接着芯地(せっちゃくしんじ)とは、洋服をはじめとする衣料品をつくるとき、副素材として用いられるもので、衣服のシルエットを形づくる芯すえ作業(芯地を表地に装填する縫製の工程)を接着によって実現してしまう芯地のことをいう。
織物、編物、不織布などを基布にして、熱を加えることによって、接着性を発揮する熱可塑性の接着剤(合成樹脂)を付与したもので、使用されている接着剤の性能に適応した「温度」「圧力」「時間」にしたがって、加熱しながらプレスすることによって、衣服の表地に接着することができる。
接着芯地は衣料の縫製工程において、革命的な変化をもたらし、衣服の工業生産を高度に発展させたところに最大の特徴がある。
生産性の向上
機能性の向上
接着芯地(Fusible interlining)の誕生は1900年の初めごろとされている。綿布の表面に熱可塑性の樹脂を塗布し、芯地として使用するという特許がヨーロッパで公告され、これが接着芯地のはじまりとみることができる。しかしこの時代のタイプは接着によって風合いが硬くなるという欠点があり、用途がかぎられていた。
接着芯地の登場をうながす遠因としては、第二次世界大戦後の労働力不足が挙げられている。大戦後、ヨーロッパでは衣料縫製の分野でも、熟練の縫製技術者不足が深刻化、衣服造りのシステムそのものを改革する必要が生じてきた。おりから合成繊維が登場、さらに高分子化学が急速に発展し、樹脂接着剤も相次いで新しい製品が登場してくる。
そうした時代のニーズと化学の発展が相まって、衣服づくりの合理化・省力化素材としての接着芯地が登場してくるのである。1950年ごろに現在の接着芯地の原型と思われる製品が市場に現れ、1957年には、粉末の接着剤を芯地表面にランダムに撒布した「シンター・タイプ」「ランダム・パウダー・タイプ」の芯地が開発されている。
そして1964年にはドット(点)状の定量接着剤を等間隔に配置する「ドットタイプ」の芯地が開発され、接着による衣服の縫製を本格的に推進してゆくことになる。
日本では1960年前後に不織布メーカー各社が、ランダム・パウダー・タイプの不織布の接着芯地を発売しているが、本格的な接着縫製に適応する織物接着芯地の登場は1966年ごろで、ダイニックが英国ステーフレックス社から技術導入して、日本で初めて織物ベースの接着芯地を発売している。
1977年に日本の織物接着芯地の先発メーカー5社(旭ピカルディ、ダイニック、東海サーモ、日東紡績、日本ハスケル)が、接着芯地協議会を結成した。
接着芯地の基布
接着剤の種類
接着剤の形状
接着芯地の種類
『接着芯地のすべて-基礎と実際』(編・接着芯地協議会、発行・日本繊維新聞社 1984.6刊)