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日本における結婚(にほんにおけるけっこん)は、世帯を中心とした法的・社会的制度であり戸籍において記録される。戸籍法第74条に基づいて婚姻届を提出することで法的に結婚を行ったことになる(民法第739条)。婚姻可能年齢は、男女とも18歳以上である(民法731条)。
伝統的に日本では、結婚相手を見つける方法を「お見合い」と「恋愛」の2つに区分していたが、戦後は西洋の恋愛観が日本の結婚観を変えたため、この区別は意味をなさなくなった[1]。
厚生労働省政策統括官『人口動態統計』による。1947から1972年は沖縄県を含まない。1940年以前の総数には初婚・再婚の別不詳を含む。婚姻率は1940年以前は総人口、1947年以降は日本人人口1,000について[2]。
年次 | 婚姻総数 | 婚姻率 | 夫 | 妻 | 初婚の割合(%) | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
初婚数 | 再婚数 | 初婚数 | 再婚数 | 夫 | 妻 | |||
1900 | 346,528 | 7.9 | 278,384 | 66,398 | 294,606 | 45,820 | 80.3 | 85.0 |
1910 | 441,222 | 9.0 | 368,111 | 69,975 | 390,466 | 47,838 | 83.4 | 88.5 |
1920 | 546,207 | 9.8 | 453,139 | 92,280 | 489,737 | 55,524 | 83.0 | 89.7 |
1930 | 506,674 | 7.9 | 437,094 | 68,774 | 465,128 | 40,524 | 86.3 | 91.8 |
1940 | 666,575 | 9.3 | 580,283 | 85,437 | 616,735 | 47,449 | 87.1 | 92.5 |
1947 | 934,170 | 12.0 | 戦後混乱期により統計なし | |||||
1950 | 715,081 | 8.6 | ||||||
1955 | 714,861 | 8.1 | 626,394 | 88,467 | 656,591 | 58,270 | 87.6 | 91.8 |
1960 | 866,115 | 9.3 | 782,021 | 84,094 | 812,597 | 53,518 | 90.3 | 93.8 |
1965 | 954,852 | 9.8 | 872,649 | 82,203 | 900,304 | 54,548 | 91.4 | 94.3 |
1970 | 1,029,405 | 10.0 | 943,783 | 85,622 | 967,716 | 61,689 | 91.7 | 94.0 |
1971 | 1,091,229 | 10.4 | 1,003,381 | 87,848 | 1,026,772 | 64,457 | 91.9 | 94.1 |
1972 | 1,099,984 | 10.4 | 1,011,042 | 88,942 | 1,032,967 | 67,017 | 91.9 | 93.9 |
1973 | 1,071,923 | 9.9 | 983,035 | 88,888 | 1,002,656 | 69,267 | 91.7 | 93.5 |
1974 | 1,000,455 | 9.1 | 911,808 | 88,647 | 929,824 | 70,631 | 91.1 | 92.9 |
1975 | 941,628 | 8.5 | 855,825 | 85,803 | 871,445 | 70,183 | 90.9 | 92.5 |
1976 | 871,543 | 7.8 | 787,521 | 84,022 | 801,264 | 70,279 | 90.4 | 91.9 |
1977 | 821,029 | 7.2 | 738,321 | 82,708 | 750,756 | 70,273 | 89.9 | 91.4 |
1978 | 793,257 | 6.9 | 710,875 | 82,382 | 722,577 | 70,680 | 89.6 | 91.1 |
1979 | 788,505 | 6.8 | 704,321 | 84,184 | 715,551 | 72,954 | 89.3 | 90.7 |
1980 | 774,702 | 6.7 | 690,885 | 83,817 | 701,415 | 73,287 | 89.2 | 90.5 |
1981 | 776,531 | 6.6 | 691,448 | 85,083 | 702,259 | 74,272 | 89.0 | 90.4 |
1982 | 781,252 | 6.6 | 693,990 | 87,262 | 704,840 | 76,412 | 88.8 | 90.2 |
1983 | 762,552 | 6.4 | 675,514 | 87,038 | 686,477 | 76,075 | 88.6 | 90.0 |
