時にこの曲が流れたと言われています。」と評した。
編曲を手掛けたジミー・ハスケル と、プロデューサーのジェームズ・ウィリアム・グエルシオ が、グラミー賞 の最優秀編曲伴奏ボーカリスト賞を受賞した。また、デュオ、グループ、コーラスによる最優秀ポップヴォーカルパフォーマンス賞を受賞し、これがグループにとって初のグラミー賞受賞となった。また併せてグラミー賞のレコード・オブ・ザ・イヤーにもノミネートされている。
さらに、発売から1978年の8月まででこの曲はアメリカだけで140万枚を売り上げ、RIAA からゴールドとプラチナに認定されている。 2020年6月の記事で、The Guardian は「The Greatest UK No 1s: 100-1」のリストの73位に『愛ある別れ』を挙げ、「あり得ないほど瑞々しくて美しく書かれているが、その悲しみは浸透していて心を揺さぶるものである。」と指摘した。
「愛ある別れ」はビデオゲームやアニメーション作品といったメディアにも起用されている。以下はその一例。
2013年に発売されたビデオゲーム『グランド・セフト・オートV 』のサウンドトラック に収録(ゲーム内のラジオ局「Los Santos Rock Radio」に収録されている)。また作中においては主人公の一人トレバー・フィリップスが、自身が誘拐した麻薬王の妻を返す際のBGMとしても使用されている。
米国のアニメ作品『サウスパーク 』の1話「Casa Bonita」に登場。
アメリカのコメディ番組『モダンファミリー 』の第3シーズン12話「Egg Drop」で取り上げられている。
イギリスのコメディホラー映画『ショーン・オブ・ザ・デッド 』では、ショーンがまだ別れを引きずっており、エドが彼を励まそうとするシーンでこの曲が登場した。
2000年代初頭には、ウェブサイトPets.com(現在は閉鎖済み)のCMでマスコットの「ソックパペット」がこの曲を披露した。
1999年の映画『スリーキングス 』でサウンドトラックに収録。この映画の舞台は91年の湾岸戦争時代のイラクになっており、ワシントン・ポスト紙 でこの映画をレビューしているデッソン・ハウは、映画監督のデヴィッド・O・ラッセル が、このシーンで移動中の車の外の「狂乱の混乱音」から、この曲の「やさしい音」が流れている車内に切り替えたことを語っている。
Amazon Prime Video の自動車ドキュメンタリーシリーズ『The Grand Tour 』で2024年に配信開始されたシーズン5・エピソード3内でサハラ砂漠の砂丘を駆け抜ける際のBGMとして使用されている。
1993年 2月1日 、ドイツの音楽グループ、Chess がこの曲をカバーした。原曲がバラードであるのに対し、Chessのバージョンはアップテンポでダンサブルであり、これは1990年代のダンスミュージック 事情にマッチしている。このバージョンは、コンピレーション『Larry präsentiert: Neue Smash-Hits 93』(英語:Larry presents: New Smash-Hits 93)と『Maxi Dance Sensation 9』にも収録されている。
CD maxi-single
If You Leave Me Now (Airplay Mix) - 3:53
If You Leave Me Now (12" After Dark mix) - 5:13
Please, Don't Leave Me (Instrumental Mystery Mix) - 5:16
チャート (1993)
最高順位
ドイツ[ 33]
67
ピーター・セテラ は1997年のアルバム『You're the Inspiration』でソロ・アーティストとして「If You Leave Me Now」を再録音している『A Collection』、近年では2018年のアルバム『Friends and Legends Duets』でイタリアのボーカリスト、フィリッパ・ジョルダーノ とこの曲のデュエットバージョンを録音した。
ウェブサイトSecondHandSongs によると、1976年から2020年の間に世界中のレコーディング・アーティストが「If You Leave Me Now」を130曲以上カバーしており、その中には以下のようなものがある。
スージー・ボグガス は2007年のアルバム『Sweet Danger』のためにこの曲を録音した。ビルボード のレビューでは、彼女のバージョンは「親しみやすく新鮮」と評された。
ヴィオラ・ウィルス は「If You Leave Me Now」のディスコ・バージョン をリリースし、1981年 にシングルとしてリリースされ、B面には「I Can't Stay Away from You」が収録された。彼女のバージョンはフランスの電子音楽デュオ、ダフト・パンクによって、彼らの1997年 のアルバム『Homework』収録の「Teachers」「Fresh」という楽曲にサンプリング されている。
イギリスのDJ、プロデューサー、ソングライターでアウトロー・ポッセ の元メンバーであるK-Geeは、ミシェル・エスコフェリーとともに、K-Geeの2002年 のアルバム『Bounce to This』で「If You Leave Me Now」のヒップホップバージョンを演奏した。2000年、K-GeeはビルボードのライターKwakuに「If You Leave Me Now」のコーラスは「太く聴こえる」と思うと語った。
^ David Kent's "Australian Chart Book 1970-1992" Archived March 5, 2016, at Archive.is
^ “Chicago – If You Leave Me Now – Austriancharts.at ” (ドイツ語). austriancharts.at . Hung Medien. January 10, 2013 閲覧。
^ “Ultratop.be – Chicago – If You Leave Me Now ” (オランダ語). Ultratop . Hung Medien. January 10, 2013 閲覧。
^ “Top Singles” . RPM 26 (2): 23. (October 9, 1976). ISSN 0315-5994 . http://www.collectionscanada.gc.ca/rpm/028020-119.01-e.php?&file_num=nlc008388.5082A&type=1&interval=50&PHPSESSID=m89iq841abagb37ld9c0fdc1f3 January 10, 2013 閲覧。 .