1984 | 739,991 | 6.2 | 652,618 | 87,373 | 663,021 | 76,970 | 88.2 | 89.6 |
1985 | 735,850 | 6.1 | 646,241 | 89,609 | 656,609 | 79,241 | 87.8 | 89.2 |
1986 | 710,962 | 5.9 | 620,754 | 90,208 | 630,353 | 80,609 | 87.3 | 88.7 |
1987 | 696,173 | 5.7 | 605,675 | 90,498 | 615,148 | 81,025 | 87.0 | 88.4 |
1988 | 707,716 | 5.8 | 613,919 | 93,797 | 623,743 | 83,973 | 86.7 | 88.1 |
1989 | 708,316 | 5.8 | 611,963 | 96,353 | 623,485 | 84,831 | 86.4 | 88.0 |
1990 | 722,138 | 5.9 | 625,453 | 96,685 | 637,472 | 84,666 | 86.6 | 88.3 |
1991 | 742,264 | 6.0 | 645,790 | 96,474 | 657,715 | 84,549 | 87.0 | 88.6 |
1992 | 754,441 | 6.1 | 657,540 | 96,901 | 669,760 | 84,681 | 87.2 | 88.8 |
1993 | 792,658 | 6.4 | 692,214 | 100,444 | 704,929 | 87,729 | 87.3 | 88.9 |
1994 | 782,738 | 6.3 | 681,759 | 100,979 | 693,853 | 88,885 | 87.1 | 88.6 |
1995 | 791,888 | 6.4 | 687,167 | 104,721 | 700,158 | 91,730 | 86.8 | 88.4 |
1996 | 795,080 | 6.4 | 688,887 | 106,193 | 701,776 | 93,304 | 86.6 | 88.3 |
1997 | 775,651 | 6.2 | 670,007 | 105,644 | 681,468 | 94,183 | 86.4 | 87.9 |
1998 | 784,595 | 6.3 | 675,519 | 109,076 | 687,552 | 97,043 | 86.1 | 87.6 |
1999 | 762,028 | 6.1 | 651,925 | 110,103 | 664,379 | 97,649 | 85.6 | 87.2 |
2000 | 798,138 | 6.4 | 678,174 | 119,964 | 691,507 | 106,631 | 85.0 | 86.6 |
2001 | 799,999 | 6.4 | 674,770 | 125,229 | 687,683 | 112,316 | 84.3 | 86.0 |
2002 | 757,331 | 6.0 | 633,543 | 123,788 | 645,138 | 112,193 | 83.7 | 85.2 |
2003 | 740,191 | 5.9 | 613,727 | 126,464 | 626,327 | 113,864 | 82.9 | 84.6 |
2004 | 720,418 | 5.7 | 592,449 | 127,969 | 605,936 | 114,482 | 82.2 | 84.1 |
2005 | 714,265 | 5.7 | 584,076 | 130,189 | 599,691 | 114,574 | 81.8 | 84.0 |
2006 | 730,973 | 5.8 | 593,728 | 137,245 | 612,134 | 118,839 | 81.2 | 83.7 |
2007 | 719,822 | 5.7 | 584,416 | 135,406 | 600,743 | 119,079 | 81.2 | 83.5 |
2008 | 726,106 | 5.7 | 590,573 | 135,533 | 605,868 | 120,238 | 81.3 | 83.4 |
2009 | 707,740 | 5.6 | 575,103 | 132,637 | 591,320 | 116,420 | 81.3 | 83.6 |
2010 | 700,222 | 5.5 | 570,576 | 129,646 | 586,719 | 113,503 | 81.5 | 83.8 |
2011 | 661,898 | 5.2 | 537,685 | 124,213 | 553,666 | 108,232 | 81.2 | 83.6 |
2012 | 668,870 | 5.3 | 541,918 | 126,952 | 559,372 | 109,498 | 81.0 | 83.6 |
2013 | 660,622 | 5.3 | 533,711 | 126,911 | 551,824 | 108,798 | 80.8 | 83.5 |
2014 | 643,783 | 5.1 | 519,406 | 124,377 | 537,193 | 106,590 | 80.7 | 83.4 |
2015 | 635,225 | 5.1 | 510,296 | 124,929 | 528,611 | 106,614 | 80.3 | 83.2 |
2016 | 620,707 | 5.0 | 499,377 | 121,330 | 516,684 | 104,023 | 80.5 | 83.2 |
2017 | 606,952 | 4.9 | 488,739 | 118,213 | 505,721 | 101,231 | 80.5 | 83.3 |
2018 | 586,481 | 4.7 | 471,188 | 115,293 | 487,652 | 98,829 | 80.3 | 83.1 |
2019 | 599,007 | 4.8 | 481,113 | 117,894 | 497,598 | 101,409 | 80.3 | 83.1 |
2020 | 525,507 | 4.3 | 423,484 | 102,023 | 437,169 | 88,338 | 80.6 | 83.2 |
2021 | 501,138 | 4.1 | 405,214 | 95,924 | 417,783 | 83,355 | 80.9 | 83.4 |
粗婚姻率(人口千人あたり結婚率)はOECD平均を上回る水準である(2020年)[3]。
平均初婚年齢は緩やかに上昇しており、2021年時点では、夫が31.0歳、妻が29.5歳であった[4]。
調査年 | 初婚-夫 | 初婚-妻 |
---|---|---|
1910 | 27.0 | 23.0 |
1920 | 27.4 | 23.2 |
1930 | 27.3 | 23.2 |
1940 | 29.0 | 24.6 |
1950 | 25.9 | 23.0 |
1960 | 27.2 | 24.4 |
1970 | 26.9 | 24.2 |
1980 | 27.8 | 25.2 |
1990 | 28.4 | 25.9 |
2000 | 28.8 | 27.0 |
2005 | 29.8 | 28.0 |
2010 | 30.5 | 28.8 |
2015 | 31.1 | 29.4 |
2016 | 31.1 | 29.4 |
2017 | 31.1 | 29.4 |
2018 | 31.1 | 29.4 |
2019 | 31.2 | 29.6 |
2020 | 31.0 | 29.4 |
2021 | 31.0 | 29.5 |
戦後の民法においては、婚姻は終生にわたる共同での生活を目的とする典型的な身分行為であり、財産法上の契約関係のような特定の目的を達成する限度でのみ認められる結合とは異なる全人格的結合であるとされる[5]。そのため婚姻は代理に親しまない行為であり、また、条件や期限の親しまない行為とされる[6]。
日本の民法についてこの節では、条数のみ記載する。
日本法(民法)は、婚姻の成立に法律上の手続を要求する法律婚主義を採用している(739条)。実質的要件として当事者の婚姻意思の合致及び婚姻障害事由の不存在が必要とされる。また、形式的要件として戸籍法に基づく届出が必要とされる。
婚姻には、まず実質的要件として婚姻意思の合致が必要である[7]。日本国憲法第24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と規定する。
「婚姻意思」とは何かという点については、婚姻という身分行為に必要な届出をなす意思であるとする形式的意思説もあるが、通説は婚姻届出を出す意思を有するとともに社会通念に従って夫婦と認められる生活共同体を創設しようとする意思をいうとしている(実質的意思説、実体的意思説)[7]。婚姻意思が存在しない場合(婚姻意思の欠缺)の婚姻は無効である(742条1号)。
なお、成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない(738条)。
婚姻には民法に規定される婚姻障害事由(731条から737条)が存在しないことが必要である。婚姻障害事由のうち、民法731条から736条までの規定に違反した婚姻は「不適法な婚姻」として、法定の手続に従って取り消しうる(744条)が、737条違反については誤って受理されると、もはや取り消し得ない(後述)。
婚姻には形式的要件として戸籍法に基づく届出(婚姻届)が必要である(739条2項)。これは婚姻の効力を第三者にも及ぼすためである。この届出については当事者間の合意で婚姻は成立しておりその効力発生要件にすぎないとする説と届出がない以上は婚姻は成立しないのであるから婚姻の成立要件であるとする説(通説)などがある[40][41]。婚姻届は当事者の本籍地又は届出人の所在地でこれをしなければならない(戸籍法25条1項)。