^ “Item Display - RPM - Library and Archives Canada ”. Collectionscanada.gc.ca (October 9, 1976). March 10, 2018 閲覧。
^ “Dutchcharts.nl – Chicago – If You Leave Me Now ” (オランダ語). GfK Dutch Charts . Hung Medien. January 10, 2013 閲覧。
^ “Tous les Titres de l'Artiste choisi ” (フランス語). InfoDisc (1976年11月4日). September 13, 2017時点のオリジナル よりアーカイブ。11 March 2019 閲覧。
^ “Single – Chicago, If You Leave Me Now ” (ドイツ語). charts.de . Media Control . August 13, 2014時点のオリジナル よりアーカイブ。January 10, 2013 閲覧。
^ "The Irish Charts – Search Results – If You Leave Me Now" . Irish Singles Chart . Retrieved July 11, 2017.
^ “Classifiche ” (イタリア語). Musica e Dischi . May 28, 2022 閲覧。 Set "Tipo" on "Singoli". Then, in the "Artista" field, search "Chicago".
^ “Norwegiancharts.com – Chicago – If You Leave Me Now ”. norwegiancharts.com . Hung Medien. January 10, 2013 閲覧。
^ “charts.nz – Chicago – If You Leave Me Now ”. charts.nz . Hung Medien. January 10, 2013 閲覧。
^ “SA Charts 1965–March 1989 ”. 2 September 2018 閲覧。
^ “Swedishcharts.com – Chicago – If You Leave Me Now ”. swedishcharts.com . Hung Medien. January 10, 2013 閲覧。
^ “Chicago – If You Leave Me Now – Hitparade.ch ” (ドイツ語). hitparade.ch . Hung Medien. January 10, 2013 閲覧。
^ Cash Box Top 100 Singles, October 23, 1976
^ Kent, David (1993). Australian Chart Book 1970–1992 (illustrated ed.). St Ives, N.S.W.: Australian Chart Book. p. 428. ISBN 0-646-11917-6
^ “National Top 100 Singles for 1976 ”. Kent Music Report (December 27, 1976). January 11, 2022 閲覧。
^ “Item Display - RPM - Library and Archives Canada ”. Collectionscanada.gc.ca . October 11, 2016 閲覧。
^ “Top Selling Singles of 1976 | The Official New Zealand Music Chart ”. Nztop40.co.nz (December 8, 1963). October 11, 2016 閲覧。
^ “Top 100 1976 - UK Music Charts ”. Uk-charts.top-source.info . October 11, 2016 閲覧。
^ “Top 100 Hits of 1976/Top 100 Songs of 1976 ”. Musicoutfitters.com . October 11, 2016 閲覧。
^ “Top 50 Adult Contemporary Hits of 1976 ”. www.45cat.com . December 6, 2017 閲覧。
^ “The Cash Box Year-End Charts: 1976–Top 100 Pop Singles ”. Cashbox Magazine . June 22, 2012時点のオリジナル よりアーカイブ。May 3, 2019 閲覧。
^ Cash Box 年末チャート: Top 100 Pop Singles, December 25, 1976 [リンク切れ ]
^ Kent, David (1993). Australian Chart Book 1970–1992 (illustrated ed.). St Ives, N.S.W.: Australian Chart Book. p. 429. ISBN 0-646-11917-6
^ “Top 20 Hit Singles of 1977 ”. 2 September 2018 閲覧。
^ Swiss Year-End Charts, 1977
^ “Billboard Hot 100 60th Anniversary Interactive Chart” . Billboard . https://www.billboard.com/charts/hot-100-60th-anniversary 10 December 2018 閲覧。 .
^ "Canadian single certifications – Chicago – If You Leave Me Now" . Music Canada . 2013年1月10日閲覧 。
^ "British single certifications – Chicago – If You Leave Me Now" . British Phonographic Industry . 2013年1月10日閲覧 。
^ "American single certifications – Chicago – If You Leave Me Now" . Recording Industry Association of America . 2013年1月10日閲覧 。
^ Chartsurfer.de. “If You Leave Me Now von Chess [DE ]”. www.chartsurfer.de . 2023年5月22日 閲覧。