婚姻の届出は731条から737条まで及び739条2項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ受理することができない(740条)。なお、外国に在る日本人間で婚姻をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる(740条前段)。
婚姻は戸籍事務の担当者が届出を受理した時点で成立する(大判昭16・7・29民集20巻1019頁)。婚姻の届出をしない場合には婚姻届出の欠缺(けんけつ)として婚姻は無効である(742条2号本文)。ただし、その届出が739条2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻はそのためにその効力を妨げられない(742条2号但書)。
2004年7月16日に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行、これにともない戸籍法も一部改正した。特例法の定める要件を満たす性同一性障害者は家庭裁判所で性別の変更の審判を請求することができ、戸籍上の性別の変更が可能となった。戸籍上の性別にしたがい、その男女の婚姻届は受理される。
婚姻意思の欠缺や婚姻届出の欠缺は婚姻の無効原因であり、また、婚姻の無効原因はこの二つに限られる(742条)。
民法731条から736条までの規定に違反した婚姻(744条)、また、詐欺または強迫による婚姻(747条)は法定の手続に従って取り消しうる。これらは取消しであるから取り消されるまでは当該婚姻は一応は有効とされる。また、婚姻の取消しの効力には遡及効はなく、将来に向かってのみ効力を生ずる(748条1項)。
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する(750条)。婚姻後に夫婦が称する氏については、届書に記載して届け出なければならない(戸籍法74条1号)。偶然にも同一の氏である場合にも同様である(769条の場合に法的な意味を有することになる)[28]。当事者の婚姻前の氏とは関係のない第三者の氏とすることは許されない[42][43]。なお、明治民法が制定されるまでの初期の明治時代では1876年(明治9年)3月の太政官指令により、妻は生家の姓「所生ノ氏」(実家の氏)を用いること(夫婦別氏)とされていた(明治9年3月17日太政官指令15号[44][45]。しかしながら、上記の指令にもかかわらず、妻が夫の姓(氏)を称することが慣習化していったといわれている[45]。
夫婦の氏につき「民法の一部を改正する法律案要綱」(平成8年2月26日法制審議会総会決定)では、夫婦は婚姻の際に定めるところに従い夫もしくは妻の氏を称しまたは各自の婚姻前の氏を称するものとし、夫婦が各自婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとしており、選択的夫婦別姓制度の導入、導入する場合の子の氏等についての議論がなされている。2015年(平成27年)12月16日最高裁大法廷判決は、婚姻に際し夫婦同氏のみを認める民法750条の規定について憲法13条、14条1項、24条に違反しないと判示している。
なお、日本の戸籍実務においては日本人が外国人と結婚する場合については夫婦同氏の規定の適用はないとしている(昭和20年4月30日民事甲899号回答、昭和42年3月27日民事甲365号回答)[44][46]。この点に関して戸籍法は外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から6か月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができるとしている(戸籍法第107条第2項)。
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない(752条)。これは婚姻の本質的義務で身分的効果の中核をなすとされる[47][48]。正当な理由なく同居しない配偶者に対して他方の配偶者は同居するよう請求しうる[49]。ただし、同居の審判があっても本人の意思に反する強制履行はできないとされている(通説・判例。判例として大決昭5・9・30民集9巻926頁)[12][50][48]。また、婚姻関係が完全に破綻している場合には同居の請求は認められない(大阪高判昭35・1・14家月12巻4号95頁)[51]。
正当な理由のない同居・協力・扶助義務の不履行は「悪意の遺棄」として離婚原因となる(770条1項2号)[49]。
病気による入院、出稼ぎや単身赴任、家庭内暴力など同居が困難な事情があると認められる場合には同居義務違反とはならず、やむをえず別居している配偶者に対して同居請求権を行使することは権利の濫用にほかならない(通説)[52][48]。
夫婦は貞操義務(守操義務)を負う(通説・判例。大決大15・7・20刑集5巻318頁)[43][53]。民法上には直接的な明文の規定はないが、婚姻の本質からみて当然の義務であると解されており、不貞行為は離婚原因となる(770条1項1号)[49][54][55]。
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなされる(753条)。スイス民法やフランス民法にも同旨の規定があり、これらの規定は婚姻した未成年者が親権や後見に服するとすることは夫婦生活を阻害し法的関係に混乱を来すなど弊害を生じるためとされる[58][59]。
成年擬制の効果は原則として私法領域に限られ、それ以外の法分野における成年擬制の効果は各法の趣旨によって定められるが、少年法・公職選挙法・二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律・二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律など公法領域については原則として成年擬制の効果は及ばないとされる[60][11][61][62]。
通説によれば未成年者が離婚した場合にも成年擬制の効果は失われず制限行為能力者に復帰するわけではない(成年擬制存続説)[10][11]。婚姻の取消しの場合にも不適齢婚による場合を除いて制限行為能力者には復帰しない(通説・実務)[63][62]。
夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない(754条)。
夫婦関係が実質的に破綻している場合には、形式的には婚姻関係にあっても本条にいう「婚姻中」とはいえず夫婦契約取消権を行使することはできない(最判昭33・3・6民集12巻3号414頁、最判昭42・2・2民集21巻1号88頁)。
本条の妥当性については疑問視する見解が多い[64][65]。そもそも本条は沿革的にはローマ法に由来するもので夫から妻への家産の流失を防ぐといった趣旨があったとされるが、このような立法理由は今日では妥当でない[63][64]。また、契約取消権の濫用が問題化したこともあって判例はその行使を厳しく制限しており契約取消権は実質的な意義を失っているとされる[66]。このようなことから「民法の一部を改正する法律案要綱」(平成8年2月26日法制審議会総会決定)では民法754条の規定は削除すべきとしており現在議論がなされている。
婚姻によって夫婦間に生じる財産関係すなわち夫婦間の費用の負担、財産の帰属、管理収益権などを規律する制度[67]。
日本の民法は756条以下により、まず、婚姻の届出前に契約によって定めることを認め(契約財産制)、契約がない場合に法定財産制に従うものとしている(755条)[68]。
契約財産制とは夫婦財産契約に基づく財産関係である。夫婦財産契約は単なる夫婦間の契約ではなく登記によって第三者への対抗力を有する法律関係を生じる[68]。夫婦財産契約とは夫婦が婚姻の届出前にその財産関係についてなす契約であり、夫婦財産契約を定めた場合には法定財産制の適用はない(755条の反対解釈)。ただし、日本ではこのような慣習がなく民法の定める制度も厳格なこともあって夫婦財産契約が締結される例は極めて少ないとされ、ほとんどの夫婦財産制は法定財産制によっている[69][68][70]。
夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない(756条)。夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない(758条1項)。
夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であったことによってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる(758条2項)。共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる(758条3項)。
家庭裁判所の審判又は契約中に予め定められた規定により、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない(759条)[71]。
法律上、婚姻関係は夫婦の一方が死亡した場合(夫婦の一方が失踪宣告を受けた場合を含む)及び離婚が成立した場合に解消される[74]。
国際私法上、本国人と外国人との間の結婚等の国際結婚については、どこの国の法を適用すべきかという準拠法の問題を生じるが、日本では法の適用に関する通則法で、国際結婚に関する定めがされている。
日本の法の適用に関する通則法によれば、婚姻の成立は各当事者の本国法による(法の適用に関する通則法24条1項)。また、婚姻の方式は婚姻挙行地の法によるが(法の適用に関する通則法24条2項)、当事者の一方の本国法に適合する方式でも有効とされる(法の適用に関する通則法24条3項本文)。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、日本法によることを要する(法の適用に関する通則法24条3項但書)。
日本の法の適用に関する通則法によれば、婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法によるとされる(法の適用に関する通則法25条)。
日本の法の適用に関する通則法によれば、夫婦財産制についても原則として婚姻の効力の場合と同様の扱いとされる(法の適用に関する通則法26条1項・25条)。
ただし、夫婦が署名した書面で日付を記載したものにより、次に掲げる法のうちいずれの法によるべきかを定めたときは、夫婦財産制はその法による(法の適用に関する通則法26条2項前段)。
この場合において、その定めは将来効のみ認められる(法の適用に関する通則法26条2項後段)。
外国法を適用すべき夫婦財産制にあっては、日本においてされた法律行為及び日本に在る財産については、善意の第三者に対抗することができない(法の適用に関する通則法26条3項前段)。この場合において、その第三者との間の関係については、夫婦財産制は日本法の規定による(法の適用に関する通則法26条3項後段)。ただし、外国法に基づいてされた夫婦財産契約であっても、日本においてこれを登記したときは、第三者に対抗することができる(法の適用に関する通則法26条4項)。
1898年(明治31年)に日本の民法が施行された当時、婚姻の成立要件は、
などである。
女性の年齢に関しては医科大学の研究、諸外国の統計、学者の意見などを参考にして決定されたとされる[8]。
市町村長に届出をおこなうことという要件を欠くときは婚姻は無効であるが、その他の要件を欠くときは取り消し得べきものとなって、法律所定の者が裁判所に取消の訴を提起することができる(改正前民法780条)。
婚姻の取消はただ将来にむかって婚姻を消滅させるのみで、その効力は過去に遡らないから、婚姻が取り消されてもすでに夫婦の間に生まれた子があれば、依然として嫡出子である。
婚姻の効力は、
などである。
一夫一婦の共諾婚が定められ、かつ婚姻は市町村長に届出ることによって効力を生じるとして、厳格な法律婚主義が採用された。
なお、1875年(明治8年)平民苗字必称義務令が出され、1876年(明治9年)太政官指令にて「婦女は結婚してもなお所生の氏(婚姻前の氏)を用いること」すなわち夫婦別姓を規定した[75]。その後1898年(明治31年)の明治民法制定時に夫婦同氏と定められた。
この節は中立的な観点に基づく疑問が提出されているか、議論中です。 (2010年9月) |
平均結婚年齢は年々上昇し、未婚率も上昇しており、非婚化・晩婚化が進んでいる。
その要因については、一般的には女性の高学歴化や社会進出(賃金労働者化)が言われてきた。女性が自身で相当程度の収入を得られる社会になったことで、「結婚しないと生きていけない」というような状況ではなくなったこと。
不況などの経済事由に伴う、育児の(男性が行う育児)困難。「大人だから結婚しなくてはいけない」という社会通念(結婚の強制)の希薄化。女性の社会的身分が男性と肩を並べるようになったことも、結婚・出産といった女性の側の一時的なリタイヤへの不安、等多岐にわたる。並びに結婚より子供だけを作るシングルファーザーなどの自治体での子育て支援などもある。
以下は、婚活アドバイザーとして、いくつも晩婚の男女を観察してきた白河桃子の見解を、一例として挙げる。
あくまでも婚期を遅くしてしまった男女の例であり、成人男女全体を科学的に統計をとった上に、学者が研究・考察したものではない。
年 | 専業主婦 | 再就職 | 両立 |
1987年 | 37%程度 | 37%程度 | 10%程度 |
1992年 | 30%程度 | 44%程度 | 11%程度 |
1997年 | 20%程度 | 43%程度 | 18%程度 |
2002年 | 18%程度 | 47%程度 | 19%程度 |
2005年 | 12%程度 | 38%程度 | 28%程度 |
2015年 | 10%程度 | 37%程度 | 33%程度 |
婚姻を古くから「(夫婦の)契り(ちぎり)」ともいう。
結婚すること、特に婚姻届を提出することを指して、俗に「籍を入れる」と言ったり、マスコミなどでは「入籍」と表現したりする場合があるが、戸籍法上の「入籍」とは意味が異なる。戸籍法上の「入籍」とは、すでにある戸籍の一員になることである。すでにある戸籍とは筆頭者が存在する戸籍であり、これに入るには筆頭者の配偶者になるか、子(養子含む)として戸籍に加えられるしかない。結婚は、戸籍法上では初婚の場合(分籍をしていなければ)、婚姻届が受理されることにより、元々お互いが入っていた親の戸籍から離れて新しく戸籍が作られ、そこに2人が構成される。そのためこのケースでは戸籍法上の「入籍」とは言わない。ただし、離婚や分籍の前歴があれば当人が筆頭者であるため、その戸籍に配偶者を迎え入れればこれは戸籍法上の「入籍」と呼ぶこともできるが、一般的ではない。同様に「婚姻届」のことを、「入籍届」と表現されることがあるが、入籍届は父母の離婚や養子縁組に際し子が別の(基本的には非筆頭者側の)戸籍に入るための届出書であり、婚姻届とは全くの別物である。
近年では、夫婦別姓を実現したいなどの理由で、婚姻届は出さず事実婚を選択するカップルも増えている[注 3]。
このほか、結婚の類義語として、一方の側に立った表現として「嫁入り」「輿入れ」「婿入り」などがある。